『3』の上に『2』を貼った。『フリードリンク』のことだ。3000円じゃ高いことが分かって、表の看板の『3』の数字の上に『2』と云う数字を張って、値下げした。『2000円フリードリンク』だ。九時までに来店してくれたお客さんは閉店までいくら飲んでも2000円。これ以上安くは出来ない。店の前を通るサラリーマンもこの値段なら一杯飲んでいこうと思う筈と、早い時間から店を開けて待つ。六時……七時……八時……入って来たのは常連のマネージャー MさんとAちゃんだけ……九時……結局、看板を見て入って来た人は一人もいなかった。ウーン、参りました。例え初日とはいえ、一人もいないなんて。これじゃ『フリードリンク10円』なんて看板を出しても一人も入ってこない気がする。そんな俺の憂鬱をよそに、カウンターでは常連のAちゃん、女性編集者のHさんと連れの女性三人(みんな32歳)にスタッフのLちゃんも加わって、男の俺を無視して女性だけのセックストーク。俺は居場所をなくして厨房でレンジの掃除に精をだすしかない。