その電話が鳴ったのは朝五時過ぎだったと後で着信履歴を見て分かる。でも、3時過ぎに寝た俺としてはうるさいっと夢の中で思っただけだ。でも、それからまた一時間後電話が鳴る。今度はさすがに起きる。独り暮らししている母のSOSかもしれないと思ったからだ。でも、それは違っていた。今日イベントをやるグループのスタッフからビルのシャッターが閉まっていて入れないという抗議だった。うーんと俺は唸る。ウチのスペースをレンタルするのは12時からと覚書にはなっているけど、午後一番で公演がある時など12時からではいくらなんでも間に合わないだろうと特例で前日にカギを渡して早い時間から勝手に入って貰うようにしているのだけど、ビルは平日は8時過ぎ、土日祭日は8時半頃までシャッターが閉まっていて入れないのだ。そのことはいつも口癖のように言っているので伝えてある筈と思ったが、先方は聞いてないという。そう、だからと言って8時半すぎまではシャッターが開かないし、待ってくださいよと一方的に電話を切る。六時過ぎだ。母のSOS電話でなくてホッとしたものの、何だか得体のしれない怒りを覚えて眠れなくなる。怒りの対象は電話の相手か?いや、彼女たちは朝の五時から必死なのだ。怒る筋合いじゃない。だったら誰か?又してもちゃんとそのことを確認しなかった俺か?こんな特例を設けた俺が悪いのか?厚意でやっているつもりなんだけど、こんな抗議を受けるなんて初めてだし、やっぱり俺がいけないのか?いや、待てっ。ここでまた自分を責めるとどんどん深みにハマルと急ブレーキ。やっぱり俺は悪くない。俺以外の誰かが悪いのだと他人に責任を転化させて精神状態を守って12時前に店へ。スタッフとはそのことについて大して話さず何食わぬ顔してO君と二人でマチネソワレ合わせて99人のお客さんにドリンクサービス。途中、O君を誘ってミッドタウンのトンカツ屋へ。まだ仕事中だというのに、特製ロースカツにオツマミセットに生ビールまで飲んでしまってO君と演劇談義をして憂さを晴らす。ソワレが終わって撤収までに一時間以上もかかったのでその間も演劇談義。ついこの間まで演劇のえの字も知らなかったO君が女性演出家の宮田慶子さんを崇拝しているだから凄い。彼女が演出した「わが町」が気に入って同じ芝居を四回か五回か見に行ったというのだがらこれは凄さを通り越している。何だか彼と演劇談義をやっている内にイライラが消えてなくなっていた。意外な効用だ。
★2/12(土)は都合により臨時休業いたします。従って2/11(金)の建国記念日から2/13(日)まで連休させていただきます。
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