元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

朝ドラ「舞い上がれ」=「ちむどんどん」「楽しい」「好きなだけ」⇒どうせ「体験する」ならわくわくすることを!!

2022-10-29 09:52:00 | 第2の人生・老後・趣味と勉強
 女性で初の大西洋横断飛行に成功したパイロット・アメリア・イヤハートの伝記を読んでパイロットを決断<由良冬子>

 NHK朝ドラの「ちむどんどん」は評価は別にして、少なくとも作者の意図するところは、見ている人をテーマのように「ココロがわくわくする」ようにしたいと思って作った作品だったに違いない。今回の朝ドラ「舞いあがれ」は、「舞いあがれ」のテーマように、まさに心がワクワクする物語のようだ。その内容については、主人公は親父譲りの空にあこがれ飛行機が好きな女子・舞。引っ込み思案ですぐ熱をだすような女の子だったが、五島のおばあちゃんの下で鍛えられて、自発的な子になっていく。地元の浪花大学に入り人力飛行機のクラブに入部したが、そこには人力飛行機のパイロットを目指す2回生の由良冬子がいた。彼女は人力のべダルをこぐため激しいトレーニングと食事制限を欠かさない。

 舞は冬子にトレーニングの合間に話しかけた。冬子は小学時代から男の子に負けず野球に打ち込みピッチャー4番だったが、中学になると男子に体力負けするようになりかなり落ち込み挫折。そんな時に、女性で初の大西洋横断飛行に成功したパイロット・アメリア・イヤハートの伝記を読み、女性でもこんなことができるんだという勇気をもらったという。そして「私もパイロットになろ。ほんで誰よりもでっかい飛行機、飛ばしたろ。そない思た」 そして、人力飛行機のパイロットは「夢の第一歩や」という。

 冬子は舞に「なんでここにいるんや」と聞く。まだそんな大きな志のなかった舞は「ただ飛行機が好きなだけ」ですと答え、「周りに飛行機の話ができる友達がいなかったので、今は人力飛行機を作りながら飛行機のことを話すのが楽しい」という。
 返す冬子のことば「それでいいんと違う。」といい、例のイヤハートは「なんで飛行機に乗るのか」と尋ねられると「ただ楽しいから」と答えたというのだ。

 そんな安易な人生をと思う、また、なんのこともない人生をと思ってしまう言葉のように感じるかもしれないが、人生のおいて、好きなことや楽しいことをやることは、すごいことだと思う。人生において、そうはいかないよと感じている人が多いのではないだろうか。なんとなく、つらく悲しい人生の方が人生を送ったといえるという考え方もあるかもしれない。     
 人生で「ちむどんどん」するようなことができることは、実際はやりたくてもできないという様々な意味で、ハードルが高く障害物が多いものであるように思う。

 ちょっとスピチュアルの世界地味出てくるが、この世に生きる意味は「体験する」ことにあるという。魂の故郷に帰ると、その「体験」ができないので、何度もこの世に生まれてくるのだという。当然体験することには、楽しいことだけではなく、辛い、悲しいこともある。しかし、せっかく生まれてきたのだから、自分の力でできるのなら、できるだけその自分の人生を楽しくできる方向に向けていきたいのである。そう出来ない人生もあるだろうが、自分のできる範囲で、好きな・楽しい人生を送りたい。人生の岐路に立ってどうしようか迷ったときに、楽しいと思える人生を選ぶというのも理に合った考え方だと思う。

 余談になるが、日曜劇場の「アトムの童」<*注*>(「ジョン・ドゥ」名義の2人のゲームクリエーターが、倒産寸前だったアトムという「おもちゃメーカー」を立て直す物語)にも、私は「ちむどんどん」して、はまってしまっている。若いころは、「こわおもて」や暴力的なシーンでもよく見ていたが、だんだんエスカレートするようで、最近は辟易してそれも見なくなった。朝ドラや日曜劇場で一日の始まりや一週間の始まりに、「心が躍る」ようなストーリーで人生を楽しく過ごすのもいい。

<*注*> 日曜劇場「アトムの童子」 日曜劇場ファンの中でも、我々年寄り組は、ゲームクリエーターの物語と聞いて、自分とは遠い世界の事だとだと思い、見るのをためらった方もいると考える。しかし、真摯に自分の人生に向き合いながら、ゲームクリエイターとして頑張っていく姿は、見る者に感動や元気をもらえる。まさに「ちむどんどん」する物語である。


 






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「インフレ手当」の経済効果を国は考えて<所得税は課税!社会保険料控除はちょっと疑問?>

2022-10-22 13:41:04 | 経済・歴史
 国の財布も痛まない「せっかく企業が考え出したインフレ手当」を経済政策に生かす!!

