元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

業務災害・通勤災害の具体例⇒どんなものが認められる?!

2017-07-30 12:36:50 | 社会保険労務士
 業務災害であるのに、健康保険での労働者のキズの手当はアウトですが・・・<はっきりと区別を>

 労働災害保険においては、業務災害や通勤災害として、所轄の労働基準監督署が認定の上、病院代等の費用について支給がなされます。
 業務災害及び通勤災害の例として、次のようなケースをあげてみます。一般的に○は認定、×は認定されないと思われるものです。

1、業務災害
 ・ケース1
  総務課のAさんは、事務所の蛍光灯が切れていた。脚立の上で蛍光灯の取り換え中に、足を踏み外しケガをした。
  ⇒○ 照明の取り換えは、総務課の仕事の中に含まれており、業務中の事故として、業務災害が認められるでしょう。
 ・ケース2
  社員Bは、取引先を訪問。取引先の社員が重い荷物を運んでいたので手伝ったが、その際荷物を落として足にけがをした。
  ⇒× 取引先の仕事とは直接の関連性は認められませんので、業務災害ではないでしょう。
 ・ケース3
  業務中、社員同士2人が口論から喧嘩。殴り合いになった。上司のCは、これを止めようとしたが、2人に逆に突き飛ばされて、転倒。けがをした。
  ⇒○ 上司の行為(けんかの仲裁)は当然のごとく業務の中に含まれるものであり、業務災害として認められるでしょう。ただし、部下社員同士は、けがをしても、業務災害とは認められないでしょう。

2、通勤災害
 ・ケース4
  Dは会社に歩いて行く途中、通勤経路上でビルの工事をしていたが、そこの防護網が破れていて、上から工事資材が落ちてきてケガをした。
  ⇒○ 通勤途中(通勤経路上)の事故なので、通勤災害でしょう。
 ・ケース5
  社員Eは、気の置けない同僚と終業後にいつもの店に飲みに行き、終電に間に合わず、同僚の家に泊めてもらい、翌日そこから出勤したが、交通事故に遭った。
  ⇒× 住居以外からの通勤となりアウトです。(ただし、住居以外からの通勤は一定の場合にはそこが「住居」と認められるときもありますので、留意)
 ・ケース6
  社員Fは自宅から会社まで3キロ程度であり、徒歩での通勤ということで会社に申請(通勤手当の関係)していた。申請後数か月してバイクに切り替えたが、当該申請内容の変更を怠っていた。ある日の事、バイクで通勤途上自動車に接触し、バイクごと転んでケガをした。
  ⇒○ 交通手段は合理的な方法であれば徒歩であろうとバイクであろうとセーフです。あくまでも通勤手当の会社の申請と通勤災害とは関係ありません。しかし、会社の申請とは違った内容となっていますので、早めに変更すべきでした。
   (この場合は、会社の規定にもよりますが、多分バイクの方が通勤手当が多くなっているところが多いでしょう。これが逆ですと、通勤手当が減額となりますので、後から会社に当減額の支払いを求められることになりかもしれません。ちゃんと届け出はしておきましょう。)
 ・ケース7
  社員Gは、自動車で通勤している。ある朝、通勤するため自宅敷地内の車庫に行き、車に乗る際に車のドアの取っ手に手をはさみ、指にケガをした。
  ⇒× 通勤災害はあくまでも、通勤途上の移動中の災害です。これは自宅内での事故であり、アウトです。
 
 *当事例は、最後の例を除き、ケースの例・ヒントを著書「社長、その労務管理はアウトです」(藤本勉著、労働調査会発行)からいただきました。
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業務上の精神障害による自殺は正常な認識等の著しい阻害によるものがあり労災法の「故意」の死亡には該当せず。

2017-07-22 17:45:25 | 社会保険労務士
 労働者が故意に死亡等・直接の原因となった事故を生じさせたときは、労災給付を行わない<労災法12条の2の2第1項>

 労働者であれば、正規であろうと非正規であろうと関係なく、また、労働者に過失があるなしにかかわらず、労災事故に遭ったときには、いわゆる「労働災害=労災」として扱われ、使用者の加入している労災保険(=労働者災害補償保険法)100%でみてくれることになる。ここで、労災事故と言うのがポイントで、業務災害の認定を労働基準監督署によって受けなければならず、これがいわゆる「業務上」と判断「業務起因性」があるかどうか」)されるかどうかがカギとなるのである。

