元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

「うつ病」の始まりには、有給休暇(休養)を取ってもらうのが職場の上司が第一に行うこと

2017-03-25 20:32:11 | 社会保険労務士
 休養とは何もしないこと、周りがチェックして、何もさせないように!!

 どんな病気でもそうだが、特にうつ病にあっては、うつ病の始まりにおいて、「休養」が大切である。軽症の場合には、薬物療法や本格的な精神療法は必要なく、がんばりすぎないという「休養」の姿勢を取ることによって、治すことも可能という。具体的には、有給休暇を取ることであるが、これが、実は最も難しい問題で、うつ病の人に限って、今ここで私が休めば会社に迷惑がかかるとなる。普段、まじめな人ほどあまり休暇を取らずに、働きずめの人が多いが、何日かの連続休暇を取ることがその人にとっては苦痛となる。しかしながら、あとあとの事を考えると、この時点で、ゆっくり休んで、エネルギーを補充しておいた方がいいというより、全く心のエネルギーが0(ゼロ)の状態が「うつ病」の状態なのであるから、休養してまずはエネルギーを入れなきゃならないわけである。

 インフルエンザであれば、皆に迷惑をかけるということで休むことになるが、うつ病の場合はそうではなく、そこを押して会社に出ていくことになるが、会社に行っても仕事は普段からすれば全くはかどらないし、逆に周囲の人にも迷惑をかけることになる。将来のことを考えると、今は休むことが将来のその人にとっても会社にとっても、早くうつから脱出し早く回復することにつながり重要である。

 ここは、本人がうつという病気の本質を自覚してもらい、休養の大切さを認識してもらうほかはない。ここまで「うつ病をなおす」(野村総一郎著、講談社)の趣旨を述べてきたが、そいういう「うつ」の始まりの方に氏が言うのは、うつ病者の努力好きの性格を逆手にとって、「今は一つだけ努力してもらう必要があります。休暇を取ることです。これには、相当の努力がいるわけで、当面これに力を注いでください。」と説明するという。こういうふうに説明すれば、努力して乗り切るといううつ病者の考え方に、休養がうまく乗っかるという。もちろん、この休養は、何もせずに文字どうり休んでいる必要があるのだが、うつ病者に限ってなにもしないということが苦手で、皆が働いている時間をなんとなく過ごすことなど考えられないこととなって、以前から考えていた資格試験の勉強をやるとかということになる。そのうつの状態で、うまくいくわけがなく、ますます追い込まれるこことになりかねない。周りの人のチェックが本当に必要なことになる。

 さて、ここまで書いて、うつ病の始まりを見つけたら、職場の上司として、また職場がどう対応すべきであるのかという点である。職場としても、今あの人に休んでもらっては困るというのが本音であろう。しかし、ここで快く本人に休んでもらって、他のメンバーでカバーし合うことである。このままの状態を継けて重症化になるのをまずは防ぐことが必要であり、そうなったら元も子もない。

 なお、よく言われているのは、上司としては叱咤激励してはならないというのはよく知られていることであるが、気分転換に温泉や、カラオケに誘うのもよくない。うつは先にいったがエネルギー不足であり、うつの人は誘いに断れない性格(が多い)であるから、最後のエネルギーをも使い果たしてしまい、自殺した例もあると氏は言う。

 うつ病の急性期の治療の根幹は、なんども言うようだか「何もせずにいる」ことである。普通の人から考えると分かりにくいところかも知れないが、「エネルギイー不足=うつ病」である点から、考えを及ぼしてほしい。

 また、自分が好きなスポーツ・レジャー、気の合う友人・家族との対話もうつ病(軽症)改善には有効であるとされるが、うつ病について解説した本を読むことも有効とされる。私の場合には、職場に勤務していた頃、うつとまではいかないが、いわゆるうつ状態になった時に、国分康孝著 カウンセリングの理論 (誠信書房)を見て、うつ状態から抜け出したのを覚えている。興味のある方は是非読んでみてください。いろんな精神分析理論に出会えます。(この本の著者は、ある理論だけによったカウンセリングではなく、いろんな説を長短をとらえた折衷主義を唱えたものであり、その意味でいろんな心理療法の解説を行っている。)
 
 参考 新版 うつ病をなおす 野村総一郎 
    この本の中で「うつ病とは何か」という問いの他に、最後のページを割いて「うつ病とはなぜ生じるのか」という興味深い仮説が挙げられている。興味深いというのは私だけかも知れないが、なぜうつ病という病があるのかということには、誰も論じてこなかった。そこのところを取り上げているが、ダーウインの進化論的に、うつ病は必要であったとする。興味のある方はごらんあれ。
 
 紹介 国分康孝著 カウンセリングの理論 (誠信書房)
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学生アルバイトに精を出そうと考えている方、弁償・罰金や損害賠償額の予定、給料差引には注意(禁止です)!!

2017-03-18 18:22:09 | 社会保険労務士
 アルバイトでも損害賠償額予定は禁止・給料差引きは原則禁止(全額払い)・重大な過失あるときのみ損害の負担!!

