元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

相対的記載事項でも定めた場合は、就業規則の必要記載事項。<就業規則8>

2011-12-29 04:16:35 | 社会保険労務士
絶対的記載事項、相対的記載事項、任意記載事項がありますが、会社に必要なものは、もれなく記載すべきです!!

 就業規則の内容として、必ず記載しなければならない絶対的記載事項と、定めるかどうかは使用者の自由である相対的記載事項に分かれていると説明されていますが、この相対的記載事項という言い方が曲者(くせもの)です。私としては、初めてこの相対的記載事項と聞いたとき、ああ記載しなくていいんだというふうに聞こえましたが、これは、絶対に対する言い方でして、その内容を定めた場合は必ず記載しなければならないものです。

 絶対的記載事項は、1、就業時間等 2、賃金 3、退職(解雇を含む。)の3項目で、「絶対的」に重要な内容であることは、分かりますが、相対的記載事項は、(1)退職手当、(2)臨時の賃金等、(3)労働者の食費・作業用品等の負担 (4)安全衛生 (5)職業訓練 (6)災害補償・業務外の傷病扶助、(7)表彰・制裁 (8)その他労働者のすべてに適用される定め となっており、この中で、定めをした場合は、必ず記載しなければならないものです。

 相対的記載事項とはいえ、使用者側としては、必ず記載すべきなのは、(7)の「制裁」としての、訓戒、譴責、減給、出勤停止、昇給の停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇等のいわゆる「懲戒」といわれているものです。会社の規律違反等があった場合に、制裁としての懲戒処分は、必ず必要ですし、いわゆる問題社員と言われる者への対応として、この事項は欠かすことができません。記載がなくても、懲戒はできるという議論もありますが、基本的には、その種類や程度はあらかじめ就業規則に記載していなければ、懲戒はできません。

 また、(8)も「その他」となっているので、見過ごしがちですが、結構重要で「労働者のすべてに適用になる定め」で、これも定めることになれば必ず記載しなければなりません。例えば出張の場合には、実費弁償として旅費を支給しないところはないはずですが、これも全員に共通する規定ですので、必ず記載しなければなりません。また、採用や人事異動(配置転換、出向、派遣等)、休職、福利厚生などがありますので、記載すべき項目は結構多いはずです。

 この他に絶対的でも相対的記載事項でもない、任意に記載できるものとして、いわゆる「任意的記載事項」があるわけですが、労働者との関係で規定すべきものも多いはずで、経営的観点から会社の定めをすべきものがあるはずです。安西愈氏は、「この事項は、多くの企業の経営権からする指揮命令事項や就業上の規律、秩序維持、能率の維持向上、名誉信用の保持、信義則上の遵守義務、守秘義務といった規定等が多い。」(労働基準法のポイント)としているところです。



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就業規則の届出・労働者意見聴収をしなかった場合には・・・<就業規則作成等7>

2011-12-26 05:02:45 | 社会保険労務士
 手続き的には労基法違反ですが・・・

 前回、就業規則の作成や変更の手続きについては、労働基準法で明確に定められているとして、1 使用者の方で就業規則(案)を作成し、2 過半数労働組合または労働者代表の意見を聴収 3 正式な就業規則を決定の上 4 過半数労働組合または労働者代表の意見書を添付して 5 労基署への届け出とともに 6 労働者に対し周知をさせる ことになっているのは、申し述べたところです。(労基法89条、90条、106条)

 しかしながら、就業規則に労働者を拘束するためには、すなわち、就業規則が効力をもつためには、(1)「合理的な労働条件が定められている就業規則」であること (2)「就業規則を労働者に周知させていた」として、合理的な内容の就業規則は、もちろんであるが、上記の手続的には、6の「労働者への周知」の措置をとれば、可能ということになります。

 では、5の労基署への届け出 2・5の労働組合の意見を聞いていない場合は、どうなるのであろうか。届け出や労働組合の意見聴収は、これを怠れば、行政取締法違反として、公法上の違反となり、労基法条の罰則の規定があり、30万以下の罰金が科されることになっています。しかしながら、就業規則は届け出をもって、労働者拘束の効力発生要件としているのではなく、労働条件を労働者へ「周知すること」によって、法律的な規範が生じるものであり、そこから従業員を拘束するものであって、ここで届け出は要件とはされていません。結局、労基法の手続き違反であって、民事上の労働者に対する効力を持たないということではありません。

 届け出については、裁判では、就業規則は「届出未済であったことは認められるけれども、無届ないし届出未了の就業規則は、刑事上の責任は別論として、これを無効しすべきではない。」(昭和24年山形地裁山形新聞事件)としています。

