元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

営業手当の時間外手当の主張は、就業規則にその旨の記載がなければ、割増賃金の単価を増加させるだけ

2011-09-30 02:34:56 | 社会保険労務士
 

就業規則中に営業手当を時間外手当の何時間に当たるのかを示さなければなりません。

営業手当は、セールスなど外回りの営業担当者を対し、支払われる手当のことですが、問題となるのは、時間外労働の割増賃金が含まれていると会社の社長さんが、主張する場合です。

 
 時間外手当が営業手当の中に含まれているとする場合は、どこかにその根拠が求められます。慣行によっているといってもそれでは弱いでしょう。やはり、就業規則にその旨の規定を明確にさだめておかなければなりません。労働監督署の調査に対しても、明確に定めておかなければ説明はできません。

 
 第○条 外勤営業職に対して営業手当として月額○○○○円を支給する。当該外勤営業職が時間外勤務を行った場合は、営業手当には時間外労働手当○時間分を含むものとする。実際の時間外労働手当額が○時間分を超えたときはその差額を支払う。(第○条の内容は、「就業規則モデル条文」中山慈夫著から) 

 就業規則に、営業手当の中に、時間外手当の何時間分が含まれていることと、それを時間外労働がオーバーした場合は、差額支給をすることを示さなければなりません。差額支給については、規定はしなくても、当然労働基準法の解釈から差額支給を行うことになりますが、労働者も見ている就業規則には、差額支給をちゃんと規定して、それによって総務の方で毎月実績と照らし合しチェックするのがベターでしょう。少なくとも、時間外手当が何時間分含まれているかを示さなければ、時間外手当を支払っているとは言えないというのが、既に判例等によって確立された見解になっていますので、自分の会社の就業規則を見ておきましょう。

 
 ところで、それが規定されてもないのに、監督署や裁判で、最後まで社長さんが営業手当に含まれていると主張した場合はどうなるでしょう。割増賃金の計算基礎となる賃金から除外する賃金の範囲は、労基法によって明確に示されています。「家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、一か月を超えある期間ごとに支払われる賃金」の7つだけなのです。このなかには、営業手当は含まれてはいません。したがって、社長さんが主張する時間外手当である営業手当までもが、割増賃金の計算基礎に含まれてしまいますので、割増賃金の額が営業手当の分だけさらに多くなるリスクを抱えることになります。

 
 本当に残業代だと思って営業手当を出していたとしても、就業規則の中にそのことを規定しなければ、調査等があった場合には、単に割増賃金の額を増やすことにしか役に立たないことになります。



 
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変形労働時間の期間内でのスケジュールの変更は認められるか?!

2011-09-28 05:23:15 | 社会保険労務士
 

変形期間内であっても、就業規則に非常時等のスケジュール変更事由を規定すれば、認められる。


  1か月の変形労働時間とは、1か月以内の一定の期間を平均して1週間当たり40時間以内であれば、(サービス業等特定業種によっては44時間まで認められているものにあっては44時間以内でよいことになっていますが) 特定の日が一日8時間を超え、あるいは特定の週の労働時間が1週40時間(特定業種は44時間)の法定労働時間を超えて労働することができることになっています。一定の定められた要件を満たし、労働基準監督署に届け出ることが必要です。
 
 ところで、その1月以内の変形期間中に、その定められた各人の各日の労働時間を勝手に会社の都合で、変更されては労働者としてはたまったものではありませんので、少なくても変形期間の開始前までにそのスケジュールを公表し、基本的には決まったら動かさないのが原則です。
 
 厚労省の通達では、「変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更する制度はこれに該当しない」(昭63.1.1基発1号)としていますし、もともと労基法において、変更する規定が見当たないのがその理由ともなっています。
 
 しかし、全くダメかというとそうではないと思われ、地裁の判例ですが、次のような判例があります。変更の定めをおいていないのは、「使用者の裁量による変更が許されないという趣旨にとどまるものであって」就業規則上で変更の規定を置くことを禁じたものではないと解されるとしており、「労働者の生活に不利益を及ぼさず、予測可能な程度に変更事由が就業規則に具体的に定めてあれば、」変更することも許されるというのがあります。(JR東日本事件、東京地裁H12.4.27)
 それに沿って、就業規則モデル条文(中山慈夫著)では、次のようなモデル条文を作っています。

