元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

遺族年金は両親の離婚により複雑な相談になるケースあり

2015-09-26 17:32:21 | 社会保険労務士
 元妻は、生計維持という条件が付くため、原則遺族年金の受給権はない!!

 遺族年金においては、両親の離婚により、遺族年金の権利や支給停止が複雑に絡み合い、難解な事例になることが多い。
 
 次の例は、夫が厚生年金の加入期間に死亡したという前提で、厚生年金被保険者であり、同時に基礎年金の被保険者(国民年金の2号被保険者)ということで、遺族厚生年金及び遺族基礎年金が支給される者が誰か居た場合は、両方とも支給されるという前提で考えてみます。

 妻は、夫との間に3人の男の子供が居ましたが、協議離婚しました。子供は夫が3人とも引き取り育てることになりました。長男がまだ高校1年のころ、夫が死亡。夫側の親戚との協議により、数か月後に協議が整い、次男と3男が妻と同居することになりました。夫が死亡した当時の年金と妻が次男・3男を養育することになった場合の年金の額と誰がもらうのかという問題です。

 と書きましたが、夫が死亡した時点では、離婚しておりすでに妻ではなく、夫からは生計維持されているという立場ではなかったため、元の妻である配偶者には、遺族年金厚生年金及び基礎年金の権利は一切ありません。

 もらえる配偶者(妻)がいないため、夫が死亡当時、生計維持されていた18歳到達年度の末日がきていない3人の子に支給されることになりますが、遺族基礎年金は、基本額に子2人分の加算が付いた年金を受給することになります。そこで、遺族基礎年金は長男・次男・3男に、この加算が付いた年金総額のそれぞれ3分の1ずつ受給することになります。
 遺族厚生年金も3人で平等に分けて、3分の1ずつ受給することになります。ここまでの話は、夫の死亡後数か月の間の話です。

 夫の親戚との話し合い協議が整い、次男・3男を引き取った場合は、どうでしょうか。ここでも、離婚した妻は、生計維持の要件を満たさないので、初めから遺族厚生年金、遺族基礎年金とも受給の権利はありません。そこで子に受給権があることは、夫の死亡時と同じですが、今度は子にとっての母(=妻)と生計を同じくしています。生計を同じくする父・母がいるときは、遺族基礎年金の支給が停止されますので、次男・3男は、母と暮らし始めた月の翌日から、遺族基礎年金は支給されません。

 それでは、長男の方の遺族基礎年金はどうでしょうか。母と次男・3男が同居しても支給停止はされますが、遺族基礎年金の権利は残っており、2人分の加算額は付いていますので、全体の額は同じです。しかしそれぞれ3分の1ですので、長男はその3分の1は、次男・3男の同居前と同じくもらえることになりますが、次男・3男には、今申し上げたように、支給されませんので、長男だけが3分の1を受給することになるというわけです。

 遺族厚生年金の方は、同居前とまったく同じで、長男・次男・3男に引き続き、それぞれ3分の1の額がもらえます。
 
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経過的寡婦加算の対象はなぜ昭和31年4月1日以前生まれか!!

2015-09-18 18:31:13 | 社会保険労務士
経過的加算+65歳からの老齢基礎年金が65歳未満に支給されていた中高齢寡婦加算の額に等しくなるように計算支給される

 子のない妻、あるいは子のある妻であっても子が18歳到達年度の末日等を過ぎると遺族基礎年金は支給されなくなり、その代りに、40歳以上65歳未満の妻には、一定の場合に、遺族厚生年金にプラス中高齢寡婦加算が付くことになる。この額は、「遺族基礎年金=(イコール)老齢基礎年金満額」の4分の3に相当する額である。(→780,000円×3/4=585,100円 H27年度価格)

 ところが、65歳になり、妻自身が老齢基礎年金を受けられるようになると、さすがにこの中高齢寡婦加算は加算されなくなります。しかしながら、この老齢基礎年金は、原則的には納めている納付済期間などに応じて支給額が決まってきますので、納めていない方には、それ相応の減額された老齢基礎年金になるのは、仕方がないにしても、制度が新設された昭和61年4月1日に30歳以上の者は、20歳~60歳の40年の加入義務期間のうち、30年しか納付・加入できないことになる。老齢基礎年金は、今言ったように昭和61年4月1日から実施され、20歳以上60歳未満の40年間がまるまる納付済期間である場合に、満額の老齢基礎年金(780,000円 27年度価格)が支給されるのであるが、昭和61年4月1日に30歳以上の者は、30年しか加入できず、満額に 30年÷40年を乗じた額(780,000円×30年÷40年=585,100円 H27年度価格)未満の支給となる。

 すなわち、昭和61年4月1日に30歳以上の者は、昭和31年4月1日以前生まれの者になるのであるが、30歳からいくら保険料を納付したとしても、満額の老齢基礎年金4分の3未満しかもらえない計算になる。

 とすると、昭和31年4月1日以前生まれの者は、今まで中高齢寡婦加算が「老齢基礎年金の満額」の4分の3支給されていたものが、65歳になり老齢基礎年金をもらうようになると、額的には老齢基礎年金の満額の4分の3未満となり、もらえる額がすくなくなってしまうのである。この差を埋めるために、生まれた年に応じて、経過的寡婦加算が支給される。ゆえに、経過的加算の額は、65歳からの経過的加算+生まれ年に応じ加入可能な納付済期間とした場合の老齢基礎年金=(イコール)65歳未満の中高齢寡婦加算 となるように、生まれた年に応じて、経過的加算の額が決まるのです。

 結論的にいえば、経過的加算の対象者は、1、昭和31年4月1日以前生まれ かつ 2、中高齢寡婦加算の要件を満たしていた遺族厚生年金の受給権者であって、65歳に達した者である。(さらに、これに加えて、遺族厚生年金の受給権を取得したのが、65歳以上の場合という遅くに受給権を取得した者をも含まれることになる。)

 ちなみに、昭和31年4月2日生まれ以降は、当然であるが加算額なしであり、さかのぼって、昭和30年4月2日~昭和31年4月1日の生まれの方は、19,500円、さらに昭和25年4月2日~昭和26年4月1日生まれは、117,000円であり、昭和2年4月2日~昭和3年4月1日生まれは、555,100円とだんだん増加され、昭和2年4月1日以前生まれの場合は、中高齢寡婦加算の額585,100円(いずれの額もH27年度価格)と同じとなります。

<妻の遺族年金は基礎年金・厚生年金・中高年加算のうまい連携で> 


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連れ子同志の結婚は遺族基礎年金支給のためには子を養子に!!