 また、労働組合の意見聴収については、意見をきけばいいのであって、労働組合との合意は要件とはなっておらず、もともと就業規則は使用者が一方的に作成し、変更する権限を持っているものであって、意見聴収をしていないことをもって、就業規則の効力が否定されることにはならないものです。裁判でも「適用労働者への意見聴収がなされていないというが、この手続きの欠如についても、効力発生要件ではないことはその法的性格から明らか」であるとしているところです。(昭和51年神戸地裁、関西弘済整備事件)

 しかし、実務的な手続きにおいては、単に意見を聞けばいいというものではなく、意見を聞く過程において、よりよいこなれた、労働者側との合意形成そのもの、それがなくてもそれに近いものが、築き上げられるか、そうでなければ、使用者側の意図を十分説明するなどして労働者側の理解を図ることが必要となるなど、そこにこの労基法は期待しているのではないかと考えるところです。

 いずれにしても、再度、結論的に申し上げると、就業規則の効力には影響を与えないというのは、手続きを踏まなかった場合の議論であって、あくまでも労基法の手続き違反ですので、30万円の罰金も用意されていますので、労働者とのスムーズな運営のためにも、この手続きとしての、労働者組合の意見聴収と労基署への届け出は必ず行いましょう。
  

 (参考)安西愈著 前改定労働基準法のポイント(厚友出版)
     大内伸哉著 就業規則からみた労働法(日本法令)


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労基法と契約法の就業規則の「労働者への周知」の相違 <就業規則作成等6>

2011-12-22 04:24:07 | 社会保険労務士
 労基法では周知の方法が決められていますが、労働契約法では・・・!!

平成20年施行の労働契約法7条では、次のような規定があります。
「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」(労働契約法7条)とされ、
 (1)「合理的な労働条件が定められている就業規則」であること 
 (2)「就業規則を労働者に周知させていた」
 という2つの要件が満足していた場合は、就業規則で定める労働条件が労働契約になるとしています。
 
 同様に、就業規則の変更において、原則的には、労使の合意によるものとしながらも(同法8条、9条)、就業規則の変更が合理的なもの(注1)であって、労働者に周知させていた場合は、労働契約の内容である労働条件は、変更後の就業規則に定めるところによるとされています。(同法10条、不利益変更の「合意」の例外) すなわち、就業規則の変更により、それが合理的で、かつ周知させていた場合は、不利益な変更内容であっても、労働者との労働契約を変更することが可能というわけです。

 ところで、就業規則の作成や変更の手続きについては、労働基準法で明確に定められているところです。それは、1 使用者の方で就業規則(案)を作成し、2 過半数労働組合または労働者代表の意見を聴収 3 正式な就業規則を決定の上 4 過半数労働組合または労働者代表の意見書を添付して 5 労基署への届け出とともに 6 労働者に対し周知をさせる ことになっているところです。(労基法89条、90条、106条)
 
 この6の労働者への周知は、<1> 常時各作業場のみやすい場所への掲示や備え付け、<2> 書面の労働者への交付、<3> パソコン等の設置となっており(労基法106条)、周知方法が労働基準法では限定されています。

 しかし、最初の労働契約法にもどって、「就業規則の内容が労働契約となる場合」の「周知」は、上記<1>、<2>、<3>の労働基準法の周知方法をとっていなくても、何らかの形で実質的に労働者側に周知させておけばよいとされ、「労働契約法7条の周知は、労基法令に定める3方法に限定されるものではなく、実質的に判断されるものであること」(平成20・1・23基発0213004号、なお平成19クリスタル観光バス事件)とされています。

 あくまでも一方の要件である合理的な就業規則ということが前提になるものであるが、このように就業規則が周知されていれば、いわゆる法律的な規範としての性質を認められると考えられているところであり、個別の労働者がその会社に就業規則があることを知らなかったり、内容を読んでいなかったりしても、何らかの形で周知されていれば、その会社の就業規則の内容で労働契約を結んだことになります。再度繰り返しますが、「就業規則の内容が、労働契約になる場合の周知」については、実質的に周知の措置が取られている限り、OKとなります。
  
 とはいえ、労働基準法からいえば、3・4段目で紹介したように、就業規則の作成・変更の手続きが明確に規定され、その周知についても、周知の方法は限定されています。周知についても、これに沿った周知をしないと、30万円以下の罰金が科されることになっていますので、労基法に基づいた手続きを行わなければならないのは言うまでもありません。



 参考;安西愈著 全改定・労働基準法のポイント(厚有出版)

(注1)ただし、変更の場合は、条文において「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき」とされ、合理性の具体的判断の条件を明らかにしている。



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職場にパート職員等がいる場合の就業規則の取り扱いについて <就業規則の作成等(5)>

2011-12-19 04:31:06 | 社会保険労務士
 就業規則作成等にはパート職員代表者の意見聴収も必要?!

