元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

使用者は権利濫用になる解雇に伴う未払賃金と中間収入の相殺をどの程度まで行えるのか

2017-04-28 18:10:58 | 社会保険労務士
 関連判例の整理~休業手当相当額は控除不可(ただし賞与等は別)・賃金支払対象期間と「時期的に対応する」中間収入のみ

 解雇は、権利濫用に当たる場合は、無効となり(労契法16)、従前の労働契約がそのまま存続することになるので、労働者は解雇訴訟においては「労働契約上の権利を有する地位の確認」を請求することになる。それとともに、労働者は、解雇訴訟において解雇期間中の未払い賃金の請求もできることになる。
 民法536条2項(前段部分) 債権者(使用者)の責めに帰すべき事由によって債務を履行する(労働の提供をできなくなった)ことができなったときは、債務者(労働者)は、反対給付(賃金の請求)を失わない。
 労働させるのは使用者だから、ここでは債権者であり、債権者の責めによって労働の提供ができなくなった債務者=すなわち労働者は、賃金の請求権を失わないことになる。
 では、例えば、タクシー運転手が違法に解雇(=権利濫用の解雇)されて、この解雇された期間中に他の会社に雇用されて収入を得ていた場合にはどうなるのか。この収入は一般的に「中間収入」と呼びます。
 民法536条2項(後段部分) この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者(前段と同様に、この場合は「使用者」である)に償還しなければならない。 タクシー運転手が他の会社に雇用されて得た収入=中間収入が「自己の債務を免れたこと」によって得た「利益」に該当する場合は、その額は使用者に償還しなければなりませんが、その全額でしょうか。どの程度の償還をしなければならないのか。また、償還と言うめんどうな手続きを踏まずとも、違法な解雇期間に支払わなければならないことになった賃金との「相殺」を行ってはいけないのか。

 このあたりの判例について、うまく簡潔に整理をしたのがありましたので、そこから以下にそのまま安直に引用します。(両角他著労働法P211、有斐閣) 
判例はこの問題を以下のように処理した。
 ①中間収入は、それが副業的なものでない限り、民法536条2項にいう償還の対象となる。
 ②使用者は解雇期間中の未払賃金額を支払うにあたり、中間収入額を控除することができる。すなわち、未払い賃金債務と中間収入償還分の債権を相殺してもよい(労基法24条1項の「賃金の全額払いの原則」の違反とはならない。)
 ③ただし、この控除の対象と出来るのは、賃金の支払対象期間と「時期的に対応する」期間についての中間収入のみであり、かつ未払い賃金額のうち平均賃金(労基12条1項)の6割に達するまでの部分(注1)については当該控除の対象とすることができない。
 ここで、(注1)の「平均賃金の6割に達する部分」というのは、労働基準法26条の休業手当相当額のことである。使用者の責に帰すべき事由による休業の場合は、使用者は、絶対的に、平均賃金の6割の休業手当を支払わなければならない(最低生活保障のため)という強制法規があるので、この額の部分については、中間収入といえども控除できないとしている。(米軍山田部隊事件・最二小判昭和37.7.20)
 労基法12条1項 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。 

 ④賞与など平均賃金算定の基礎に算入されない未払い賃金がある場合には、6割までという制限なしにその全額が中間収入との調整対象となる。(以上、あけぼのタクシー事件・最高裁) 

 平均賃金の算定の基礎に算入されないものとして、見舞金等の「臨時に支払われた賃金」や賞与等の「3か月超の期間に支払われる賃金」がある。それゆえ、この賞与等については、その全額が中間収入との調整の対象(=控除の対象)となるのである。
 労基法12条4項 3か月の賃金総額を3か月の総日数で割るが、賃金総額には、臨時に支払われた賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない

 ⑤賞与については、その支給日が属する月の中間収入をそこから控除することができる。(いづみ福祉会事件・最三小判平18.3.28労判933号12P) 
 ⑤は要するに賞与についてはその支給日が属する月を③にいう「時期的に対応する」期間とする立場であるが、学説上は賞与の算定対象期間を基準とすべきであるという見解も有力である。
 
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採用内定辞退の労働者への使用者からの損賠賠償は一般的には発生しない!!