2015-09-12 17:12:22 | 社会保険労務士
 子は死亡した者の子でないと遺族基礎年金は支給されない

 遺族基礎年金は、妻(配偶者)に支給される場合は、「子」(18歳年度末までの子、1・2級の障害者の子のときは20歳まで)のあるとき(より具体的には、子と生計同一でなければならない。)にしか支給されない。

 ところで、夫婦になって、子供が生まれてという一般的な家庭の場合は、子供は夫婦の子であるから、夫の子であり、妻の子であるから、どちらの子であるかはあまり考えなくても、18歳年度末あるいは20歳までの子供を育てる間は、遺族基礎年金を請求すれば、この遺族基礎年金が支給されることになる。

 ところが、再婚者同志で、どちらにも連れ子がいて、夫が死んだ場合はどうなるのだろうか。(*)その夫婦は、夫の死亡前、どちらの連れ子とも一緒暮らしていたとしても、養子縁組をしていない限り、法的には夫の子は夫の子であり、妻の子ではない。一方、妻の子は妻の子であり、夫の子ではないのである。ここで、遺族基礎年金の子は、死んだ方の夫の子でなければならないのである。つまり、死んだ夫の関係が子でなければ、基礎年金の対象となる子として認められない。この場合は、死んだ夫の連れ子と一緒に暮らしていたので、その子と生計を同じくする妻となって、遺族基礎年金が支給されることになる。

 しかしながら、年金額的には、780,000円(妻の基本額)+224,000円(夫の子一人分の加算)=1,004,000円(27年度価格)となって、子供一人分の加算が付くけれども、もともとの妻の子には、その加算額の対象とはならない。

 遺族基礎年金の計算上は、妻の子供もその対象にするために、夫が生前に妻の子と養子縁組をしていたら、妻の子も夫の子と認められて、780,000円(妻の基本額)+224,000円(夫の子一人分の加算)+224,000円(養子となった夫の子2人目の加算)=1,229,100円となるのである。    (※妻が死んで夫がもらう時は、逆になるから、妻の生前に夫の子と養子縁組をしていればよいことになる。)

 ところで、連れ子は妻だけであり、夫に子はいなかった者どうしの再婚の場合に、夫が死んだ場合はどうであろうか。妻は、子のない配偶者(死んだ夫の子ではないため)となり、遺族基礎年金はまったくでない。働いており厚生年金を掛けていたとすれば、遺族厚生年金は出る場合はあるが、遺族基礎年金は出ないのである。支給されるためには、やはり、夫の養子にしておかないと、妻は子のある配偶者とはならず、遺族基礎年金は出ないのである。

 
 (*)もちろん夫が死んだとき、夫は国民年金の被保険者・老齢年金の受給権者等であり、保険料もちゃんと納めており、一定の他の資格基準を満たしているものとする。
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一般には65歳過ぎに初診日があると障害基礎年金は支給されない

2015-09-06 18:12:22 | 社会保険労務士
 障害年金は、基本的には被保険者期間に初診日があることが必要。

 障害年金は、基礎年金にしても、厚生年金にしても、被保険者期間中に初診日があって(初診日要件)、一定の障害が残り(障害要件)、一定の納付期間を有するとき(納付要件)に支給されます。

 そこで、よく相当高齢の方が、例えばある日ころんで、それがもとで寝たきりになり、障害が残ったという場合には、障害基礎年金は出るのだろうかということを聞きますが・・・。

 相当高齢の方というのが、キーワードですが、一般に基礎年金の加入期間(すなわち「被保険者期間」)は60歳までですが、さらに老齢厚生年金が出るまでの60歳以上65歳未満の場合(国内在住に限定)には、この期間中に初診日があればよいとなっています。ただし、それ以上の年齢の場合は、一般的には、認められず、基本的には、65歳を過ぎれば、障害基礎年金は支給されないことになります

 ところが、障害厚生年金は、基本的には、常勤等として会社に勤める限り、70歳まで厚生年金の加入者であり、被保険者となります。ですので、70歳までの被保険者期間中に、初診日があった場合には、理論的には障害厚生年金の受給の権利が与えられることになります。

 年齢で区切るとは、不公平ではないかとの声が聞こえてきそうですが、障害基礎年金の場合は65歳を過ぎると老齢基礎年金が支給されるため、それとの調整になるということです。

 *ただし、「一般的」とか「基本的」にという言葉を多用したのは、老齢基礎年金の受給資格(一般的には保険料納付済期間+免除期間+合算対象期間が25年必要)のないものに対して受給資格を満たすまでの間認める特例任意加入被保険者の加入期間、同様に老齢厚生年金に認める高齢任意加入被保険者の加入期間が、両方とも、さらに5年の延長を認められているため(ゆえに、基礎年金には65歳から70歳の間、厚生年金は70歳から75歳の間)は、この期間に初診日があっても、理論的には障害年金の受給の権利が発生することになるが、例外的なものであろう。
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