元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

新型うつの正体は?発生的に「精神病型」「過負荷型」「不適応型」メンタルヘルス不調の3分類(吉野聡氏)

2016-02-27 18:21:21 | 社会保険労務士
 新型うつ病等(不適応型メンタルヘルス不調)は職場で普通に起こり得る出来事が原因でも発症する!!

  新型うつ病とは何か。私も総務課長として、職場で扱う「うつ病」とかなりの数向き合ってきたが、新型うつといわれるうつ病の正体については、なかなか納得できる答えが得られなかった。特に、極端な例として「休んでハワイで遊ぶ」といったように新型うつは軽いのかと問われると、職場の「問題」としてとらえると、質が違ってかなり厄介な病態なのである。というのも、職場をしばらく離れれば回復したかに見え、職場復帰させればぶり返すというのが、特に多いと思われるからである。そこで、これだと納得したのは、精神科産業医の吉野聡氏が、{「職場のメンタルヘルス」を強化する}(ダイヤモンド社)の著書※1 の中で、述べておられる結論である。

 吉野氏は発生年代別に捉えて、「精神病型メンタルヘルス不調」「過負荷型メンタルヘルス不調」「不適応型メンタルヘルス不調」の3つの分類を行い、この最後の不適応型メンタル不調の中に新型うつを含めて考えている。

 まず精神病型メンタルヘルス不調だが、統合失調症、躁うつ病、てんかんの3大精神病を中心とした精神病であり、かっては閉鎖病棟で治療を行っていたものであるが、現在では治療薬の進歩により、一般社会での生活が可能となったばかりか、就労が可能な患者も多くみられるようになった。そこで精神行型メンタルヘルス不調とは、心の健康に関する問題が「精神病」という名の異常なものとして捉えられていた時代から存在するところの、これらの精神障害の類型を指しているのである。

 次に過負荷型メンタルヘルス不調とは、電通事件(2000年3月24日最高裁判決、会社1億6800万円支払いで和解)が起きて「メンタルヘルス」という言葉がつかわれるようになった頃から生じたものである。これはこの事件が端的に示すように、徹夜を含む慢性的な長時間労働が継続することにより、睡眠不足や心身の疲労からから起こる精神的な不調を言う。

 これに対し、最近のメンタルヘルス問題で、特に困難な事例は、職場で通常想定される範囲のストレスで、気分の落ち込みや意欲低下、さらには頭痛、めまいなどのさまざまな身体症状を示すようになり、職場に来られなくなるような事例が挙げられている。吉野氏が発症のきっかけの例として挙げるのは、「新人が通常行ったきたところの、飛び込み営業が怖い」、「先輩から挨拶をしっかりするように叱責され、その場面を思い出すと動悸がする」「自分が希望していた部署と違う部署に配属され、将来が見えなくなった」など、職場では通常どこでも起こり得る出来事にあるようなのだ。

 そしてこれらは、職場から離れると、比較的すみやかに症状がなくなるばかりか、職場に迷惑をかけたといった罪悪感・自責感も薄いため、周囲の感覚からは病気なのか本人の甘え等の生き方の問題なのかわからないような病態であり、筆者の遭遇した事例では、同様のメンタルヘルス不調の場合であり、あくまでも「噂」であるが、ある日同僚が飲み屋に行ったら、休んでいるその人がそこでワイワイ騒いでいたという。そこで、吉野氏はおそらくと前置きをして、これらの病態は専門的に言えば適応障害、発達障害、新型うつ(現代型うつ)などのさまざまな精神障害を包含する概念であると思われるのだが、これを「不適応型メンタルヘルス不調」と呼ぶことにするとしている。実は、この不適応型メンタルヘルスの方が対応が困難であって、精神病型メンタルヘルス不調にあっては、薬物療法でコントロールしながら職場の再適応を図ることで対応し、また、過負荷型メンタルヘルス不調であれば、十分な休養と最低限の薬物療法で治療して、そのうえで職場で過重労働に配慮し、さらに本人に内在する問題に向き合って行けば職場復帰は可能なのであるが、不適応型メンタルヘルス不調に合っては、職場を放れて休養させても、また薬物療法でも症状軽減には役立つには役立つのであるが、いざ職場に復帰させるとなると、職場の仕事上の問題が発症の原因となっているため、職場の「配慮」そのものがそう簡単にはできずに再度の発症となることが多いのである。

