桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2007・2・13

2007年02月14日 | Weblog
三年前、今の店を開店する時、広尾時代のお客さんに会社への出資や会員券購入を広く求めたら、150人以上のお客さんから少ない人で1万円、多い人で100万円、総額2600万円以上の資金援助の申し込みがあって、1000万円以上の借入金も含めてこの店は辛うじて開店することが出来た。あれから丸三年、今日から三周年感謝フェアが始まると云う日、あの時、100万円の札束を無造作に俺に手渡し、これは出資でも貸すのでもない、桃井の好きな様に使ってくれと領収書も受け取らずに帰って行ったNさんから久しぶりに電話があった。「元気ですか」と云われて、Nさんがこの日記を読んでいないようなので最近の自分の健康状態と店の経営状態を伝えると、「ウーン」とNさんの声が一瞬困惑したようになった。そして実は……と自分もこの二年近く闘病生活を送っていて収入が途絶えてしまったので、あの時の百万円を何とかしてもらえないかと続けた。今度は俺の方が「ウーン」と言葉を詰まらす。「何とか」ってことは「返して」と云うことだ。ウーン、確かに俺に対する好意で100万円援助してくれたんだろうけど、俺はあのお金を個人的に使ったんじゃなく、有限会社シアター&カンパニーと云う法人の設立資金にしたので、もう自分では自由になるお金じゃなくなっている。そりゃ今の店が大繁盛していたら、何とか経理上の細工をして捻出することも出来るかも知れないが、沈没寸前で三周年を迎えたウチの店の通帳にその余裕はない。だったら桃井個人で何とかしなくては思うけど、去年三カ月も役員報酬がでなかった俺個人の通帳も今月のカードローンの支払いをするだけで四桁の数字になってしまう筈だ。法律上は返さなくても問題はない筈だけど、Nさんがあの時示してくれた好意には、好意で報いたい。でも、今の俺にはその能力がない。こんな時、人はどうするのだろ?Nさんに何て非難されようと人で通すのか、それとも何処から借金してまで「何とか」するのか?けど、「何処か」から借金する道があったとして、そんなことをしたら当時資金援助してくれた人たちが「何とか」してくれと云ってきたら全員に「何とか」しなくてはならなくなる。いや、それ以前に俺には「何とか」借金出来る道が閉ざされている。世の中の人は俺には有名人で金持ちの妹がいるし、実家だって「いいウチ」だと思っているかも知れないけど、そんなウチの人間が200万ものカードローンをするものか?昔ホンの少し面倒をみたことをいいことに有名女性脚本家のNから200万を借りたまま十年もそのままにしておくものか?やっぱり人になるしかないのか?憂鬱だ。金が天から降ってこないものかなんて馬鹿なことを思ってる内に頭が痛くなる。今日から始まる三周年感謝フェアの為に痛みを堪えながら6時前には店へ出向く。8時までのドリンクオーダーは無料にして日頃の皆さんのご愛顧に感謝しようとしたのだけど、PR不足もあって8時までに来店したのは、S女子大時代からの常連Aちゃんとその友達、そして『舌切雀』の女優Kさんだけ。8時少しを過ぎて看護婦のRさんたち三人。続いて人妻Iちゃん、AN嬢、制作会社Wの経理担当者Iさんとその甥っ子、しばらくして常連の演出家Sちゃん、11時過ぎに女性作家のKさんが出版社の担当者二人と、更に皆が帰って店じまいの準備をしている時に去年までN女子大生で今はフリーのアナウンサーをしているYちゃんが泥酔して来店。仕事と将来の愚痴をクドクドと喋り続けているので、遅番のMちゃんを先に帰してYちゃん疲れ切るまで聞くことにする。疲れ切ったのは3時半近く。その間、俺は若くて魅力的なYちゃんに襲いかかることをすっかり忘れて、Nさんの百万円をどうしたらいいか考え続けていた。
☆桃井章プロデュースイベント
2/19(月)8時~
マル秘上映会『桃井章は昔、SM映画を書いていた!』
料金無料(飲食別途)、女性歓迎。
3/3~3/5
西沢利明連続公演『太宰治のお伽草紙・舌切雀』
詳細はホームページで。