 エネルギー価格や急激な円安を背景に、食料品や日用品の値上げが相次ぐ中、企業が従業員に「インフレ(特別)手当」を支給するところが相次いでいる。 手当の特別の名目が示すように、一回限りとしているものが多いが、一定期間に行うといった様子見的なところもあるようだ。ただ、企業収益も悪化するなかで、積立金を行ってきた大企業はまだ出せる余地のあるところはいいが、中小企業やさらには小規模事業ではそうはいかないところも多い。
 イートアンドホールディングス ・社員など約480人が対象 ・10月支給分から一律8000円を毎月の給与に上乗せ
 サイボウズ          ・海外拠点を含む1000人が対象 ・日本では最高15万円を支給
 ケンミン食品         ・在籍期間に応じて1万~5万円を7月に支給
 ノジマ            ・社員と契約社員約3000人を対象に7月から毎月1万円を支給
 大都             ・会社員29人に一律10万円を7月に支給       (共同通信社・宮日新聞報道)

 以下、論点を明確にするために、インフレ手当を一回限りのものとして、限定して論じていくこととします。

 ところで、このインフレ手当は、所得税に課税されることには間違いなさそうだが、社会保険控除の対象になるかについては、不明確であったようだ。すなわち、社会保険料の対象からは、臨時的なものは除かれておりますので、この臨時的かどうかをめぐって解釈が分かれたようです。そこで臨時的とは「支給時期の発生、原因が不明確なものであること」と厳格に考えられていますが、インフレ手当を一時金で支給する場合は、一度きりの支給であり、金額も1年間の物価高騰の影響を考慮して決めるとのことですので、きわめて臨時的なものであるように考えられます。よって、社会保険料の対象から外してもよいように思えます。 

 しかし、年金事務所の見解では、一時金を「臨時的なもの」として、社会保険料の算定基礎に含めない扱いは、「極めて狭義に解するもの」とされている関係から、インフル特別手当は一時金であったとしても、賞与扱いとなり社会保険料の算定基礎に含める必要があるとのことである。(「社労士・井口克己の労務Q&A」のオンライン記事による。)
 
 いずれにしても、このような問題は課税とか社会保険料の控除をどうするのかといった考えは一応置いといて、経済的側面から、企業がわざわざ困窮した従業員のためにお金を支給しているのだから、これら全部免除するぐらいの制度として考えて欲しいものである。企業が自分のところの従業員のために支出するのだから、政府として自分の財布はいたまないのだ。もともとの発想は企業が「インフレ手当」を考えだし、政府が国民のために一般の生活困窮者に対しての給付とかを検討すると言うことになったようだ。

 そうであれば、この際、企業の考え出したこの「インフレ手当」を手取りで、そのままの額で従業員にわたるようにしてもらいたい。社会保険控除は、約15%取られるようになっているので、これが取られるとぐんと少なくなるのだ。さらに所得税が課税されるのだ。これでは、経済効果の点からいって、多くの損失になるのだ。かっての国の支給する特別定額給付金等においては、非課税であったことから考えると、国の支出と企業が支出するものと差異が感じられてならないのだ。

 ただし、企業側は小回りが利くからで支出しようと思えば容易とはいわないが、国の制度ほどではない。一方、国の制度をいじるとなると法律の兼ね合いもあり、相当の期間が必要になることは分かる。そこをどうにかならないのか、私の「つぶやき」を少しでも聴いてもらいたいのだ。