 前項のスケジュール表で設定された勤務時間では、事故・災害又は取引先の緊急発注等により納期が切迫した場合、事前に連絡した上で変更することがある。
 
 いずれにしても、会社がかってに決定された勤務表をいじるのは、変形労働時間の趣旨から考えてこれはアウトですが、就業規則でどうしてもそれでできない非常時等のために、具体的に定めた就業規則によって変更するのは可能ということでしょうか。
 
 (参考)労働時間・休日・休暇の法律実務 安西愈著
     未払い残業代問題解決の実務   糀谷博和著
     就業規則モデル条文       中山慈夫著 

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就業規則「所定労働時間」と「法定労働時間」を区別していますか。

2011-09-26 04:53:29 | 社会保険労務士
 

労基法では法定労働時間超の場合に割増を付ける!!


経営者の方に申し上げますが、時間外労働の割増賃金を支払わなければならない場合は、あくまでも一日8時間、週40時間を超えた労働の場合ですよね。例えば、一日7時間、週35時間の会社があったとして、一日1時間、週5時間の労働時間の超過までは残業させても、労働基準法では、割増賃金を付けなくても問題ありません。
 
 しかし、この会社の決めた労働時間である、所定労働時間を超えた場合には、割増賃金を支払う就業規則になっている会社も多いと思われます。もちろん、労働基準法は、労働者の労働条件の最低限の保障をしているものであり、それ以上の割増賃金を支払えればそれに越したことはありません。しかし、このご時世で、残業代が嵩み経営を圧迫しているにもかかわらず、漫然と支払っているとしたら、それは問題ですね。
 
 逆に、中には、就業規則では、この「所定労働時間を超えている場合に、割増を支払うとしている」にかかわらず、労働基準法によって、法定の一日8時間、週40時間を超えた場合にしか割増を付けていないところもあるかもしれませんが、就業規則によらない点において、それも問題ですというより、法律違反(労働契約法/労働基準法)です。
  
 これは、会社の労働時間を就業規則で決める際に、その会社で決めた「所定労働時間」と労働基準法の定めた労働時間の「法定労働時間」をちゃんと区別することを意識せず、就業規則を定めたことに原因がありそうです。所定労働時間と法定労働時間が同じ場合は、全く問題ありませんが、その所定労働時間と法定の労働時間が同じであることを前提に作られたモデル就業規則を参考に、単に、労働時間を短縮させているだけの規定としたら、やはり意識して就業規則を見直す価値はありそうです。
 
 次のとおり、ちょっとした条文を就業規則に加えることで、割増賃金を支払わなければならない場合とそうでない場合を区別することができます。
 第○条 割増賃金は、本就業規則の規定により時間外労働を行った場合で、実労働時間が法定労働時間を超えた場合、その時間について支給する。所定労働時間を超えた時間外労働であっても、法定労働時間を超えない労働時間については、通常支給する賃金を元に算出した賃金を支給する。→以下、割増賃金の計算方法を続ける。(この○条の規定は、前回の「未払い残業代問題解決の実務」糀谷博和共著に掲載されており、これを参考としている。)
 
 もちろん、これは就業規則の不利益変更に当たりますので、労働者と同意等を図ることが前提になることは、言うまでもありませんので、念のため申し添えます。

 
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時間外命令をしなくても、「黙示の命令」として認められる場合!!

2011-09-23 04:44:20 | 社会保険労務士
 

いつも居残っている者がいるのに放置している上司のリスクとは!!


 前回、前々回とも、時間外労働が認められる場合として、時間外を行う際の「黙示の命令」があり、その黙示の命令に基づく時間外というのもあり得るとの話もしてきました。

 では、「黙示の命令」とは、どんな場合をいうのでしょうか。上司の指示のないかってな残業として、まとめたものがありましたので紹介しておきます。以下、「訴えられないための未払い残業代問題解決の実務」(糀谷博和他共著)からの全面引用です。
 
 所定時間内に仕事を完成させることができず毎日1時間残業するAさんに、会社は何度も定時で変えるように通知したが、直らないので、そのまま放置した場合はどうなるのでしょうかという問題提起をした上で、次のように同書では書いています。