 ただし、労災と判断されたとしても、労災保険から支給されないことがあり、それは「労働者が、故意に負傷・疾病・傷害・死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は保険給付を行わない」場合である。<労災法12条の2の2第1項>

 自殺は、とりもなおさず、自らの死を招くものであり、「故意」ではないかということが問題となり、以前は、業務上の傷病により精神障害となり心神喪失の状態になって自殺したのであれば、本人の故意によるものとはいえないとされた。一方で理路整然とした遺書を書いて自殺した場合は、心神喪失状態とはいえないことから、故意による死亡として労災不支給とされていた。

 しかし、裁判は、自殺であっても、業務を原因としてうつ病等が発症した場合には、その病態として自殺行為が出現する蓋然性が高いと医学的にも認められていることから、労災法12条の2の2第1項の故意に当たるわけではないとし、自殺であっても業務起因性を認める例がでてきた。こうした裁判の動向や社会情勢の変化の中で、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平成11.9.14)が出されたのである。
 要は、業務上に係る自殺の場合は、必ずしも労災法12条の2の2の故意とするのではなく、あくまでも総合的な判断であるが、病態としての自殺が出現する蓋然性が高く<*注1>、原則として業務起因性を認めるとしたものである。以下に、そのまま原文で、同指針の内容を挙げるので、参考にしていただきたい。

 <故意であるかないかについて
 業務上の精神障害によって、正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたと認められる場合には、結果の発生を意図した故意には該当しない。(基発第545号 平成11年9月14日)

 <精神障害による自殺について、業務起因性があるかどうか
 ICDー10のF0からF4に分類される多くの精神障害では、精神障害の病態としての自殺念慮が出現する蓋然性が高いと医学的に認められることから、業務による心理的負荷によってこれらの精神障害が発病したと認められる者が自殺を図った場合には、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が阻害され、または自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたものと推定し、原則として業務起因性が認められる。
 ただし、上記の精神障害と認められる事案であっても、発病後治療等が行われ相当期間経過した後の自殺については、治癒の可能性はその経過の中での業務以外の様々な心理的負荷要因の発生の可能性があり、自殺が当該疾病の「症状」の結果と認められるかどうかは、さらに療養の経過、業務以外の心理的負荷要因の内容等を総合して判断する必要がある。
 なお、上記以外の精神障害にあっては、必ずしも一般的に強い自殺念慮を伴うとはいえないことから、当該精神障害と自殺の関連について検討を行う必要がある。(基発第544号 平成11年9月14日 「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」から)

 参考 ICD10の精神・行動の障害分類
  F0 症状性を含む器質性精神障害
  F1 精神作用物質使用による精神及び行動の障害
  F2 統合失調症等及び妄想性障害
  F3 気分(感情)傷害
  F4 神経性障害、ストレス関連傷害及び身体表現性障害
  F5 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群
  F6 成人の人格及び行動の障害
  F7 知的障害(精神遅滞)
  F8 心理的発達の障害
  F9 小児(児童)期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害、詳細不詳の精神障害

 *注1 ただし、ICD10による精神・行動の障害分類によっては、自殺の出現する蓋然性が必ずしも高くないものもある。高いのはF0~F4までである。
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通勤手当は民法上労働者負担であり支給基準が定められて初めて賃金とみなす!!<労基法の賃金の考え方>

2017-07-15 17:41:19 | 社会保険労務士
作業服、作業用品代、出張旅費、社内交際費、器具損料は業務必要経費であって、本来的には労基法の賃金(≠人件費)にはなり得ない

 労働基準法の「賃金」とは、労基法が労働者の保護を図るのに重きをおいているから、「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」(労基法11条)とされており、賃金をなるべく広義に解釈して、支払規制の及ぶ範囲をより広くしている。支払規制とは、よくいわれている賃金支払いの4原則 1、通貨払いの原則 2、代理人を介してはならないという直接払いの原則 3、全額払いの原則 4、毎月1回以上一定期日払いの原則の他、男女同一賃金などの労基法上の労働者保護の規制のことである。