 パートタイム等の雇用形態が違った労働者がいた場合は、そのパートタイム労働者等が適用になる規定が必要になりますが、別規定を設けるとしながら、それを作成していないと、正規職員の就業規則が適用にならないとも限りません。一般的には、退職金や休職、福利厚生の規定は、正規職員のみを対象としていますが、別規定を作成するとしておきながらそれを作成していないと、それが適用になるリスクも出てきます。たとえば、退職金の請求がパート職員から出された場合に、これに応じなければならないことだってあり得ることになります。(日本ビクター事件 横浜地裁昭41.9.6、清風会事件 東京地裁昭62.8.28 リスク回避型就業規則・諸規程作成マニュアル・森・岩崎共著)

 別規定を作成しなくて、正規従業員の規定をそのまま準用する方法もありますが、この場合は、どの規定を準用し、どの規定を準用しないのかを明確に区別することが必要です。そうでないと、やはり同じように、パート職員には、退職金の規定は適用しないと思っていたにも関わらず、退職金を出さざるを得ないこことになってしまうかもしれません。

 また、準用の場合は、どういうふうに準用になるのか分からない場合もありますので、読み替え規定(「○○○」は「△△△」と読み替えて、準用するといったもの)が必要になってくる場合もあります。また、パート職員のみに適用になる部分があれば、その旨記載した、パート職員を規定する条文を入れ込む必要があります。

 よくあるのは、正規職員だけの職場でパート職員等を臨時的に雇用したことにより、その臨時職員の取り扱いが全く就業規則に書いてなかったという場合です。この場合は、就業規則には、臨時職員の区別もないわけですから、正規職員の規定が適用になるリスクがあります。理屈からいえば、臨時職員から退職金を請求されても文句はいえないでしょう。

 さて、この別規定を作成・変更した場合に、パート職員から意見を聞かなければならないのでしょうか。労基法では、パートの適用規定であっても、事業所全体の従業員の過半数組合あるいは代表者に対して意見聴収すればいいことになっているので、その組合が、正規従業員の組合または、代表者でも、その職場全体の従業員の過半数を占めれば構わないことになります。

 ただし、パートタイム労働法では、パート職員の「過半数代表者の意見を聞くように努めるものとする」とされており、努力義務が課されていますので、実務上は、パート職員からも意見を聞くように配慮しなければなりません。




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意見を聞く「過半数労働組合・過半数代表者」の適格性について<就業規則の作成・変更(4)>

2011-12-14 04:17:38 | 社会保険労務士
 過半数の代表者は、従業員の中から選出しなくてよいのか?

使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、過半数労働組合それがない場合に過半数代表者の意見を聞かなければならない。(労基法90条1項)

 この事業場の単位は、場所的な観念により決定されるものなので、工場、鉱山、事業所、店舗等の同一の場所にあるものは原則として1個の事業となり、場所的に分散しているものは原則として別箇の事業になるものとされています。○○株式会社全体でとらえるのでなく、○○店のように場所的に組織的な一体となった最小単位でとらえるということですが、現場事業所のない建設現場のように、規模が小さく独立性のないものは、上の組織の中に含まれることになります。また、工場の中の診療所のように、明らかに労働の態様が異なるときは、切り離して一つの事業所とするとなっています。
 
 これについては、なぜ企業全体を1適用単位としないのであろうか。これについては、安西愈氏は次のように述べていますので、参考までに、この全文を掲載します。
「これは、労基法が、場所的に一体となった、できるだけ作業現場に対応する労務人事管理の単位ごとに適用することが、現実的、効果的であり、実効も期すことができるという法の目的からである。つまり、労基法は作業現場の適用法令であることを原則とするからであって、その現実の職場や作業の種類に応じた適用をなそうとしているためであり、労働時間等についてもそれぞれの職場単位の実情に応じた適用を図り、また労働者の意見の反映を反映を活かそうという目的のためである。」(「労基法のポイント」安西愈)

 この事業所単位で、従業員の過半数を組織している労働組合であれば、OKです。企業別組合に限らず、地域レベルや産業別で組織されている組合もよいとされ、また、その事業場に支部や分会がない場合であっても、該当すると考えられています。

 また、上記事業所の概念を申し述べましたが、事務取り扱い上、簡略化したと思われるのに、次のような通達がありますので、これに沿っての届け出も可能です。
 「労働組合が単一組織である場合は、本社において労働組合本部の意見を徴収することとし、支部等の意見聴収を行わないこととしても差し支えない。ただし、当該事業場の労働者の過半数が本社において意見を徴収する労働組合に加入していない場合は、別に、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等の意見を聞かなければならない」(昭和39.1.24 基収9243号)

 一方の過半数代表者についても、その事業所のおける従業員の過半数を代表する者であれば、良しとするものであるが、従業員の中から選出しなくていいものであろうか。これについて、法律上は、従業員の中から選出することは要件とされていないものの、その事業場に関係のない第3者に代表の権限を認めるのは問題があるということから、従業員の中から選出するのが望ましいとされています。(就業規則から見た労働法、大内伸哉著)


  

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