2017-04-22 17:51:49 | 社会保険労務士
 使用者と労働者では内定辞退の適用法令が違う<経済・情報量差/労働契約法と民法一般原則の適用>
A君はB社に採用内定をいただいていたが、後から受からないだろうと思っていた第一志望のC社から内定をもらったので、B社に対して内定の辞退を申し出たところ、B社の担当者から「誓約書も書いているし、今更内定辞退と言ったってね、採用試験等に要した費用にいくらかかっていると思っているの、損害賠償してもらうからね。」といわれました。A君は内定辞退の損害賠償をしないといけないか。
 結論から申し上げると、内定辞退については、労働者からは2週間の猶予期間は必要ですが、いつでも辞退は可能で、一般的には損害賠償責任は発生しません。

 確かに、内定の法的性格は労働契約が成立していると解することが一般的になっており、使用者側からの内定取り消しについては、労働契約の解除(=雇用する者からの一方的な解除は「解雇」といいいます。)となり、労働契約法16条により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利を濫用したものとして無効となります。さらに、そういった使用者の恣意的な内定の取り消しは、契約が成立している以上、使用者の誠実義務違反となり債務不履行の問題となりますし、また採用されるという労働者の期待権の侵害となり不法行為の問題となってきますので、労働者からは損害賠償請求ができることになります。

 しかし、逆に労働者からの内定の辞退の申し出についてはどうでしょう。一般的に労働契約が成立しており、その契約の解除と言う点では使用者の場合と変わりませんが、今度は労働契約法にはなんら規定がありません。そこで、「契約自由の原則」である民法に戻り、解約の自由を謳った民法627条の規定により、労働者からの労働契約の取り消しについては、少なくとも2週間の予告期間をおく限り、いつでも自由にできることになります。それゆえ、一般的には、労働者に損害賠償責任は発生しません。ただし、それがあまりにも信義則に違反するような状態で労働契約の解除がなされたとかの場合のみ、例外的に労働者の契約責任やときには不法行為責任の問題になると考えられます。

 それでは、使用者と労働者では、このように法律の適用が違っており、使用者側の内定の取り消し(すなわち使用者からの契約解除=解雇)については制限規定があり、労働者からの内定辞退(すなわち労働者の労働契約の解除)については、自由に契約解除ができるのでしょうか。具体的に考えると、労働者にとっては、内定までいって取り消しというのは、すでに他の会社の採用について募集に応じるのは時すでに遅しで他の採用に応じるのが困難な状況ということを考えると分かると思います。労働者と使用者の立ち位置について、企業側にとってはの競争企業との争いがあるとはいえ、経済的かつ情報量の差が労働者と使用者の間には使用者企業の方が優位にありますので、使用者の内定取り消しについて、制限の規定を設けたものでしょう。

 採用するB社にとっては、せっかく優勝なA君を逃したくないということは分かりますし、採用の計画がくるってしまい、改めて採用を行うならさらなる費用もかさみますので、腹立ちまぎれに損害賠償をというも分かります。しかし、企業側はそこは織り込み済みのところもあり、調整していかなければならないところもあると思われます。そこでは、すでに採用にコストがかかった分をA君が払う必要はないと思われます。裁判になっても、法律上の考え方については、上に述べたとおりですので、A君に対する損害賠償については認められないと思われます。それでも、裁判まではいかずとも、脅かしのためか損害賠償を請求してくる企業もあるようです。(大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A・石田眞他著・旬報社) A君としては、学校の就職センターや労働基準局・監督署の総合労働相談センター等に相談してみましょう。
 
 参考 菅野著労働法 両角他労働法 
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学生アルバイトにもノルマを課す、達成出来ないときは商品買い取りの要求ってどう考える!!

2017-04-15 16:33:08 | 社会保険労務士
 強制的に給料から商品代金を差し引くのは賃金の「全額払いの原則」違反、売れ残り商品で賃金の代わりもNG(通貨払いの原則違反)

  学生アルバイトをやろうとしている方で、最近、気をつけなければならないものとして、販売ノルマの問題があります。私たちが学生アルバイトをしていた頃は、うん十年前のことですが、そのころの学生アルバイトには、正職員と区別して、学生としての配慮(学業に専念するのが本来の務めであるという)をしてもらっていたような気がします。言いたいのは、最近ではアルバイトにもノルマを課すというのを聞くわけです。今は、コンビニ等のチェーン店が多くなり、ここの従業員はアルバイトやパートが多く、場合によっては正職員は店長のみということもあり得る状況です。そんなご時世ですから、学生アルバイトにも販売のノルマを課すのも当たり前のようになってきています。特に、クリスマスケーキなどの季節商品については、その時期に多くを売って稼ごうということから、どこの店でもやっきになって販売合戦を行うことになります。

 使用者が労働者に対して、販売戦略の一環として、ノルマを課すというのは違法でもなんでもありませんが、ノルマを達成しなかった者に対して、店側が自費での買い取りを要求するのは、問題です。ノルマ未達成の商品買い取りについては、本来は、アルバイトを行う際の契約には、そんな契約はしなかったはずですので、買い取りの強制はできないはずです。しかし、ノルマを達成できなかった学生アルバイトの中には、ノルマを達成できなかったのは自分のせいであるとの認識を持つ者もいて、買い取りを断ることができないものもいるかも知れません。そこは学生は学生の本分を忘れずに、そこまで責任を持つ必要はありません。一番いいのは、働き始める前にノルマの有無等を確認しておくことも一つの方法かもしれません。