学生アルバイトの皿洗いに最中に、ミスって皿を落として割った時に、店長がやってきて、(1)「皿1枚○○円するから弁償してよ」さらに、そのあと続けて、(2)「バイト代から引いとくからね」と言われました。えーつ、少ないバイト代から差し引かれるのかと思った、そのアルバイトさん。支払う必要もありませんし、バイト代差し引きは拒絶できます。

 (1)のように、アルバイトの方(かた)が注意力が非常に散漫で異常に皿を落とすような場合は別として、たまたま皿を割ったような軽微な過失による損害については、支払う必要はありません。確かに、相手に不注意で損害を与えた場合、例えば、注文を聞き違えて2重に注文してしまった店に対する損害とか、ミスで皿を落としたとかのような店の財産(皿もりっぱな財産です)を壊してしまったときには、「過失責任の原則」により、損害額を支払うのが民法上の原則です。(民法415・416条、同法709条)

 しかし、ことアルバイトも「労働契約を結んで」バイトに入るわけですから、こういった労働契約の場合には、使用者との労働者(アルバイトもこの意味の「労働者」です。)との信頼関係によって成り立っているわけですから、不注意だからあなたの責任で全額支払えというのは、信頼関係の維持からいってあまりにも酷です。

 そこで、裁判では、使用者と労働者の経済力の格差や事業活動に伴う危険は、それによって利益を得ている事業者が負うべきという危険負担あるいは報酬責任の原則から、労働者側の責任を制限しており、軽過失の場合は、労働者には全く責任を押し付けてはいません。すなわち店側の責任負担になるとされています。労働者に重大な過失があった場合のみ、労働者にも支払いの必要はありますが、裁判では、一般従業員が深夜の労働中に高額な機械を居眠りによる事故から壊してしまった場合には、深夜労働であること、会社が機械保険加入の措置を取っていなかった等を理由に、労働者の責任を1/4に限定しました。(大隅鉄工所事件・名古屋地裁)労働者の負担が多い場合でも1/2となっています(株式会社G事件)。重過失でも労働者が支払うのはその損害額の全額ではなく、労働者の責任の程度、労働者の労働条件、店側の指示・事故予防等によって、一定割合負担になるに過ぎません。繰り返しますと、皿をたまたま割ったという場合は、この裁判例からいうと、弁償する必要はありません。

 さて、(2)のバイト代から引いとくからねというのは、これは労働基準法の違反です。労基法24条に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」(*1)とされていますので、これはできません。アルバイトといえども、労働基準監督署に相談したら、NGが出されるのは、間違いありません。

 また、「皿1枚につき○○円、コップ1つにつき○○円の「罰金」」といったように、あらかじめ損害賠償額を予定しておくのは、できません(労働基準法16)。バイトの始めに、このような定めのある契約書・誓約書に印を押させようとするバイト先は、やらないようが無難です。あとあとトラブルの元となります。

 ⇒学生アルバイト上の注意<その2>
 ⇒学生アルバイト上の注意<その3>




(*1)例外的に、税金・社会保険料の差し引きという法律で定める場合や労働者代表等との労使協定で定めた場合は、差し引きできることになっていますが、法律違反のこのようなときには、労使協定に定められるはずがありません。

 参考 大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A 石田眞・浅倉むつ子・上西充子著 旬報社
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出向は包括的な規定・同意だけではなく出向先での勤務条件等の整備規定が必要!!

2017-03-11 18:21:29 | 社会保険労務士
 出向先の勤務条件が変わるためその調整のための詳細整備が必要に!!

 配置転換は、同じ企業内での人事異動であるが、出向は現在の企業との雇用関係はそのまま維持した状態で、相当長期にわたって他の企業の業務に従事するものです。この出向は、雇用調整や中高年従業員の処遇改善、さらには人事交流や関連会社の経営・技術指導、能力開発等の積極的な人事政策として行われるものまで、様々な目的のために利用されている。

 ところで、出向については、その労働者の籍は元の企業に置いているとはいえ、他の企業の業務に従事するものであり、民法625条1項の「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第3者に譲り渡すことができない」と規定されていることから、何らかの労働者の同意が必要であるとされる。少なくとも配置転換のように周知された就業規則に書いてあるとか初めの雇用の際に同意したとかの、いわゆる包括的な同意だけでは、出向はできないとされている。

 しかしながら、元の企業に籍が全くなくなる転籍出向であれば、転籍先である企業と新たな労働契約を結ばなければならないので、個別の同意が必要であるとされているのとは、違うので、出向の場合は、個別の同意というそこまでする必要もない。

 考えるべきは、出向先が関連企業としてもどういう企業か、そしてその企業の労働条件等がどうなのかであり、この点の環境整備が必要であろう。すなわち、就業規則・労働協約や入社の際等において出向命令権の包括的な規定や同意があれば十分かといえば、それだけではだめで、『包括的な規定ないし同意によって出向を命じるには、密接な関連会社間の日常的な出向であって、出向先での賃金・労働条件、出向の期間、復帰の仕方などが出向規定によって労働者の利益に配慮して整備され、当該職場での労働者が通常の人事異動の手段として受容できるものであることを要する。』(菅野著労働法)とされている。(「具体的同意説」)
 
