夢の羅列<スクーター午後の死>20160929
つづき。
背後にバイクの派手な音が聞こえてきた。
オヤジの視線が私の後ろに動いた。つられて私も振り向いた。
バイク。というよりあれか、ビッグスクーターというやつか。
とくに嫌いではないが、乗りたくはないという代物。
おそらく400ccくらいのその代物が西から上り車線を走ってきたのだった。
排気音がひどくうるさい。
乗り手にしてみるとちょうどこのガレージの前あたりは
緩く左にカーブしていて、しかしその曲がりの気持ちよさに
ついスピードを出してしまう箇所であった。
うるさいスクーターがちょうどそのカーブに入った。
速度は60km出ているだろうか。
カーブを抜けて、直線が見え、前に車がいなければおそらく
さらスロットルを開けて加速するだろう。
ジョナサンの前をうまくスルーして、あとは死ぬ気殺す気で走ればきっと
新高円寺の駅前を停まらずに抜けられるはずだ。
私とオヤジが無口で見ている目の前でスクーターはカープを抜けた。
いや、抜けたかに見えた。その時、
「パンッ」
派手でしかも締まりのない音がして、スクーターは爆ぜた。
爆ぜた。まさに爆ぜたのだった。
爆発という重い感じでもなく、燃え上がったというのでもなく、
まるでねずみ花火が最後に「パンッ」と尽きるようにスクーターも爆ぜた。
「あ、爆ぜた」
私とオヤジが同時につぶやいた。
つづく。
つづき。
背後にバイクの派手な音が聞こえてきた。
オヤジの視線が私の後ろに動いた。つられて私も振り向いた。
バイク。というよりあれか、ビッグスクーターというやつか。
とくに嫌いではないが、乗りたくはないという代物。
おそらく400ccくらいのその代物が西から上り車線を走ってきたのだった。
排気音がひどくうるさい。
乗り手にしてみるとちょうどこのガレージの前あたりは
緩く左にカーブしていて、しかしその曲がりの気持ちよさに
ついスピードを出してしまう箇所であった。
うるさいスクーターがちょうどそのカーブに入った。
速度は60km出ているだろうか。
カーブを抜けて、直線が見え、前に車がいなければおそらく
さらスロットルを開けて加速するだろう。
ジョナサンの前をうまくスルーして、あとは死ぬ気殺す気で走ればきっと
新高円寺の駅前を停まらずに抜けられるはずだ。
私とオヤジが無口で見ている目の前でスクーターはカープを抜けた。
いや、抜けたかに見えた。その時、
「パンッ」
派手でしかも締まりのない音がして、スクーターは爆ぜた。
爆ぜた。まさに爆ぜたのだった。
爆発という重い感じでもなく、燃え上がったというのでもなく、
まるでねずみ花火が最後に「パンッ」と尽きるようにスクーターも爆ぜた。
「あ、爆ぜた」
私とオヤジが同時につぶやいた。
つづく。