元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

祭祀財産の承継は、一般の法定相続とは異なる!!

2014-07-26 18:37:02 | 後見人制度
 祭祀財産は、まずは慣習により承継するとなっているが、慣習には現在明確なものがあるのか??

 後見人は、被後見人の相続に際して、原則的には法定相続に沿った主張を行うことになっています。例えば、母親と子供である被後見人が、相続人であった場合は、一般的には、母親の相続財産の1/2に対して、子供としての被後見人は相続財産の1/2を主張することになります。

 ところで、この相続財産には、夫婦とか親子関係などの被相続人のみが持つことができるもの(これを一身専属権といいます。)は引き継ぐことはできませんが、これ以外の一切の権利義務を受け継ぐものとされています。例えば、住んでいた家屋の賃借権も引き継ぐことになっています。

 被相続人のみが持つべき一身専属権を除いてといいましたが、所有権なのに、もう一つ承継の対象として全く別の考え方をするものがあります。それは、先祖を祀る道具で、相続財産とは異なるものとしてとらえられています。先祖を祭る道具とは、家系図、過去帳などの系譜、位牌、仏壇、仏具、神棚などの祭具、そして墓石、墓碑、墓地などの墳墓をいいます。

 これらは、一般的には、その地方の習わし(慣習)により、先祖を祭ることになっている者が承継することになっていますが、被相続人が、遺言やその他の書面、口頭などで祭祀を主宰すべき者を措定をしたときは、その指定を受けた者が一番に祭祀財産を受け継ぐことになります。先祖の祀る習わしがはっきりせず、被相続人の指名もないときは、家庭裁判所の審判で決めるとなっているのです。(民法897条)

 このように系譜、祭具、墳墓の祭祀財産にについては、その特殊性から、祭祀主宰者は必ずしも相続人である必要はないことになりますし、例えば被相続人の内縁の妻や一般の相続財産の放棄を行った者であっても、祭祀財産を承継できることになります。また、祭祀財産の承継は、放棄・承認の規定がなく、祭祀を主宰すべき者として指定を受けた者は、祭祀財産の放棄はできないと解されていますし、逆に祭祀主宰者は必ずしも祭祀を行わなければならない義務はなく、自由に処分できるともされています。(広島高裁昭和26.10.31)
 さらに、その権利を受け継いだ者が他の者に譲ることも構わないとされています。

 何度も言いますが、祭祀財産の承継については、考え方が一般の相続とは大きく異なっているのです。

 私事で恐縮ですが、母が先に亡くなり残った父が死んだ場合で、我々子供が祭祀財産をどうするかということになったとき、田舎の事なので一般的には、慣習では長男が受け継ぐということでしたが、長男・次男も遠方で、結局3男であった私が受け継ぐことになりました。

 ここらは、民法の規定を当てはめた場合、どう解釈すればいいのでしょうか。最近では、長男とかは関係なく、次げる者が次ぐようになっているように思えます。これも慣習として、近くの者が次ぐということになるのでしょうか。どうも慣習と言っても最近でははっきりしないようです。ここでは、家庭裁判所の審判を仰ぐまでもないと考えましたので、私がそのまま受け継ぐ形になっております。最近では祭祀財産の承継については、長男とかの慣習はすたれてきており、慣習が変化してきているのか、それとも慣習がなくなっているのかわかりませんが、はっきりいえるのは、慣習そのものがうやむやになっているのではないでしょうか。
 (それとも、まだ長男という慣習は残っており、長男が受け継いで、単に私にその権利を譲ったとみるべきでしょうか。)

 参考文献(一部引用を含む) 口語六法全書(自由国民社)、成年後見人死亡後の実務と書式(日本財産管理協会編、新日本法規)
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被後見人がペットより早く亡くなった場合の世話を誰にお願いするか!?