 将に労働基準法違反そのものとなるのは、店側が買い取りを要求し、強制的に給料からその代金を差し引くことです。これは、賃金の「全額支払いの原則」に違反することになります。まさか次のようなことまではしないとは思いますが、売れ残りの商品でもって、賃金の代わりとすることがあったとしたら、これは、賃金は「通貨で」支払わなければならないとした「通貨払いの原則」にも違反することになります。(労働基準法24条1項)

 労基法24条1項 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

 ⇒学生アルバイト上の注意<その1>
 ⇒学生アルバイト上の注意<その2>



 
  参考 大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A 石田眞・浅倉むつ子・上西充子著 旬報社
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学生バイトでも業務上ケガは労災保険⇒自己責任関係なし、初日労働から適用、強制保険<アルバイトの注意点>

2017-04-08 18:28:34 | 社会保険労務士
 公務災害保険加入の公務員と任意である5人未満の農林水産事業だけが強制加入にはならないだけ、後は強制加入です!!

 今年大学生の仲間入りをして、さっそく学費のためにと飲食店でアルバイトと始めたAさんですが、アルバイト初日から仕事中に厨房で相当大きなやけどをしてしまいました。市内で数店舗で営業している地元でも大きな飲食店でしたが、店長から次のようにいわれました。
 
(1) あなたのミスでやけどをしたんでしょう。自分のミスなら「自己責任」。自分の保険証で医者にかかるしかないわね。
(2) 医療費は正職員なら「労災」があるけど(そこから支払ってもらえるけど)、アルバイトでしかも今日から勤め始めたのに、労災は認められないわね。
(3) 「労災」なんてうちは入ってない。だから、労災から支払うなんて無理。
 いずれも、店長の言い分は間違い、あるいは知らないのか、またはウソをついています。

 (1)について 「仕事上」のけがにより病院にかかった場合は、その費用は労災保険という制度から支払われます。これは、「業務上」(=仕事上)のケガであることが必要ですが、業務以外のケガの場合で健康保険制度等により保険証を出して診てもらうのと裏腹の関係にあります。つまり、業務上の場合は、労災保険から医療費の全額が支払われ本人の負担は全くありませんし、業務に関係ない場合は、保険証を出してケガをした本人が一部の負担を病院で支払いますが後の部分は健康保険制度等から支払われることになります。逆に云えば、業務上のケガの場合は、通常の健康保険証等を出してはならないのです。
 さて、この労災保険ですが、本人の過失は全く問われません。もちろん、飲食店側の過失も問われません。確かに一般の損害賠償については、過失が問われるのが民法では常識にはなっていますが、この労災保険に限っては、過失を証明することは必要ないというか、業務上のケガであるかだけが問われるのです。業務に基ずくケガであれば、過失があったかどうかは関係ないので、だまされてはいけません。一般常識的に「自己責任だから」ということばに騙されてはいけません。

 (2)について 労災保険の対象となる労働者とは、使用者に雇われて賃金をもらう人を指します。労働し始めたのが、昨日・今日だからとか、アルバイトだからとかは関係なく、その対象となります。確かに、失業した際に給付される雇用保険とか、厚生年金とか健康保険とかは、一定の条件で働かないと保険に入らせてもらえないところはありますが、この労災保険にあっては、だれでもケガをする可能性があるものであり、アルバイトでも働き始めたときから労災保険の対象となる労働者になります。

 (3)について 労災保険制度には一部の例外を除いてほとんどの事業者が加入しなければなりません。例外は、国家公務員とか地方公務員の労災保険と同じような「公務災害」に入ってる方か、5人未満の規模の農林水産業の事業所(暫定任意適用事業といいますが、これだけが任意の加入です。)だけです。したがって、飲食店は当然労災保険に入っていなければなりません。多分店長さんがこの労災保険について知らない場合には、それは組織として事務部の取り扱いとなっており、加入していることを知らないのだと思います。もし本当に加入していない(本当は強制加入ですのでこの表現はただしくはないのですが・・)のであれば、後からでも、その飲食店は労災保険の保険料を支払わなければなりませんが、場合によればその病院代全額を請求されることもありえます。なお、この労災保険保険料は、全額事業所の負担です。労働者は負担なしです。