 <追伸> 「臨時的なもの」を社会保険料の対象外とするものとして、次のような通達があります。
 
 「臨時ニ受クルモノ」とは、被保険者が常態として受ける報酬以外のもので極めて狭義に解するものとすること。例えば、①従前に賞与として、一年に一回又は二回の支給を受けていた者が給与の慣行として毎月分割支給を受けるもの、②飢餓突破資金として、二月又は三月目毎に支給を受けるもの 又は③遡及して昇給が認められ、その差額として二月又は三月目毎に支給を受けるもの等は、その支給を受ける実態が、被保険者の通常の生計に充てられる性質のものであるから本法に所謂報酬(賃金・給与等)の範囲とすること。(昭和23(1948)年7月12日の通達「改正健康保険法の施行に関する件(抄)」) 

 ・井口社労士さんが、年金事務所に問い合わせた結果が報告されている。
 年金事務所に「インフレ手当」の一時金について、社会保険の算定基礎に含めるべきか確認をすると「物価上昇のため生活費を補填する手当は一時的であっても、従業員が負担すべきものに対する補填となり報酬に含めるように」と回答を受けたとのこと。これは1回限りの支払いであっても、「被保険者の通常の生計に充てられる性質のもの」となるものは、「極めて狭義に解するものとすること」に則って、臨時に受けるもので社会保険料の算定基礎から除いてよいものにあてはまらないと判断されたものと推察されます との記事があります。(「社労士・井口克己の労務Q&A」のオンライン記事)

 しかしながら、私としては、この上記の年金事務所の回答は納得できないところです。当該通達の具体例として示す「被保険者の通常の生計に充てられる性質のもの」とは、①②③のように「給与の慣行」とか「分割」「二月又は三月目毎」とかであって、今回のサイボウズの例のような1回限りで継続的でないというようなものではないのです。そもそもサイボウズの場合は、海外に拠点を置く事業所があり物価高が相当なものとなっていることから、日本を含めて従業員を救済するために、一回限りの救済策として、特別手当を出すことになったようです。敷衍して申し上げると、突然で予期せぬ出来事(物価高騰)に際して、一回のみの手当を支給するということで、これぞ「臨時的なもの」と言わずしてどうなんだという疑問です。

 なお、会社から支給されるものであっても、病気の見舞金や災害見舞金等の「事業主が恩恵的に支給するもの」は、もともと「報酬」(賃金・給与等)には該当しないされているところで、社会保険料の対象とはならないとされています。この範囲には「インフレ手当」は含まれないと考えられるところです。






 
 
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NHKあさドラ「舞い上がれ」の「(祥子等)語録」の復活<失敗は悪いことではなか>

2022-10-16 15:55:00 | 第2の人生・老後・趣味と勉強
 「舞もばらもん凧ごたあ、どがん向かい風にも負けんとたくましく生きるとぞ」<朝ドラ「〇〇語録」の魅力・楽しみ>

  NHK朝ドラ「舞い上がれ」の主人公「舞」、大阪の東大阪市の町工場の生まれ、引っ込み思案ですぐに熱を出すような女の子。両親は環境を変えることにし、母親の岩倉めぐみは、わけありの仲であった五島列島のおばあちゃん(めぐみの母)才津祥子にあえて連絡する。親が手をかけすぎと悟った五島列島の祥子おばちゃんは、わざわざついてきた母親めぐみを追い返し、祥子おばあちゃんと舞の2人っきりの生活に。もちろん仲良しの近所の男の子一太をはじめ、五島の島の人たちの支えを得ながら成長していく。

 やっと朝ドラに「〇〇語録」が帰ってきた。舞い上がれの幼少時代の「〇〇語録」の〇〇に入るのは、おばあちゃん「祥子」である。いわゆる「祥子語録」である。朝ドラでは、人生の生きる上での支えとなるような言葉や人生訓・名言といえるようなものを登場人物のことばをかりて、訴えかけてきた。最近では、「なつぞら」の奥原なつの育った「柴田家」のおじいちゃん・泰樹、「スカーレット」では実在の主人公・川原喜美子、「おかえりモネ」では最良の伴侶「菅波幸太郎」、そして「カムカムエブリバディ」では武者言葉を話す「伴虚無蔵」さんのことばである。私は朝ドラの一つの魅力は、ここにあるような気がする。