2014-07-21 01:26:42 | 後見人制度
ペットといえど法的には権利義務の主体となることはできませんので、自分の死後の財産をペットには譲れません。
 
 先日、うちの愛犬がなくなりました。人であろうとペットであろうと「死」という生の収斂は、犬の散歩のときの付き合い程度だったにもかかわらず、やはりそれなりの愛情が深かったのでしょうか、精神的にダメージを私に与えました。特に妻には、子供が育ち巣立っていった、最後の「子供」だったようで、日常の世話をしていたためか、相当のショックだったようです。ドッグイヤーというのは、人の1年が6年に相当するといいますが、、愛犬は16歳になっていましたので、既に人の年齢の90歳を超えていたようです。歴史的には、我が家の子供が犬とじゃれあって、家から離れて行き、その後残った、私たち老夫婦が犬の保護者になりましたが、それが今日まで続き、愛犬の臨終を迎えたのです。

 さて、話しを成年後見人制度にもどして、成年後見制度を利用している後見人に愛犬がいた場合においては、どうでしょう。被後見人は、隣近所や区長さんなどの協力を得ながらどうにか愛犬の世話をしてきました。自分か死んだら、だれが愛犬の世話をしてくれるかどうか気になります。

 その前に、逆の場合で、被後見人より愛犬が先に亡くなったときは、「後見人」が包括的な代理権を持っていますから、後見人の代理の範囲内で、後見人本人の意思を尊重し、犬を手厚く葬ってあげることができますので、まずはひと安心です。

 ところが、冒頭の話にもどって、後見人の方が愛犬より先に亡くなった場合はどうでしょう。「後見人」の仕事は、後見人の死亡の時点から、管理してきた財産の引き渡しのための財産計算を除いて、全くなくなります。被後見人の死亡の時点から、愛犬といえども物扱いで、相続人の相続財産となってしまいます。相続人が愛犬家で引き取ってくれればいいのですが・・・。

 そこで、分かりやすい方法としては、遺言に残すことです。愛犬といえども先ほどもいいましたが、権利・義務の主体となることはできず、モノ扱いですので、「愛犬」そのものに財産を残すことはできません。そこで、信頼できる人に愛犬を「遺贈」して、かわいがってもらうことです。
 ・遺言者Aは、B(生年月日、住所)に愛犬ポチを遺贈します。
 ・Bには、ポチを家族同様に大事にし、食事や散歩等その飼育を誠実に行うよう希望します。ポチがなくなったときには私の墓のそばに埋葬してください。


 しかしこれでは、愛犬家であって信頼のおける人であれば、よいのですが、遺言では、遺贈の部分しか法律関係は発生せず、他の大事に扱う等の点においては、Aさんの希望にしか過ぎません。そこで負担付遺贈という方法があります。

 第○条 遺言者Aは、遺言者の有する預貯金のうち金500万円を、B(生年月日、住所)に遺贈します。
 第○条 Bは、この遺贈の負担として、Aが飼育している愛犬ポチを引き取り飼育するものとします。ただし、やむ得ない事情のため飼育が困難な場合は、大切に飼育してくれる人を責任をもって探すものとします。愛犬ポチが死亡した場合は、適当な方法で埋葬、供養してください。
 第○条 ポチがAより先に死亡した場合には、遺贈しません。
 第○条 遺言執行者をC(生年月日、住所)とします。


 Bに対して、利益を与えると同時に、愛犬の世話等の負担を伴うことになりますが、Bが遺贈を拒絶すれば、この遺言そのものが成り立ちませんので、Bには愛犬ぽちの飼育義務もなくなります。やはりBに前もって了解を得ておく必要がありそうです。遺言執行者を指定して、遺言執行を進めるとともに、執行全体の監督してもらうことも必要です。

 A、B両者ともに、了解しているのであれば、遺言というかたちではなく、「負担付死因贈与契約」という贈与契約という方法を取ることが可能です。

    負担付死因贈与契約
  贈与者Aと受贈者Bとの間で、本日、次のとおり死因贈与契約を締結する。
 第○条 平成○年○月○日贈与者Aは、以下の財産を受贈者Bに対し贈与することを約し、Bはこれを受託した。
       ○○銀行○○支店の預金全部
 第○条 Bは、本件贈与を受ける負担として、次の各号を履行することを承諾する。
     (1) Aの愛犬ポチを引き取って飼育、療養に努める。
     (2) 前号の療養に要する費用及び飼育に係る費用はBの負担とする。
     (3) 愛犬ポチが死亡した場合には、適宜な方法で埋葬、供養すること。
 第○条 Aは執行者としてC(生年月日、住所)を指定する。
 第○条 Bが第○条の負担を履行しないとき、Aは本契約を解除することができる。


*遺言・契約の例文については、いずれもQ&A「成年被後見人死亡後の実務と書式」((一社)日本財産管理協会編、新日本法規発行)の中から引用(P121~123)した。さらにここでは、信託法による信託の方法も紹介している。
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死後事務委任契約は、委任者本人の死亡により、終了するのでは??

