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「私の男」映画、および原作について。

2016-09-11 19:57:06 | Diary
知り合いが園子温の監督作品が面白いというので、映画「恋の罪」を観たら冒頭からグロい映像が続き、しかも女がヒステリックに叫ぶのが私は超がつくほど苦手だから、これはまいったと思い、あれは苦手だったよと報告すると、それじゃあ「冷たい熱帯魚」がいいかもしれないと知り合いが言うので、今度はそれを観たら、これが一層のことひどい血みどろの映画で、前から書いているように私にエロはあってもグロはないので、「ボディを透明にする」とかもう勘弁してくれよ。と、まあそれでも最後まで観たわけだが、それについてはまた後日に。

それで口直しではないが、目についたグロい残像を洗い流すために何か切なく儚く、そして出来れば最後は小さくともハッピーな結末の映画を観ようという気持ちになって、探したら、先日観てすごくよかった「海炭市叙景」の熊切監督の「私の男」がどうも良さそうだ。と私は予感して、それを見始めた。

小さな女の子が出てくるだけで私の涙腺は緩むように出来ている。ああこれは震災と津波によって身寄りのなくなった少女をまだ若い親戚の男(浅野忠信)が引き取り男気と男手で育て上げる話だな、とすぐにわかった。北の最果ての町を舞台に涙あり人情ありで、どちらにしても一波乱も二波乱もあるのだが、やがて成長した少女花(二階堂ふみ)の結婚式がクライマックスで、なにしろ大団円。みんな幸せ。オレも涙をもう止めようともしない。きっとそうだろう。そんな見通しで観ていたわけだが、ある朝のシーンで、制服に着替えてからパンにジャムを塗る花(二階堂ふみ)の横にきた浅野忠信が何を狂ったのか不吉に微笑みつつ花の胸を揉み始めたではないか。「おいおいおいおい。ダメだろ、そんなことしたら」私は心の声を上げたが、浅野の手の力はより強まり、私の期待とは逆の方向に走り始めた物語はもう止まることもなく転がり落ちてゆくのだった。

それで最後まで観たのだが、しかし焦点が合わない気持ちが残り、それは映画ならではの説明不足に起因するのかと原作を注文し読んだ。たしかに映画だけではわかりづらい部分が多かった。でもまだ咀嚼が足りないのかフォーカスしない。「だから何?」という後味がどうにも晴れないのだ。所詮、エキセントリックなシークエンスをいくつか盛り合わせたに過ぎないのではないかという感じが今のところは半分くらいある。互いが相手を希求する理由に絶対性を見出せないのだ。血は水よりも濃い、というところに答えがあるらしいのだが、そんなもんかね、という気分。いや面白いことは面白いし、俳優たちの演技も素晴らしく、キャスティングについても文句なしで、とくに映像の空気感は「海炭市叙景」もそうだったが、すごく良い。気持ちが晴れたらまた続きを書きたい。
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