 そのため、広く解釈する方向で「何が労働の対償に当たるかではなく、何が労働の対償に当たらないのかという、いわば消去法によってその範囲を画する(決める)という手法が採られている。」(荒木労働法)

 たとえば、結婚祝い金という名目上は労働とは直接的な関係ないものであっても、支給規定等の基準が定められて、労働者に労働提供の対価として支給されると期待が生じる場合は、広義には「労働の対償」として解されることになり、賃金とみなしている。このように、結婚祝い金のような「任意的恩恵的給付」に該当すれば、本来直接的な労働の対償ではないにもかかわらず、支給基準があってそのとおり支給されることになれば、労働者の期待感から「労働の対償」の範囲内に含めるということであろう。また、従業員のための資金貸付、住宅貸与、レクレーション施設の提供などは、従業員の「福利厚生給付」であり、労働の対償とはいえないものであるが、同じ福利厚生給付であっても、支給規定等のより支給基準が決まっている「家族手当」や「住宅手当」は、同様に「賃金」に当たることになる。

 さて、ここからであるが、作業服、作業用品代、出張旅費、社用交際費、器具損料等は、業務遂行のため必要な費用(実費弁償)であり、これは本来企業が負担する費用(=人件費ではない、企業本来のコスト)であるので、結婚祝い金等と同列に「賃金」とすることはできない。これが、企業が支出する旨の基準が定められていても、本来企業が支出すべき費用を労働者に支払ったに過ぎない。すなわち、業務必要経費を本来の費用負担すべき企業が労働者に支払ったものであり、本来的には「賃金」にはなりえないのである。

 ところが、法的には勘違いしやすいものとして、通勤手当がある。一見すると会社が負担する業務必要経費の支給として、考え違いをするかもしれない。しかし、民法上は、労働者が債務の履行として労働を提供する場合は、債権者(=使用者)の現在の住所にて行うこととなっており(民484条)、その必要な費用=通勤に要する経費は、労働者(=債務者)の自己負担で行うことになっているところである。(民法485条) それゆえ通勤にかかる経費(通勤手当)は、本来労働者の負担するところであって、前述した会社の負担である「業務必要経費」(=本来的に賃金とは考えられないもの)ではないこととなります。そのため、通勤手当も結婚手当同様、支給基準が定められていれば、労働者に労働の対価として支給されると期待が生じることになり、やはり広義の「労働の対償」となりえます。

 むしろ、このように法的にどうのこうの言うより、特に正社員については、就業規則により(場合によっては慣習により)支払い基準が定まっている場合が多く、実務的には、賃金として堂々と支払われているというのが現実でしょう。

 参考 労働法 荒木尚志著 有斐閣
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看護休暇は所定事項の申し出を行う限り、取得当日電話(口頭)でも可能とされている<通達>

2017-07-08 17:41:30 | 社会保険労務士
 「看護休暇」の通達の中から注意すべきものをピックアップしてみました!!

 子の「看護休暇」は、小学校就学前の子を養育する労働者について、「負傷・疾病にかかった子の世話」、または「疾病予防に必要な子の世話」を行うために、1年度に5労働日(子が2人いるときは10労働日)を限度に子の看護休暇を取得できる。従来、休暇の単位は1日とされていたのであるが、平成29年1月1日からは半日単位の取得(所定労働時間にの2分の1)も可能となった。(育児介護法16条の2)

 事業主は、過半数代表者との協定を締結した「勤続6か月未満の労働者」及び「1週の所定労働日数が2日以下の労働者」を除いては、労働者の看護休暇の申し出を拒むことができないとされている。(育児介護法16条の3)したがって、これ以外で事業の繁忙や経営上の困難性があっても、この申し出を拒むことはできないし、育児休業介護休業と違い、事業主に看護休暇の取得日を変更する権限は与えられていない。
 ただし、この法律の主な規定は、もともと日々雇用については対象とされていないので、日々雇用については「看護休暇の申出」の権利はない。(育児介護休業法2条1項)