 失敗を恐れて臆病な舞に対し、おばあちゃんの祥子は何事も自分でやらせようと試みる。舞はまた熱を出し、何をやってもうまくいかないと落ち込んでいると、祥子は叱ることなく、次のようにアドバイス。そして自分の手伝いをしてみないかと誘う。祥子の子(=舞の母親・めぐみ)とうまくいかなかった苦い経験やその後の長い経験があるからこそ、こんな良いアドバイスが可能なのかとも思う。
 
 「失敗は悪いことではない。できんことは、次、できるようになればよか。そっでな、できんなら、できるこつば探せばよかとぞ」

 祥子は手伝いをしてくれた礼をいうが、舞は失敗したことを悔やむ。しかし、祥子の次のことばで前をむくことができた。

 「ビワ取りも瓶詰めも最後はちゃんとでくっことなったやろ。失敗は悪いことじゃなか。舞は自分で手伝いばすると決めて、最後までできたやろ。すごかことぞ」

 祥子は舞が熱も出ず過ごすころを見計らって、大阪に返すことを決心。その舞と過ごす最後の夜、祥子のことば。舞が返したのは「ばんば、今までありがとう」だった。劇中に出てくる2mの巨大なばらもん凧・一太から舞一人で揚げるよう勧められ、皆の助けもあって空高く揚がったのである。(一太の凧を壊したので一度は断ったが、自分の気持ちに素直に巨大凧を揚げたいと言えた舞)

 「舞、ばらもん凧(だこ)あげたときのこと覚えとっか? 舞もばらもん凧ごたあ、どがん向かい風にも負けんとたくましく生きるとぞ」

 祥子おばちゃんの方言まじりの「人生に対する処し方の極意」(「おばあちゃんの教育論」と呼ぶべきか)が詰まっているようだ。

 あさイチでも、朝ドラ受けが復活したという。舞の今後の成長が楽しみである。

 ※「ちむどんどん」では、このような名言があまり見受けられなかったのが残念である。

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ITでない「回転すし」(かっぱ寿司の元社長逮捕)にも適用された不正競争防止法の「営業秘密」の条件とは<営業秘密管理指針>

2022-10-08 11:03:18 | 社会保険労務士
 営業秘密は「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の条件が必要<特に「秘密管理性」を創り上げることが重要> 

 かっぱ寿司の長谷川元社長が、以前勤めていた「はま寿司」の食材の原価・取引先のデータ等「営業秘密」を不正に取得したとして、不正競争防止法違反の疑いで9月30日(=22年)逮捕された。不正競争防止法の「営業秘密」の侵害行為(不正取得)とは、不正の利益を得る目的又はその損害を加える目的で、その営業秘密の使用等を行う行為であり、従来IT関係などの企業秘密に適用されていたものです。例えば、2014年東芝の半導体メモリーの研究データを元技術者が無断複製したものとした事件が挙げられるところです。それが、回転すし業界に適用されたというからおどろきです。それほどまでに、回転すし業界は、競争が激しいとも受け取れます。

 そもそも、回転すしの食材の原価・取引先のデータは、「営業秘密」にあたるのでしょうか。 いわゆるITや半導体技術等の高度な技術・情報しか営業秘密に当たらないのでしょうか。不正競争防止法の保護対象となる「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法その他の有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないもの」(同法2条6項)とされています。この営業秘密として、具体的に管理するやり方として、経済産業省が定めた「営業秘密管理指針」がありますので、これに沿って、その内容をちょっと見たいと思います。営業秘密として保護されるためには、「秘密」として管理されるという「秘密管理性」、それが客観的に「有用性」を有していること、一般的には入手できないという「非公知性」の3つの条件を満たす技術又は営業上の情報であることが必要です。

 「秘密管理性」が認められるためには、企業がその情報を秘密であると単に主観的に認識しているだけでは不十分であって、企業が秘密として管理しようとする意思が、具体的状況に応じた経済合理的な秘密管理措置によって、従業員に示され、結果として、従業員がその秘密を管理する意思を容易に認識できる必要がある。取引先に対しても同様。この秘密管理措置に関しては、一般的には、情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス制限)、情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることが認識できるようにされていること(認識可能性)の2つが管理性を判断する重要なファクターであると説明されてきていたが、これにはむしろ従業員等の「認識可能性」の方が重要ということで、必ずしも十分な「アクセス制限」がないことを根拠に秘密管理性が否定されることもないとしている。

