桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2013・8・18

2013年08月19日 | Weblog
今生では絶対情を交わすことが出来る筈がないと思っていた彼女と一夜を共にして、こんな夢みたいなことがあるのかと呟いてみたら、よくある話だけど、そこで目が覚めてしまって、やっぱり夢だったのかと嘆息していたら、トイレの水を流す音。まさか?‥‥いや、そのまさかで、廊下から薄暗い寝室に入ってきたのは正しくその彼女で、ちょっと待ってくれ、また俺は夢の続きを見ているのかと壁に頭をぶつけてみようとしたら、それを制する様に彼女は「お腹が少しすきました」とのたまうもんだから、これは現実なんだ。夢じゃないんだと俺は何度も独り言を呟いて冷蔵庫を覗く。でも、こう云う時に限っていつも満杯の冷蔵庫は空っぽだったもんだから俺は歩いて十分ほどにある某シティホテルの朝食バイキングに彼女を誘う。最初は躊躇っていた彼女だったが、ズラッと並んだ和洋中華の料理の数々を見た途端、目をランランと輝かせ、その華奢な体つきからは想像ができない程の食欲で、オムレツ、ソーセージ、ポテトにサラダ、パンプキンスープと云ったプレートから今度は焼き鮭ときりぼし大根と漬け物と味噌汁にご飯と云った和定食、それが終わるとうどん、更にデザートと食べること食べること。正直云うと俺はまだ夕べの酒が残っていて食欲は全開じゃなかったのに、彼女にそんなに喜んで貰えたことが嬉しくて、おまけに桃井さんって少食なんですねといわれると揶揄された気がしてしまって、俺も負けじと洋プレートからうどん、朝がゆ定食まで食べて食べて、危うく吐きそうになった処で目がさめた。そう、ここまでが夢と云う詮ない話。それもその筈、その人の現住所は現実の世にはない‥‥ここで枕元にあった携帯がなる。母だった。電話に出ると母は泣いている。どうかしたの?何かあったの?と聞くと「みかんが夕べ死んでしまったの」と泣き続ける。みかんと云うのは母と妹が飼っている18才になる老犬で、元はといえばこの老犬を散歩させている時に母は転倒して骨折したのだ。六月の末に入院生活が始まって、一週間前に退院して新居でのリハビリ生活が安定するまではと余所に預けられていたのだけど、漸く母と暮らせるようになった初日に、まるでその日を待っていた様に死んで行ったのだ。とはいえ、俺はまだ夢が続いているような錯覚にもとらわれていて「夢じゃないんだよね」と寝ぼけた声で聞きただしたら「本当よ。本当にみかんが死んでしまったのよ」と母の泣き叫ぶような声が聞こえ続けて、それは現実。★諸事情で臨時休業したり、若しくは開店が遅れたり閉店が早まったりすることがありますのでお電話を下さってからご来店ください。どうぞよろしく。