2014-07-13 18:30:09 | 後見人制度
 死後事務委任契約が無制限に認められるとすると、相続人の権利を侵害するのではないか?!

 成年後見制度の業務は、本人の死亡により、原則として終了します。後は、財産管理を行い、相続人等に報告するという仕事が残っているだけです。法定後見の場合は、明確な規定はないものの後見を受ける本人が死亡すれば、終了するというのは当たり前だと考えられているし、また、任意後見の場合は、後見を行うという依頼関係が、信頼関係に基づく「民法の委任契約」であることからすれば、この委任は、民法の規定により、委任者である本人の死亡により終了するとされています。(民法653条)

 一方、相続人が、本人の死亡の時から、亡くなった本人の一身専属的なものは除いて、一切の財産上の権利義務を受け継ぐことになるので、一般的にはスムーズに、相続関係に移っていくことになります。(民法896条)

 
 ところが、今の世の現状では、相続人がいない場合とかいても疎遠になっているとか、あるいはまったくどこにいるのかわからないということだってありえます。そこでは、葬儀、亡くなった本人の諸手続、入院や介護の費用の支払いなど、本人亡き後、本人の意思を継いで、行っていく必要のものが必ずあり得ます。確定した相続人がいれば、この相続人に任せればいいのですが、むしろそうすべきでしょうが、相続人がいない等の場合には、どうしようもないことになります。このようなことから、委任契約を締結した場合の委任関係において、「委任契約の当事者である委任者と受任者は委任者の死亡によっても委任関係を終了させない旨の合意をすることができる」(最判平4.9.22)とされました。すなわち、生きているうちに、委任者が信頼できる人に委任内容をお願いすることにより、委任者がなくなってからも、その契約内容の履行が始まるという「契約」をむすぶことが最高裁でも認められたことになります。このような契約を「死後事務委任契約」と言っています。実務的には、任意後見の場合には、任意後見契約自体が公証人の下での契約を行うことになっているため、死後の事務について不安のある方は同時に、死後事務委任契約を締結することが多かったといわれています。

 ここで、疑問が生じます。こういう形の死後事務委任契約があるとしても、相続人は一切の権利義務を受け継ぐわけだから、その中には、死後委任契約の解除権もあるわけで、相続人によって死後事務委任契約が否定されないかという疑問です。これに対して、「委任者が死亡しても当然に契約を終了させない合意だけでなく、契約は特段の事情のない限り、委任者の地位の承継者が契約を終了させることは許されないとういう合意を包含する」(平成21年12月21日東京高裁)として、委任者である本人が死亡した場合、委任関係を終了しない合意だけでなく、相続人という委任者の地位を承継した者が契約を終了させることは、「特段の事情がない限り」許されないものとしました。委任者の意思を死亡後も最大限に尊重していこうという考えです。

 しかし、無制限にこの死後委任契約が認められるとすると、もともと相続人に一切の権利義務を承継するとしているのだから、相続人の権利義務が制限されることになり、そこにはおのずから委任事項の制限、継続的な委任の時間的な幅の制約があるということになります。
 一般に死後事務委任契約として考えられているものとしては、病院・施設入所費用の未払い分、葬儀・埋葬及び納骨、遺品の整理、遺品・相続引き継ぎ事務、借家の明け渡しと敷金等の精算、行政官庁の諸届、関係者への死亡連絡、遺体の引き取りなどは、短期的に処理しなければならないもので、かつ必要・納得できる事項で、委任契約が死亡後もそのまま継続すると考えるのが相当でしょう。しかし法要や永代供養については、死亡後、相当長期間継続するため、相続人に解除権があると考えられます。
 ただし、葬儀については、行うとしても、葬儀の方式や費用について、「合理的な」範囲に限られることになるでしょう。


 参考:Q&A成年被後見人死亡後の実務と書式(日本財産管理協会編)新日本法規
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認知症等による高齢者の消費者被害と成年後見人制度の利用について

2014-07-06 18:43:04 | 後見人制度
 認知症等による高齢者の消費者被害には、成年後見人制度の利用による「契約の取り消し」が有効!!

