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夢の羅列<委任状>

2016-04-30 21:21:36 | Dreams
夢の羅列<委任状>


つづき。

右手に握っていたものは……、

あの印を押した数十枚の紙片であった。

無意識に拾い集めてきたのだろうか。

というよりも、そうか、思い出した。

この印は全部、生徒たちの名前だ。

つまり、これは白紙の委任状なのだ。

何の委任状かというと、

去年に法改正されて、とうとう自衛隊が軍隊になるのだが、
徴兵制が施行される前に機運を高める目的で、希望入隊者を政府が募った。

そしてその募集の一部を学校側が代理をしたのが、なかなか希望者は集まらなかった。
それで、この旅行の直前に、どさくさに紛れて白紙に印を押させ、集めたのだった。

これを提出すれば我が組は100パーセントの入隊希望率である。

聞いた話によれば、
この印の紙片は、後々まで大事に残され、
最後、というよりも最期にその本人の遺骨の壺に貼られて戻ってくるらしい。

この押印の紙が貼られた骨壺が帰ってくることを想像したら、
ひどくリアルなイメージに私は包まれ、
古旅館の辛気くさい階段を降りていることも相まって、暗い気持ちになった。

すでに日本海側に、通常火薬の小型ミサイルが1万発配備されたという。

そんなことを考えていたら、1階を通り過ぎ、地下まで降りてしまっていた。

こんな古い木造の旅館に地下なんかがあるのか、と少し驚いていると、

「おーい、こっちこっち」

明らかに私を呼ぶ声がした。

「えっ、なんであいつがここにいるのか」

つづく。
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