桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2011・8・29

2011年08月30日 | Weblog
母が五反田にいると電話してきたので、たった今にんにくがたっぷり入ったタコとトマトのペペロンチーノ風に畳鰯とチーズを乗せてチンした木綿豆腐、玉子入り納豆、貰い物の野沢菜、若布の味噌汁でご飯をちゃんと二杯食べたのをすっかり忘れて、うなぎ屋に誘ってしまう。というのも近所にあるこのうなぎ屋は値段のわりに結構美味くて、今度母が五反田にきたら誘おうと思っていたからだ。母には鰻重を頼んだが、さすがに俺はパスして白焼きでビール。これで三千五百円。母と息子のランチとしてはゼイタクだとは思わないが、この日記を読んでいて俺が経済的に逼迫しているのを知っている母が勘定を払いそうになって、慌てる。いくら逼迫していても三千五百円位は息子としては見栄をはりたいものだ。その席で、あなたのマンションのすぐ傍に「G団」という劇団があるのを、知っている?と母に聞かれてびっくりする。G団という劇団の名前は知っているし、主宰舎のMさんが芝居で岸田戯曲賞をとったり、小説で芥川賞候補になったりする優秀な若手作家だということも知っていた。でも、そんな人を、例え妹の関係で知ったにしろ、80ウン歳の母が知っていたことに驚いてしまったのだ。そして母と別れた後、マンションの近所をウロウロ探していたら一軒の工場の表に「G団」のプレートがあるのを発見する。あれ?ちょっと待ってくれと工場の廻りを見渡したら、俺が住むマンションはすぐ裏にあり、ベランダに俺のパンツが干してあるのを発見してしまった。ウーン、だからなんだと言われれば何も云えないのだけど、毎日洗濯物を干しているベランダから有名劇団のアトリエ(公演もしている)兼稽古場が見えてしまうのって、ハレとケを同時に体験してしまっていることで、何だか興奮してしまった。興奮と云えば、10時半にお客さんが全員帰ってしまったもんだから、MとO君にも11時過ぎに引き上げて貰って、日本酒を飲みながら9月から始める「ひとり営業」の手順を考えていたりしたら、見知らぬ男性二人と美女が入ってきた。すいません。もう終わりなんですけど……と断わりかけたら、美女が桃井さんですよね?Fですと名乗ってくる。ええっ、Fさん?懐かしい!とさっきの言葉は撤回して興奮気味に9年ぶりの旧交を温めたのはいうまでもない。広尾時代は時々きてくれたけど、乃木坂は初めて。というか偶然表を通りかかってコレドという店の名前を見て懐かしさのあまり階段をおりてきてくれたみたいなのだ。おまけに一緒の男性陣は某国営放送局のプロデューサーで、ウチの店の常連のSさんやIさんを知っていたもんだから、話は途切れることなく、1時半過ぎまで。店をやっていると面白い。一日でも長く続けたいものだ。