 国民生活センターの報告によると、2013年度に全国の消費生活センターに寄せられた相談のうち、認知症や知的障害のある高齢者が被害に遭ったケースは、約1万600件で、10年前に比べほぼ倍増したという。全体の相談件数は、この間に4割近く減少する中で、判断力が不十分な高齢者が集中的に狙われている実態が浮かんだということである。健康食品の送り付け商法や投資詐欺商法、悪質リフォーム業者による不要な工事など、被害金額は1千万円程のものがざらであり、非常に深刻であるにもかかわらず、被害の回復は難しく、国民生活センターとしては、「地域の見守りや成年後見制度の利用で未然に防いでほしい」と呼びかけている。

 消費者被害に対処するためには、契約取り消しを伝えるだけで無条件の解約ができる「クーリングオフ制度」が用意されているのだが、これは、契約書等の書類を渡されてから、その日を含めて一般的な訪問販売の場合には8日を経過すれば、できなくなる。一人暮らしの場合には、被害の発見が遅くなり、気が付いてからでは手遅れになっている例が多い。

 また、消費者契約法による契約の取り消しの時効は、だまされたとかに気が付いたときから6か月ですので、取り消し期間は長い。しかし、この場合には「これからこの金融商品は値があがるばかり」と言われたので買ってしまったとか「帰ってほしいといいったのに帰らない」とかの勧誘の方法により問題があり、誤認して(見誤って)あるいは困惑(どうしていいかわからず自由な判断ができない状態)して契約してしたことを、消費者が主張して、はじめて契約取り消しができるのですが、判断能力の衰えた高齢者の場合には、どうやって契約書の印鑑を押してしまったのかさえ、説明できないことが多い。

 そこで、国民生活センターの呼びかけに戻るのだが、成年後見制度の利用である。昔、禁治産者とか準禁治産者とか呼ばれていたもので、この頃は契約の世界から、契約を行う能力はないので排除するとのイメージが強くあまり利用されなかったものであるが、成年後見制度は、このイメージを改め、判断能力の不十分な者を保護するために、自己決定の尊重、現有の能力の活用、ノーマライゼーション等の新しい理念の下、柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度としてリフォーム化されたものといえます。従来の禁治産・準禁治産の2類型ではなく、後見、保佐、補助と3類型になり、能力の程度に応じて、それに応じた制度が用意されて使い勝手の良いものとなっています。配偶者・4親等内の親族等の申し立てにより、裁判所が最終的には審判を行い、この制度の利用の決定を行いますが、それにより、裁判所から選任された後見人等の保護者が、契約についての同意権や取消権を持って、本人を保護していくことになるのです。

 禁治産等と呼ばれていた時代には、戸籍に記載され、人権が無視されたかのようなところがありましたが、別途、成年後見等の登記制度により、契約等に必要な場合は、関係者だけに登記事項の証明を行い、その人が相手方にその登記事項証明書をもって、契約の当事者たる資格があるのか、ないのかの証明をすることになるわけです。

 3類型の後見は、ザックリいえば、精神上の障害により判断能力が一番なくなった状態で、一人で買い物もままならない状態、保佐は、一人で買い物はできるが、不動産や自動車などの売買、金銭の貸し借りなどの重要な財産行為はできない状態、補助は一人で生活するのは問題はないが重要な財産行為はだれかが代わってやったほうが良いという状態である。

 したがって、裁判所より後見の開始がなされた場合は、たとえその高齢者が契約書に本人の印鑑をおしていたとしても、保護者(=後見人といいます)が取り消しの意思表示を行うだけで契約は無効になってしまいます。保佐の場合は、一定の契約等については、保護者(=保佐人といいます)の同意を得なければ、あとから取り消しができるとされ、日常生活を超えた高額な消費者被害の場合にはこの同意を得なければならない場合に含まれますので、保佐人は知らなかった(同意していない)として、取り消しが可能です。補助の場合はどうかというと、個別に、例えば「訪問販売による取引」を、同意を得なければならないものとしてあらかじめ決めていなければなりませんが、それが行われていれば、保護者(=補助人といいます)の同意を得なかったとして契約の取り消しが可能です。

 このように、成年後見制度を利用することにより、認知症等による消費者被害を防ぎ、さらに契約の取り消しも容易で、被害の回復にも寄与することができます。この制度の利用については、地域包括センターとか市町村の高齢者担当課等にお問い合わせになってください。
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