 ただし、企業が相当高度な秘密管理を網羅的に行った場合に、法的保護が与えられると考えることは適切ではなく、営業秘密はそれを企業の内外で組織的に共有することによってその効用を発揮するものであって、リスクや対策費用の大小を踏まえて、その効率的な運用が行われることが必要であります。特に最近では中小企業が営業機密を活かして運用しているところで、これらの企業に鉄壁の秘密管理を求めることは、むしろ現実的ではありません。

 そこで、具体的に必要な秘密管理措置の内容・程度は、企業の規模、業態、従業員の職務、情報の性質その他の事情のよって、異なるものであるとしている。企業における営業秘密の管理単位(営業秘密情報を管理している独立単位)における従業員が、それを一般的に容易に認識する程度のものが必要としている。小規模事業では会社全体で管理しているかもしれないし、その商品を取り扱っている課で行っているものかもしれないが、一般的には、当該管理規定等を設けることが必要で、事業所全体で管理する場合にはすくなくとも、労働基準法にいう「就業規則」にする必要がある。(事業場の労働者のすべてに適用される定めの場合は、就業規則に定めるとある。労働基準法89条)

 「非公知性」が認められるためには、一般的には知られておらず、又は容易に知ることができないことが必要である。具体的には、当該情報が合理的な努力の範囲内で入手可能な刊行物に記載されていないとか、公開情報や一般に入手可能な商品等から容易に推測・分析されないなど、保有者の管理以外では一般的に入手できない状態である。ここで、一般に知られている情報の組み合わせによっても「専門家により多額の費用をかけ、長時間にわたって分析すことが必要である」なものは、非公知性があるとされている。(大阪地判平成15年2月27日)

 「有用性」が認められるためには、その情報が客観的に、事業活動にとって有用であることが必要である。有用性の要件は、公序良俗に反する情報(脱税・有害物質の垂れ流し等)などの正当な利益が乏しい情報を外した上で、広い意味で商業的価値が認められる情報を保護することに主眼がある。したがって、一般的には秘密管理性、非公知性を満たす情報は、有用性が認められることが通常である。また、必ずしも現に事業活動に使用・利用することを要するものではない。

 したがって、営業秘密の対象が「非公知性」(知られていない・容易に知ることができない)であって、会社の「秘密管理措置」が施されていれば、一般的には、客観的に商業的価値も認められところであり、それは「有用性」が認められるところであって「営業秘密」の条件を満たすことになります。回転すしの原価等が「営業秘密」に該当するかについては、同様に、これも「非公知性」「秘密管理措置」そして、それによって「有用性」の3つが揃う可能性は十分あることになります。田辺容疑者は「かっぱ社の水準を把握するため」と言い、警視庁ではかっぱ社の強みや弱みを把握・経営に役立てたとみているとされ、そうであれば「有用性」は認められるところであり、不正競争防止法にいう「秘密」にあたる可能性は十分あることになります。
 
 ここで営業秘密であるかどうかは、「非公知性」「有用性」についてはおのずと決まってくるところであり、問題は会社で秘密管理措置が創り上げられているかが重要となってきます。先に述べたように、結局のところ、従業員にアクセス制限、認識可能性の管理をちゃんと行うことが営業秘密として認められるかの境目になってくるということです。

 このように、不正競争防止法では、元従業員であれ、誰であろうと不正を犯せば違反罰則となるが、要件が厳格なため、あまり認められてこなかった経緯がある。しかし、労働法の世界では、労働契約を締結した労働者には、労働契約上の付随義務として、信義則に基づいて営業秘密義務を負っている。これは、不正競争防止法の営業秘密の範囲内に入らないものについても、広く及ぶのである。ただし、労働契約の終了後も、この義務があるかは解釈上争いがあり、就業規則さらには退職時に個別契約を結んで秘密保持を守らせようとしている事業所が多い。

 参考 詳解労働法 水町勇一郎著 
    厚生労働省 営業秘密管理指針  
 
 
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労基法と憲法の差別禁止事由の差異は?社労士試験の覚え方(労基法3条1項 )!

2022-10-01 14:36:58 | 社会保険労務士
 労基法の差別禁止事由「国籍」・「信条」としたのはそれなりのわけ!「社会的身分」で包括的に!