 使用者の指揮命令がない労働については、労働時間にはなりませんので、上司の指示のない勝手な残業については、時間外労働としなくてよいのです。
 
 ただし、使用者の業務命令がなくても、黙示の業務命令があったとみなされた場合は、残業代の支払いを求められることになります。
 
 では、どんな場合に黙示の業務命令が認められるのでしょうか。
 
 それは、時間外労働をしなければならない業務上の必要性や緊急性がある場合です。例えば、経理社員が決算時期に残業するなと言われても、毎年決まってそのころには業務量は増えるのは明確ですから、その残業について残業支払いをまぬがれることはできません。
 
 また、残業が慢性化しているのを使用者が把握していたにもかかわらず、放任しているような場合です。容認していたともみなされて、それは労働時間であるとされる可能性があります。
 
 したがって、お昼に休憩せず仕事をしている従業員、勝手な残業をする従業員、指示をしない持帰り残業をする従業員などについて注意せずに見逃していると、使用者が容認したとして、黙示の命令があったとして、残業代を請求される可能性もゼロではありません。
 
 ということは、会社は従業員個人の勝手な判断で仕事をしないように、日頃から従業員を指導しなければならないのです。
(以上、糀谷共著P228)


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残業代請求の時効は、必ず2年か?!(現在3年に変更になりました)

2011-09-21 05:08:11 | 社会保険労務士

労働基準法では、賃金の請求権の時効は、2年ですが・・・


 ⇒現在、時効は3年になっておりますので、2年→3年と読み替えてお読みください。 

 残業代の請求は、2年で時効にかかります。これは、労働基準法の115条の規定です。「賃金の請求権は、2年間、退職手当の請求権は5年間行わない場合は、時効によって消滅する」と書いてあります。これは、民法174条の「月またはこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権」は、時効を1年間としたのに対し、その特例として考えられます。
 
 労働基準法が適用になる、一般的な労働者にあっては、労働基準法の規定により、2年間は請求できることになります。それでは、労働基準法が除外になっている者は、だれかというと、同族の親族のみを使用する事業所と家事使用人ですので、これらの方は,民法174条により時効が1年ですが、それ以外には、労働基準法により2年間さかのぼって請求できることになります。なお、退職金は5年の時効です。退職金ですから、一応5年というのは、道理に合っているような気はします。
 
 この時効の起算点はというと、毎月の給料日から(正確にはその翌日)になりますので、給料の支払いが、月給制の場合、毎月、毎月起算日があり、それに応じて、時効により月々消滅していくことになります。
 例えば、時間単価が1000円、毎日1時間の残業、月20日の労働日、3人の労働者とした場合に、2年前からさかのぼるとすると
 1000円×1.25×20日×24月×3人=180万円となります。
 言いたいのは、労働者も使用者も、暗黙の了解の上で、1時間に満たない残業は、請求していない場合があるのではないかということです。
 それが積り、積もれば、2年間では相当大きな額になります。最近では、会社を辞めてから請求する例が多くなっていますので、経営者の方には、リスク管理は、しっかりしましょうといいたかったのですが、今回は、そのテーマではありませんので・・・。
 
 今回のテーマは、残業代請求の時効は、いつも2年なのかということです。
 
 2007年9月4日の広島高裁判決の杉本商事事件というのがあります。これは、現場の営業所において、時間外実績を記載しておらず他に把握する方法もないところ、1日当たり平均3.5時間の残業と、所長が時間外を「黙示的に命令」したものとして、裁判所が認めるとともに、この会社代表者にも、出退勤記録の整備等の職務上の義務違反を認めたものである。そのことにより、民法の724条の不法行為による損害賠償として、時効が3年となり、約220万円の労働者の請求を認めたものです。
<不法行為も3年ですので、一般の時効が2年から3年となりましたので、今のところどちらをとっても同じ時効は3年となりました。>
 
 会社は労基法2年の時効を持ち出しましたが、裁判所は、「不法行為に基づく損害賠償事件であって、その成立要件、消滅時効も異なるから、その主張は失当である。」とバッサリ、切り捨てています。この判例の評価は、今後に待たれるところでしょうが、少なくとも、時間外勤務時間を把握せず泊残業代を払わないなど、故意または過失によって、時間外の支払をしない場合は、不法行為の3年の時効になる危険性は大いにあるということであります。
 
 その場合は、支払わなければならない額は、時効は2年でなく3年、単純計算で1.5倍になるということです。前の3人の毎日1時間の残業代は、180万円の1.5倍の270万円になります。結局は、最初に私が言った「リスク管理の問題」に跳ね返ってきますが・・・。





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