 これらの3分類が現在では混在しているとみられ、メンタルヘルスの観点から、長時間労働の削減を叫んでも過負荷型メンタルヘルス不調には有益であるが、不適応型メンタルヘルス不調には対応できないことになる。過労死や過労自殺が社会的問題として指摘され、労働時間を削減し、長時間労働に対し医師の面接が義務化されて、現在まで企業としても出来る限りの取り組みを進めてきたが、それでは不適応型メンタルヘルスの対策にはならないことになり、現実に不適応型メンタルヘルスは増えているというのである。

次回へ<不適応型メンタル不調(新型うつ)の原因は<職場環境要因と個人要因>>
 
 ※1 出来るだけ、原文に忠実に要約はしたつもりではあるが、意訳的に行ったところもあり自分の勉強不足で、著者の意味するところが表現できてないかも知れません。(詳しく知りたい方は、吉野聡氏の著書をお読みください。)
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有期労働契約5年超の無期転換ルールの周知<27年度労働契約等解説セミナーの無料開催=国の本腰>

2016-02-21 14:16:39 | 社会保険労務士
 新人入職時期の繰下げ⇒そのまま入職させ休職手当の支給か、内定者との合意により時期の繰下・同手当支給なしも可

 労働契約法は、雇用される「労働者」と雇用するほうの「使用者」をつなぐルールとして、平成20年3月に施行された新しい法律です。

 労働基準法があるじゃないのと言う方もいるかもしれませんが、この法律は、主に使用者に「・・・してはならない」として、使用者に義務を求めることにより、労働者の最低の労働条件等を守られせる法律です。それを担保するものとして、労働基準監督署等の行政機関があり、罰則が設けられおり、いわゆる法分野としては、どちらかというと行政法に位置する法律です。

 これに対して、労働契約法は、労働者と使用者の私的な関係の間で、契約する=労働契約に関しての法律です。もちろん、この私的な関係を規定するものとして、民法があり、雇用契約として、規定されているところではありますが、民法は、労働者、使用者とも対等な関係において契約を結ぶのが前提とされておりまして、一般に契約においては、実質的には、使用者が優位に立つことが多く、裁判等によってその解釈等が変更されてきました。

 そこで、民法に対する特別法として、新たに平成20年3月に、裁判によって確立された法理を含めて労働契約法として、条文化したものがこの法律でして、さらに平成24年月に改正法が成立し、これらを併せて、十分とはいえませんが、労働法の法律としての体裁を整えてきたところです。

 そこで、国としては、労働者、使用者双方にこの労働契約法の周知を徹底するため、平成27年度においても、無料で全国各地で「労働契約等解説セミナー」を開催。特に、同一の使用者との有期の労働契約が5年を超えて繰り返し更新された場合、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換するという「無転換ルール」により、労働者のこの申し込みの権利が平成30年4月以降、多く発生すること(この条文の施行が平成25年4月になっているため、これにより契約した有期の労働契約が5年経過するのが、ちょうど平成30年4月になる。)が予想されることから、労働者・使用者双方ともこのルールを正しく理解して、円滑な無期転換を進めなければならないためか、この混乱を避けるために、国としても本腰を入れて行っているようです。

 前置きが長くなりましたが、宮崎でも労働契約等解説セミナーが開催されましたので、私も参加させていただきました。教科書は、次のような表題で、ばりっとしたもので1冊にまとまって整理されています。

 労働契約等解説セミナー 安心して働くためのルール ~使用者と労働者の約束事=「労働契約」とは(平成27年度厚生労働者委託事業)

 次はその中から、Q&Aとして取り上げられたものです。<使用者>ありうるけど、よくあるケースでもなく、<労働者>あったら困るケースとして、実際あったらどうするのかということで、この教科書の中からそのまま掲載します。

 【入職時期の繰下げ】に関する労働相談
 使用者からのQuestion
  4月1日付けで採用を予定する者について、自宅待機させるか、入社日自体を延期したいと考えていますが、その場合に労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるのでしょうか。


 Answer
採用内定の際に予定されていた入社日に入社させた上で、実際には就業させず自宅待機を命じた場合には、当該自宅待機は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たらない天災事変等不可抗力の場合を除き、労働基準法第26条に定める休業手当を払う必要があります。
  ここで、不可抗力とは、(1)その原因が事業の外部より発生した事故であること (2)事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること の2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。

