就業規則中に営業手当を時間外手当の何時間に当たるのかを示さなければなりません。
営業手当は、セールスなど外回りの営業担当者を対し、支払われる手当のことですが、問題となるのは、時間外労働の割増賃金が含まれていると会社の社長さんが、主張する場合です。時間外手当が営業手当の中に含まれているとする場合は、どこかにその根拠が求められます。慣行によっているといってもそれでは弱いでしょう。やはり、就業規則にその旨の規定を明確にさだめておかなければなりません。労働監督署の調査に対しても、明確に定めておかなければ説明はできません。
第○条 外勤営業職に対して営業手当として月額○○○○円を支給する。当該外勤営業職が時間外勤務を行った場合は、営業手当には時間外労働手当○時間分を含むものとする。実際の時間外労働手当額が○時間分を超えたときはその差額を支払う。(第○条の内容は、「就業規則モデル条文」中山慈夫著から)
就業規則に、営業手当の中に、時間外手当の何時間分が含まれていることと、それを時間外労働がオーバーした場合は、差額支給をすることを示さなければなりません。差額支給については、規定はしなくても、当然労働基準法の解釈から差額支給を行うことになりますが、労働者も見ている就業規則には、差額支給をちゃんと規定して、それによって総務の方で毎月実績と照らし合しチェックするのがベターでしょう。少なくとも、時間外手当が何時間分含まれているかを示さなければ、時間外手当を支払っているとは言えないというのが、既に判例等によって確立された見解になっていますので、自分の会社の就業規則を見ておきましょう。
ところで、それが規定されてもないのに、監督署や裁判で、最後まで社長さんが営業手当に含まれていると主張した場合はどうなるでしょう。割増賃金の計算基礎となる賃金から除外する賃金の範囲は、労基法によって明確に示されています。「家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、一か月を超えある期間ごとに支払われる賃金」の7つだけなのです。このなかには、営業手当は含まれてはいません。したがって、社長さんが主張する時間外手当である営業手当までもが、割増賃金の計算基礎に含まれてしまいますので、割増賃金の額が営業手当の分だけさらに多くなるリスクを抱えることになります。
本当に残業代だと思って営業手当を出していたとしても、就業規則の中にそのことを規定しなければ、調査等があった場合には、単に割増賃金の額を増やすことにしか役に立たないことになります。