  労働基準法で代表する労働法の世界は、使用者と労働者の関係において、いわゆる「人」を取り扱う法律なので、「人権」についても、細かに規定している。その中で、平等取り扱いを論じた労基法第3条においては、次のように規定している。
 使用者は、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない。(労働基準法第3条)
 一方、憲法第14条においても、同様の規定がある。
 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。(憲法14条1項)

 憲法は、「政治的、経済的、社会的関係」において全般的に差別されないとしているが、労働基準法においては、あくまでも「労働条件」の関係においてとしているのは、労働基準法の対象とするのが労働関係なので、限定的なのは当然の事であろう。問題は、その理由である。憲法は、人種、信条、性別、社会的身分又は門地として、多くの理由を挙げているにもかかわらず、労基法は、国籍、信条、社会的身分の3つだけを上げているに過ぎない。これだけで、理由のすべてを上げたことになるのかという疑問である。

 ところで、社会保険労務士の試験を受験しようとしている方は、この憲法と労働基準法の差別禁止事由の違いについて戸惑われる方もいるかもしれない。私の場合で恐縮ですが、曲がりなりにも憲法14条は読んでいたので、労働基準法3条を見たとき、ああ、憲法のあの条項かと思ったほどであるが、よく見ると語句が違っていたのに気が付いたのである。この点については、次のように、労働基準法は覚え直せばいいのではないかと思う。

 労働基準法は、戦後、昭和22年(1947年)の成立である。まず、人種でなく「国籍」を差別禁止事由として掲げた背景には、戦時中に行われた中国・台湾・朝鮮人労働者に対する差別的取り扱いの反省があったという。また、1919年のヴェルサイユ条約やILO第19号条約など、当時は、各国に居住す外国人労働者への均等待遇の確保が国際的にも課題になっていたという。(詳解労働法) 
 また、2番目に掲げた「信条」というのは、思想、信念など人の内心におけるものの考え方をいい、宗教的な信仰のみならず政治的な信念も含まれるというのが一般的な見解である。これまた、戦後間もないころにおいては、政治的には、極左的な思想から極右的なもの様々な思想の対立があった時代でもあり、公平な労働基準法の世界においては、あえて差別的な理由とは認められないとしたのは、当然の事かもしれない。そして、また裁判でさまざまに争われ、中には典型的な裁判例もあるところです。
 3番目に差別禁止とした「社会的身分」においては、「生来的な地位を指す」とされ、一般的にいう「生まれながらの」身分であって、出身地、門地(家系・血統などの家柄のこと)、人種、非嫡出子などさまざまなものを指すとされる。ここで、憲法14条でいっている「人種」「門地」はこの社会的身分の中に含まれており、憲法の方が禁止事由が多いというのは当たらないことになる。生来的な地位である「人種」「門地」は、すべてこの社会的身分の中に含まれるのである。すなわち、1番目に「国籍」を取り上げ、2番目に政治的な対立の点等からの「信条」を謳い、3番目に包括的に、生来的な地位である「社会的身分」で理由の全部を言い切ったということができるのです。

 ただ、一つだけ言い忘れたことがあります。憲法と労働基準法の差別禁止事由で、違っているのが「性別」です。今までの説明したとおり、労働基準法3条では、明確に「性別」の禁止事由が挙げられていません。これには、労働基準法自体に時間外労働、深夜労働等に関する女性保護規定があることを考え、意図的に「性別」を除いたものであるとされています。一方、賃金については、女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをしてはならない(労基法4条)としているほか、男女雇用機会均等法や女性活躍推進法等において、不利益な取り扱いにならないように、また、女性が活躍できるように、個別に、適正な規制を行っているところです。

 最後に、憲法で差別禁止をしたにも関わらず、労働基準法でさらに禁止したのには、わけがあります。労働基準法3条違反には、まず罰則の適用があります(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)。民事上も、違反した場合には不法行為(民法709条)があり、それが配置転換、懲戒処分、解雇などの法律行為であった場合には、無効となるものであります。(労基法13条) 労働基準法で禁止したのには、以上のように、具体的な法律効果が期待されているからです。

 参考 詳解労働法第2版 水町勇一郎 東京大学出版会

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