   *注意しなければならないのは、経営障害の材料不足、輸出不振、資金難、不況であっても、
    不可抗力には該当せず、不可抗力の意味は非常に狭く解されています。

  また、採用内定の際に定められていた入社日自体を延期する措置(入社日の延期)を行う場合は、採用内定者への十分な同意を得る必要があり、これを行わないまま入社日の延期をすることはできません。
  
   *採用内定は、一般には労働契約は成立しており、働いてもらう時期が先になる
   (始期付き解約権留保付き労働契約)というだけであり、契約変更は採用内定者
    との同意が必要(労働契約法第8条)

  同意を得て入社日を変更した場合でも、採用内定者の不利益をできるだけ回避するため、延期期間はできるだけ短くするよう努めていただくことが望まれます。
 
 なお、新規学校卒業者の入職時期繰り下げを行おうとする場合は、所定の様式により、必ずハローワーク及び学校に通知することが必要になります。

 *の部分は、筆者の追加部分
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派遣労働者の施設利用につき派遣先は配慮義務・努力義務があるのだが・・派遣労働者にやさしい派遣先とは

2016-02-12 18:17:57 | 社会保険労務士
 派遣労働者にやさしい派遣先の会社とは<気遣い・気配りのある会社/チェックシート>

派遣労働者が派遣先において仕事をする際に、そこでの福利厚生施設についての利用の制限があったりして、派遣労働者は差別されているとの認識をもち、よく苦情相談として出てくることがあるようです。

そこで、派遣先での福利厚生施設の中でも、給食施設、休憩室、更衣室については、特に業務の円滑な遂行に必要な施設であるので、派遣労働者に施設利用の機会を与えるよう配慮しなければならないとし(派遣法40条3項)、また、その他診療所等の現に派遣先の従業員が通常利用している福利厚生施設についても、派遣職員に利用させる便宜を図るよう努力義務が規定されています(派遣法40条4項)。

繰り返しますと、給食施設・休憩室・更衣室の利用については、派遣先会社への配慮義務であり、派遣先の「会社の従業員が日常利用している施設」に対する利用については、派遣先会社への努力義務であって、施設利用に当たって派遣先の会社に対しては、必ずしも「しなければならない」という義務として規定しているわけではないところです。しかしながら、派遣先会社に対して不十分ながら一定の配慮・努力義務が規定されているところではあります。

 そこで、今言いました法に規定してある配慮・努力義務を含め、勤務条件とまでは言えないちょっとした待遇面まで、派遣先会社側で気が付かない気配り不足というようなこともあるようです。派遣労働者の本音として、布施直春氏は(*1)著書の中で次のような例を挙げています。
 
 1、派遣社員は、社員食堂を利用できない。社員番号がないと、どの福利厚生施設も利用できない。
 2、社員食堂には社員価格があり、派遣職員はそれよりも100円高い。
 3、社員にはロッカーがあるのに、派遣社員にはない。
 4、派遣社員は、派遣先会社で使用する備品、事務用品を自費購入させられる。
 5、派遣職員は、どんなに長く働いても、座席表に個人名を掲載してもらえない。
 6、派遣職員の職場の飲み会への参加が、派遣の契約条件になっている。会費を1回5000円払わされる。
   派遣職員は、料理を皿に取り分ける係、ドリンクの注文係をやらされる。
 7、派遣職員は営業アシスタントで、自費で取引先の接待をしなければならない。

 チェックの結果はいかがでしようか。ちょっとしたことでも、アウェイにいる派遣労働者からはなかなか言い出せないこともあるようです。ホームにいる会社側の社員は、買って知ったる我が家ですから、言われればそうだがというようなことですが・・・ホームグラウンドの優位性から半分は分かっているのか、又は意識的行っているところもあるかもしれませんが、全く気が回らないで行っているところもあるようです。特に5の座席表の件については、気遣いが足りないことからくることかもしれませんね。

(*1)詳解平成27年度改正労働者派遣法p216 布施直春著 ㈱中央経済社発行 
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休日・休暇・休業・休職・療養の用語の意味・区別/使い分けは?

2016-02-05 18:34:29 | 社会保険労務士
 休職は公務員法で使われている用語ですが、一般の労働法では規定がなくモデル就業規則で定着したものでは?!

