元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

介護休暇取得は要介護状態(2週間以上常時介護の必要)だけでなく単に介護を要する世話等であれば可能!

2017-05-27 18:02:18 | 社会保険労務士
 介護休暇は介護休業の対象である「要介護状態」に加えその他の厚生労働省令で定める世話(要介護状態は問わず単に介護を要する対象家族の介護・一定の世話)であれば取得可能

 育児介護休業法において、介護を行うための「休み」というのは、もともと規定にあった、より厳格な条件で認められる長期の休暇である「介護休業」と2009年改正により創設された、それほどの厳格な条件ではない短期の休暇である「介護休暇」があります。

 まず介護休業は、負傷・疾病または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態(以下の文では、これを「要介護状態」と呼びます。)にある配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、さらに祖父母、兄弟姉妹、孫(以下の文中において、これを一括して「対象家族」と呼びます。)の介護のために、要介護者1人につき、要介護状態に至るごとに、通算93日を限度として3回まで介護のための休業をすることができます。

 これに対して介護休暇は、次のような規定となっています。
 第16条の5 要介護状態にある対象家族の介護その他の厚生労働省令で定める世話(厚生労働省令では「①対象家族の介護、②対象家族の通院等の付き添い、対象家族が介護サービスの提供をうけるために必要なサービスの代行その他の対象家族の必要な世話」となっている。)を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、1の年度において5労働日(要介護状態にある対象家族が2人以上の場合にあっては、10労働日)を限度として、当該世話を行うための休暇(以下「介護休暇」という。)を取得することができる。

 ここで、介護休暇の対象となる介護・世話とは、介護休業の場合に必要な介護の状態である「要介護状態=2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある」はもちろん、要介護状態は問わずに、対象家族に必要な一定の世話を行う場合であればよいことになります。すなわち、対象が「要介護状態」にある場合だけでなく「その他の省令で定める世話」となっており、省令で定められているのは、ご覧のとおり①対象家族の介護、②対象家族の通院等の付き添い、対象家族が介護サービスの提供をうけるために必要なサービスの代行その他の対象家族の必要な世話となっているのです。そうなんです、介護休暇については、間違ってならないのは、「その他の省令で定める世話」のところでは「要介護状態」であるという条件がなく、単に「対象家族の介護や必要な世話」となっているのです。

 整理すると、介護休暇は、要介護状態にある対象家族の介護に加えて、その他の一定の世話(=要介護状態の状態にあるかは問わない対象家族の介護、さらに対象家族の通院等の付き添い、対象家族が介護サービスの提供をうけるために必要なサービスの代行その他の対象家族の必要な世話のこと。)を行うために年間(正確には1年度につき)5労働日(対象家族が2人以上は10日)を限度として、休暇を取得できるのです。

 そのため介護休業は要介護状態にある対象家族に対するもののため、休業開始の2週間前までに、開始予定日及び終了予定日を明らかにして事業主に申し出ることを必要とするが、この介護休暇は、要介護状態(常時介護を要する状態)になくても利用することができるので、急を要する介護の必要性に迫られての対応にも可能となる。<*注1> 平成28年度改正により、一日単位でしか認めていなかった介護休暇であるが、半日単位の取得も可能となった。

 この介護休暇は、法律で定められているところであって、事業主は就業規則に定めていないという理由では拒むことはできないのであるが<*注2>(法16の6第1項)、労使協定に基づき①雇用されて6月に満たない労働者及び②週の所定労働日数が2日以下の労働者については、申し出を拒むことができる。(同2項)
 
 <*注1>使用者は文書での申し出を要求することも可能とするが、取得後の申し出も出来るよう配慮するとしている。もちろん口頭も可能。
 <*注2>ただし厚生労働省の方針では、労働者の周知のため、制度として就業規則等に定めることを要求されているところではある。

 参考 労働法 荒木尚志著  有斐閣
    労働法 菅野和夫著  弘文堂
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労働者の一方的な労働契約の解約<=辞職>は民法の規定がそのまま適用<辞職について簡潔に整理しました>