 新日本製鉄事件においては、最高裁で次のように判決が出されている。
 
 ある事業場における特定の業務を協力会社である別会社に業務委託するに伴い、その委託された業務に従事していた労働者に出向が命じられた場合において、入社時及び出向命令時の就業規則に社外勤務条項(出向条項)があり、また当該労働者に適用される労働協約にも同様の社外勤務条項(出向条項)があり、さらに労働協約である社外勤務協定において、出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられていたという事情の下では、会社は労働者の個別的同意なしに出向を命じることができる。・・・・出向は、その期間が長期化した場合でも、出向元との労働関係の存続自体が形骸化していなければ、直ちに転籍と同視して個別的同意を要するとまではいえない。当初3年間の出向を3度にわたり延長する本件出向延措置には合理性があり、これにより労働者が著しい不利益を受けるものとはいえないので権利濫用とはいえない。(最判平15.4.18 新日本製鉄事件)

参考 菅野和夫著 労働法 弘文堂
    荒木尚志  労働法 有斐閣 
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有給休暇の半日休暇は従来から認められていたが時間単位は労基法改正(H22)により認められた!!

2017-03-05 17:40:39 | 社会保険労務士
 時間単位の年休は労使協定締結によりはじめて認められる。(5日以内

 年次有給休暇については、時間単位については、労使協定が必要とされており、「労使協定を締結しなければ、労働者から請求されても時間単位で付与する必要はない」と書いてある。(人事総務検定2級講習テキスト、LECリーガルマインド) 一方、半日単位での付与については、「就業規則で定めれば付与可能」と記されている。(上記同テキスト) 時間単位については、労使で定まった「労使協定」という形式によらなければならないのに対し、半日は使用者の定める就業規則でも可能とされているのはなぜか。

 これには、沿革的なことから説明した方が分かりやすい。年次有給休暇の趣旨は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ることです。従って、かっては時間単位は認められていなくて、あくまでも一日単位でした。したがって、時間単位の付与は全く認めず労基法違反という時代があったのです。しかし、その頃も土曜日は半日の労働日という職場も多く、土曜日に年次有給休暇を取得したら、これを半日休暇として、土曜日の年次有給休暇が2回で年次有給休暇1日と取り扱うことは、労働基準法を上回る日数を与えることになるので差し支えないとされていました。つまり、休暇の単位は労働力の維持培養のために一日が原則だったのですが、例外的に半日まで認めていたのです。労働基準法解釈総覧(厚生労働省労働基準局編)には、法39条第1項に継続または分割した10労働日となっているが、半日ずつ請求することができるかという問いに、年次有給休暇は、一日を単位として請求するものであるから、使用者は半日単位で付与する義務はないとなっています。(昭24.7.7基収1428号、昭63.3.14基発150号、発令年月日が昭和24年や昭和63年になっていることに留意)裏を返せば、使用者の義務はないということであって、半日単位の休暇は認めるとも読めます。また、本来の1労働日単位の取得方法の阻害にならない範囲であれば、労使が同意した場合(労使協定・労働協約とは必ずしも言っていない点に注意⇒単なる労使での同意でいいと思われる。筆者)は、半日付与することに問題はないとも書かれています。(人事労務の実務4 畑中義雄ほか著 秀和システム)、
 なお、注意点としては、半日の時間をどこで分けるかを決めておくことが重要です。例えば「午前と午後で分ける」「一日の所定労働時間の半分とする」

 こういった原則1日単位の有給休暇の付与から、年次有給休暇の取得率が半分しかならない現状の下で、年休取得の促進と労働者のちょっとした用事を済ませるためにという要望もあって、平成22年4月1日から、労使協定を結んだ場合には、時間単位での休暇の取得ができるように労基法改正がなされました。今まで、原則1日で運用規定で半日単位であったものが、法改正により時間単位でどうどうと認められるようになったというわけです。
 ただし、労使協定で次の4つを決めることになっています。この協定は労働基準監督署へ届け出る必要はありません。
   1 時間単位年休の対象者の範囲  
    「工場の生産ラインで働く社員は対象外とする」など除外する必要性もあり。もちろん当該社員全員を時間単位年休の対象としても問題はない
   2 時間単位年休の日数
     5日以内で定めることとされていますので注意の事。
   3 時間単位年休一日の時間数
     どういうことかというと、一日の所定労働時間が8時間のときは、時間で取得した時間数の累計が「8時間分」の年休をとったときに一日取得したと数えるということ、所定労働時間が7時間のときは「7時間」となりますが、所定労働時間が7時間30分の時は、繰り上げて「8時間」としなければなりません。(労働者に有利に考えるということです。)
   4 一時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
     ふつうは1時間単位ですが、一日の所定労働時間内で2時間、3時間という単位でも決めることができるということです。4時間になると、ほとんど半日の有給休暇と変わらないことになりますが・・・ 

 参考 人事労務の実務4 畑中義雄ほか著 秀和システム
    人事総務検定2級講習テキスト、LECリーガルマインド
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