 休日、休暇、休業、休職、どれも仕事上休むことですが、なんか区別・使い分け(どういう意味)があるのでしょうか?休日は労働基準法で基本は1週間に1回は休日を設けるというアレです。休暇は、同じく労働基準法で年次有給休暇として出てきますし、休業は労働基準法では産前産後休業の他休業手当として出てきますが、よく聞かれるのは育児休業、介護休業として育児介護休業法で使われていますね。この休業という言葉は、私は初めて見たときは、店の休業をイメージして、労働者の休業としては、ピンときませんでした。労働者の休業(休み)なんですよね。休職はいわゆる労働法では使われていません。しかし、よく就業規則で使われていますので、休職は現在では当たり前のように使われていることばです。
 
 「休日」というのは、労働契約において労働義務がない日のことです。
 
 ・「休暇」というのは、労働契約において労働義務がある日(労働日)について、会社が個々に労働義務を免除した日のことです。有給休暇もこの休暇の一種です。
 
 ・「休業」というのは、労働者が労働契約に従って労働の用意をし、しかも労働の意思を持っているにもかかわらず、会社にその提供を拒否されたり、何らかの理由でその提供が不可能となった場合の事で、労働契約は存続しているものの、労働者の労働義務は消滅するため、「休暇」の一種とされています。
  ⇒「休暇」と「休業」を厳密に区別する基準はないようですが、休暇のうち、一定期間の間に連続して時期を指定して取得するものを休業と呼ぶのが一般的です。<先に挙げた>例えば、産前産後休業、育児休業、介護休業がありますよね。
 
 ・「休職」は、法律上<厳密には労働法>の制度ではないのですが、一般的には、労働者を労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、会社が労働契約関係を維持しながら労務への従事を免除したり、禁止したりすることをいいます。
  ⇒会社が一方的に命令することにより休職になるのが通常ですが、会社と社員が休職について合意することもあります。どのような場合に休職になるかは、会社の定める就業規則等によって異なります。具体的にどのようなことが理由で休職になるのかによって、休職の目的も変わってきます。例えば、私傷病休職は、私傷病によって欠勤し労働契約で定められているとおりに仕事ができなくても、ただちに解雇することはせず、一定期間その回復を待ち解雇を猶予するために設けられているのが通常です。

 [・ちなみに「療養」というのは、負傷したり疾病にかかったりした場合の治療のことをいいますので、必ずしも休業したり休職を伴うわけではない。]
 (以上、太字部分は、社員のメンタルヘルス問題(メンタルヘルス研究会)中央経済社P123~124からそのまま引用、ただし<>部分は筆者が文脈の前後関係から分かりやすく挿入したところ)
 
 休職は<厳密には労働法>の制度にはないといいましたが、さらに正しくは一般的な労働法の分野にはないといった方が正確で、実は公務員法(国家公務員法、地方公務員法の両方合わせて、ここでは「公務員法」と呼ばせていただきます。)には休職として記載されているのです。公務員法では、先に挙げた私傷病休職に該当するような場合や刑事事件に関し起訴された場合に、意思に反して休職することができるとされています。公務員法は公務員の採用から退職までを規定し、勤務条件についても規定するものですし、公務員に関する規定ですので、公務員もれっきとした労働者であることから、公務員法が規定するところは労働法ともいえますが、公法の取り扱いのため特殊な労働法の分野とみられています。そこで、労働法ではないといえば、一般的な労働法からは除外されているところです。

 公務員法は、先ほど申し上げましたが、公務員の採用から退職までを規定した上、勤務条件についても述べたものですし、民間の就業規則に値するものです。公務員は公けなものであるから法律に規定されていますが、その規定する公務員法は、民間のものとしては就業規則に相当するものでしょう。この公務員法の休職の規定を就業規則においても同様の規定をおいたものともいえると思われます。
 
 休日・休暇・休業・休職・療養の用語は、法律の用語として使われている場合は、先ほどの使い分けを意識して読まれると、理解しやすいかと思われます。しかしながら、それぞれの会社の就業規則において、先ほど述べた「休日、休暇、休業、休職」の用語の区別が出来ているかというとそうではありません。しかし、大体においては、その区分で読んでいのですが、その会社、会社で必ずしもそういった区別があるとも限りませんので、どの制度にどういった意味でその用語が使われているか留意してから読まれることに注意が必要ということだと思います。
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