 総じて、業務を原因としたケガは、業務災害と呼ばれ、労災保険制度からその治療費は支払われます。アルバイトもこの労災保険の対象になります。ただし、本人が一銭も支払わなくても良いというのは、「労災指定病院」で診てもらった場合で、やむをえずそれ以外の病院で見てもらった場合は、労災であることを伝えたうえで、治療費はいったん本人が立て替えることになりますが、後日その費用は本人に支給されます。店長さんがこの手続きを知らないのであれば、事務を行っている部局に相談してください。もしも、どうしてもその事業所で対応してもらえないのであれば、自分で労働基準監督署で手続きを行うしかありませんが・・・。

 ⇒学生アルバイト上の注意<その1>
学生アルバイト上の注意<その3>


 参考 大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A 石田眞・浅倉むつ子・上西充子著 旬報社


 
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事業場を異にして労働する場合の労働時間の「通算」(労基法38①)の解釈と兼業促進<仕事の多様性から>

2017-04-01 17:38:33 | 社会保険労務士
 労基法38条1項の労働時間の「異事業通算」の考え方は、労働者保護からは正論であるが実務的には・・・

労働時間の原則的な制限は、一日8時間、1週40時間であるが、この時間の計算に当たって、異なる事業所で働いた場合には、どうするのかということについては、労基法38条1項に規定されている。

 「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」とある。(労基法38条1項)

 ある労働者が一日にA事業所、B事業所でそれぞれ5時間ずつ働いた場合は、通算するとあるから 5時間+5時間=10時間となり、一日8時間を超える2時間については時間外労働となり、この時間は割増賃金となる。もともと労働基準法は、全体の解釈として事業所単位で考えるというのが一般的な考え方で、例えば時間外労働を行う際の36協定においても、事業場単位で締結することになっているが、この考え方を取り入れるとそれぞれ事業所で働いた労働時間の5時間で持って計算することになり、割増賃金は支払わなくてもいいことになり不都合なので、この場合は通算するということを示したものである。この場合、同一使用者を念頭においてのことであるとすると、だれもが納得するものであろう。

 ところが、通説・行政解釈は、当初から一貫して、同じ使用者の下での事業場を異にする場合のみならず、別の使用者の下での事業場を異にする場合も含まれるとしてきたところである。一人の労働者が複数の使用者の下では働くのであれば、通算しないということになると、過労防止の観点から問題となり、労働者保護の観点からはこのように解釈する方が確かにベターであろう。

 しかし、再度申し上げるが、労基法の一般的な考え方は、事業所単位で考えるところを、この労基法38条1項の規定に限っては、事業場が異なっても労働時間については通算するというのを規定したというのが、一般的な普通の解釈ではないかと考える。そう考えると、同一の使用者の下での通算規定であると解する方が素直な解釈である。菅野労働法では、このように「解してもよかったと思っている」としている。(*注)

 もちろん、法の趣旨をどこにおくかによって、すなわち労働者保護の立場をとるか、単に事業所単位の計算方法を示したものと取るかによって、この条文では使用者が異なるのか同じなのかが明確にされていない以上、どちらの解釈も成り立つものである。

 通説・行政解釈は、労働者保護の観点からのものであり、確かに理屈としては通る考え方であるが、実務上は実際に計算する場合には、困難が伴うことになる。時間外をさせた方の使用者が支払うことになるが、一日の後に働かせた使用者の方が一日8時間を超えることになり、後の使用者が割増賃金を支払うことになり、毎日の事であれば、後の使用者のみが負担することになり不公平になる。週40時間を超える労働の割増賃金になると、どちらが支払うのか(どちらの使用者の時に40時間を超えるのか)については、全く別々の使用者同士が密に連絡を取らないとちゃんとした割増料金を支払うことができない。また、もともとそういった労働者であれば、なかなか別のところでも働いていますとは言えない、言わないのが常であろうし、そうであれば、使用者同士の密なる連絡自体ができないことになる。通説・行政解釈は、労働者の保護という理論的解釈からするといいのだが、実務的には、理論道理にはうまく機能しないというのが現実であろう。この点について、2005年の労働契約法制研究会報告書では別使用者間の通算制について見直しの提言を行っているとされる。

 ここらをず~っと書いてきて、前にも書いたように思うが、今、仕事の多様化の論議が検討されており、この中には、兼業禁止の見直しや労働時間の上限問題があるが、兼業を認めることになれば、別々の使用者の場合に実質的に機能していない(と思われる)この労基法38条の規定をどうするか、この労基法38条1項の規定を立法的に解決する必要<同一の使用者と異なる使用者に分けて、異なる使用者の時にはどうするのかをはっきりさせる必要があるのではないか>があるように思う。

 *注1 さらに菅野氏は「行政解釈でも、使用者が、当該労働者の別使用者の事業場における労働を知らない場合には、労働者の通算による法違反は故意がないために不成立となる」としている。 

 参考 労働法 菅野和夫著 弘文堂
    労働法 荒木尚志著 有斐閣 
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