桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2011・12・21

2011年12月22日 | Weblog
十日前に脚本家の市川森一さんが肺癌で亡くなったという知らせを聞いて、冗談だろ、三ヶ月前に有名俳優のNさんたちと店に来て、いつもと変わらず楽しそうに飲んで行ったじゃないか?それなのに肺癌で死んだなんて馬鹿なことをいうのよと知らせてくれた相手に食ってかかっていた。でも、彼の死は事実だった。翌日の朝刊には「ウルトラセブンの脚本家 市川森一さん死去」と大きくでていた。おいおい、これじゃウルトラセブンが死んだみたいじゃないか?と彼の死より見出しの方をきにしてしまう。確かにウルトラセブンも凄い作品かも知れないけど、彼は「傷だらせの天使の市川森一」と書かれたかったのではとか「淋しいのはお前だけじゃないの市川森一」とか書かれたかったのではなかっただろうかと苛立って、新聞を畳んでしまう。まぁ、死んだらわからないんだし、そんなことどうだっていいか?でも、どうでもよくないのは三ヶ月前にあんなに元気だった市川さんがこんな突然死みたいな人生の終焉を迎えることになったかだ。三ヶ月前……いや、ちょっと待て。三ヶ月前というとひとり営業をしていた九月だ。でも、あの夜、市川さんはMとも話していた。ということは、いらしたのは10月か一ヶ月前の8月だったか?俺は気になって来店者名簿を調べてみる。処が、何度調べても8月から10月にかけての名簿に彼の名前はない。11月はもう入院していたと聞いたけど、念の為に調べてみるが、勿論載ってない。書き忘れたのか?いや、ミーハーな俺が有名人を書き忘れる筈がない。だとすると7月だったか……ない……市川森一さんの名前がない……どうした?本当に書き忘れてしまったみたいだ。こんなことがあるなんて……ひょっとしてあれは幻だったのか?半年後に死ぬことを予感していた市川さんの魂が俺に会いにきてくれたのか?いや、そんな筈はない。あの夜はNさんが昔の朝ドラのヒロインだったM姉ちゃんを呼んで、市川さんも楽しそうにいつものスーズのソーダ割りを飲んでいたじゃないか?そしてその夜のことをこの日記に書いたじゃないか?俺は不安になる。何とか市川さんがいらした日を割り出そうと7月から10月までの日記を調べてみる。処がない。彼がきたという記述がない。一体どういうことだ?その時、有名俳優のNさんと来たのは、確か彼が主演して市川さんが書いた「淋しいのはお前だけじゃない」が舞台化されて、それを見た帰りだったことを思い出す。こういう時ネットは便利だ。早速検索してみる。すると検索できたことはできたけど、公演が行われたのは6月の末だと分かる。そんな6月だなんて……と半信半疑でまだ調べてなかった六月分の来客名簿を見てみたら、あった。市川さんの名前と有名俳優のNさんと女優のKさんと演出家のTさんのお名前が6月24日の欄にちゃんと書かれてあった。よくわからない。あの夜が6月だったなんて。だったら半年前じゃないか?何が三ヶ月前だよ?俺はどうしてこんな錯誤をしてしまったのか?時間が後になったり前になったり俺の廻りで妙な流れか方をしているのか?そしてあなたの周りではもう時間が流れていないんですね。告別式が執り行われた青山斎場の祭壇で花に囲まれて微笑む市川さんの遺影をずっと見つめている内、俺は知らない内に「市川ワールド」に入ってしまっていた。市川森一さん、有り難うそしてさようなら★年末は30日(金)まで営業<尚12/24は臨時休業します>新年は10日(月)から営業します。