 子の看護休暇については、大まかにいうと以上のとおりであるが、通達の中から注意すべきものをピックアップしてみると次のとおりである。

 1 「負傷・疾病にかかった子の世話」とは、負傷・疾病にかかった子についての身の回りの世話をいい、病院の付き添い等も含まれるが、負傷・疾病の種類及び程度に特段の制限はなく、風邪による発熱など短期間で治癒する疾病や小児ぜんそく、若年性糖尿病といった慢性疾患も対象となること

 2 「疾病予防に必要な子の世話」とは、子に予防接種又は健康診断を受けさせることをいうものであること、ここで、予防接種は、予防接種法に定める定期の予防接種以外のものも含まれるものであること

 3 看護休暇について特に注目すべき点は、申し出の方法について、「書面の提出」に限定しておらず、労働者は次の事項①~④をもれなく申し出る限り、口頭での看護休暇申し出も可能であることとされている点である。従って会社で申し出の様式を定めている場合であっても、労働者が休暇取得当日に電話にて看護取得休暇の申し出を行った場合、所定事項①~④を当電話で(口頭で)申し述べる限り、事業主はこれを拒むことはできず、申し出書の提出は事後でもさしつかえないとされていること
 ①労働者の氏名 ②子の氏名及び生年月日 ③看護休暇の取得年月日 ④負傷し疾病にかかっている事実又は疾病予防の世話を行う旨
 ここで、④については、事業主は「証明書の提出」を求めることができるとされている(則35条2項)が、医療機関の領収書、保育所の欠席の連絡帳、健康診断の市町村の通知の写しなどが考えられるが、労働者に過大な負担を求めることのないよう配慮することとされている。

 なお、なぜか育児介護16条の2の規定は「1年度」に5労働日の取得となっているため、一般的には「4月1日から始まり翌年の3月31までの間」の期間の取得日数になっており、事業主が年度の開始日を別の日からにしたい場合は、就業規則等でその別の日からスタートであることを謳わなければならないことになる。(平成21.12.28職発1228第4号等)
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労働契約法3条5項は、民法1条3項の権利濫用禁止の書き写し??

2017-07-01 17:46:32 | 社会保険労務士
 使用者の指揮命令を常に妥当かどうか審査する役割として大きな意味!!

 労働契約法第3条5項においては、労働者、使用者双方に労働契約の権利の行使に当たって、この権利濫用を禁ずる旨の規定があります。
 労働契約法3条5項
 労働者及び使用者は、労働契約に基ずく権利の行使に当たっては、それを濫用する事があってはならない。
 
 この条文は、なんのことはない、ただ単に民法の大原則である権利濫用の禁止をそのまま書き写したのかなうと思っていたのですが、労働契約法の解説を見るともっと大きな意義を有する規定であったようです。
 民法1条(基本原則)3項
 権利の濫用は、これを許さない。

 初めから説明しますと、労働契約は「労働者が使用者に使用されて労働」する契約(労契法6条)であり、そこで具体的にどのように労働を提供するかは、使用者の指揮命令に従わざるを得ない。今日の仕事、明日の仕事、・・という将来の仕事や注文先の状況に応じて仕事の内容も変わってくるものだし、労働者の労働義務の具体的な内容をすべて労働契約に規定することは不可能で、その都度の使用者の指揮命令によって仕事の内容を具体化することは必然的なものといえる。すなわち、労働契約を労働者が実行(履行)するためには、使用者の指揮命令は必ず伴うものであるといえる。<これを荒木著労働法では、他人(=使用者)決定性という問題が常に内在するといっている。>

 しかし、だからといって、必ずしも使用者の命令が妥当なものとは限らないのである。例えば同じ鉄道会社の例であるが、駅員に対して火山の降灰除去作業を命じたもの(最高裁では適法)や教育訓練と称して就業規則の書き写しを行わせたもの(懲罰的目的から違法)があり、これらは、使用者の有する「指揮命令権限」の行使の妥当性を常に吟味しなければならないのである。

 そこで労働契約法3条5項の権利濫用の禁止の規定は、労働契約関係には、使用者の一方的な決定による指揮命令を行うということが必然的になされることから、そこでは常に権利濫用の審査が要請されることを確認したものということができる。労働契約に基づく権利行使の権利濫用については、特に使用者において、民法1条3項の権利濫用の書き写しだけではない、このように労働契約特有の大きな意味を持つものである。

 参考 労働法 荒木尚志著 有斐閣
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