2017-05-20 12:30:53 | 社会保険労務士
 ただし労働契約期間1年超経過から原則的には自由に辞職可能
 
 解雇とは、使用者からの一方的な労働契約の解約であり、それは労働者の生活の権利を脅かすものとなるので、①業務災害・産前産後の場合の休業期間及びその後30日間の解雇禁止(労基法19条1項) ②解雇予告期間30日(またはそれ相応の賃金の支払い)が必要(労基法20条1項)③合理的な理由を要する解雇権濫用法理(労働契約法16条)等によって、解雇の制限を加えられている。
 これに対して、真逆の概念である、労働者からの労働契約の一方的な解約である「辞職」は労基法・労働契約法等の修正がほとんど加えてはなく、一般法である民法が基本的にはそのまま適用になる。
 以下、両角他労働法に簡潔に整理されているので、これに沿って、説明したい。この説明で大前提となる重要なポイントは、民法そのものの中で分けられているように、有期労働契約(期間の定めのある労働契約)と無期労働契約(期間の定めのない労働契約の場合)に明確に区分して考えることである。

 (1)期間の定めのある労働契約の場合
 労働者も原則としては期間の定めに拘束されるので、契約期間中の辞職の場合は「やむを得ない事由」が必要である。(民法628条)
 なお、1年を超える定めがある労働契約・・(略)・・・ を締結した労働者は、民法628条の規定にかかわらず
(すなわち「やむ得ない事由」は必要なく)、その労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、自由に辞職することができる。<*注>(労規附則137条)<両角他著労働法第3版P219>
 ここで、労働契約期間については、労働契約は原則3年までとされている(労基法14条1項本文)ので、通常は上記の「1年を超える定めがある契約を締結した労働者」というのは、1年を超え3年までの契約をした労働者ということになる。その場合の契約期間が1年を超えた時点から、期間の定めのあるにもかかわらずに、自由に労働契約を解約できるということである。なお、労働契約原則3年の例外であるところの①例えば工場の建設に4年かかるような「一定の事業の完了に必要な期間」(必要な期間であり何年という制限はない)や②「高度の専門的知識等を必要とする業務に従事する労働者の労働契約期間」および③「満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約期間」の場合は5年まで(②・③の場合)の契約期間の締結が可能であるが、これらの契約期間(①②③)においては、労基附則137条は適用にならないので、契約期間が1年を経過しても、自由には解約はできない。

 (2)期間の定めのない労働契約の場合
 労働者は、2週間前に予告すれば「いつでも」自由に辞職できる(民法627条1項)。この規定は強行規定であるというのが学説上は通説である。(ただし反対説もある)。つまり、例えば就業規則で労働者の辞職の場合に30日前の予告を義務づけていたとしても、その規定に拘束力はない。また合意解約の申込みの場合とは異なり、辞職の意思表示は使用者への到達後は撤回できないと解されている。
<両角他著労働法第3版P220>

 <*注>この部分のみが、労働基準法による民法の修正部分ということになる。
 <参考・引用> 両角道代・森戸英幸・梶川敦子・水町勇一郎著 労働法 有斐閣 (引用は斜線部分)  



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有期労働契約期間は労働者適格性判断の時、無期の試用期間となるのか?<神戸広陵学園・福原学園事件>

2017-05-11 18:01:22 | 社会保険労務士
 有期労働契約の目的は特に規制されていないことから期間満了による明確な終了の合意があるときは雇止め可!!<福原学園事件>
 従来、雇用期間に定めを設けた労働契約を結んだ場合(いわゆる有期労働契約)は、その期間を設けた主旨目的が労働者を評価・判断するものであっても、使用者がその適格性がないと判断したときは、期間満了によって当然に労働契約を終了させることができるというのが一般的な考え方であった。しかし、神戸広陵学園事件 (最三小判平成2.6.5)の最高裁判例は、有期労働契約の契約の形式をとっている場合であって、新規採用に当たって職務内容が正社員と同様(本人は私立高校に1年の契約期間で雇われた「常勤講師」の位置づけ)であって、その契約期間の設定の趣旨目的が労働者の適格性を判断する(=特に問題がなければ正社員として採用する)というときは、その契約期間の定めは、「有期期間の満了により当然に終了するという明確な合意があるなどの特段の事情が認められる場合を除き」、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の試用期間と解すべきであるとした。そうであれば、期間満了による労働契約の「雇止め」は、雇止めとしては認められず、この試用期間満了の際の「本採用の拒否」は、期間の定めのない労働契約における留保解約権の行使となり、客観的に合理的な理由と社会通念上相当として是認される場合に該当するときしか契約の終了は認められないことになる。これは、結論的には、「労働者の適格性を判断するため」の有期労働契約の期間満了による終了、すなわち有期期間の雇止めはできないことになるのである。

 しかも、この適用が除外される条件の「期間の満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立しているなどの特段の事情」というのを考えるに、契約期間の定めの設定は労働者の適性評価のためという場合には、期間満了の際に適性ありと判断されれば、有期契約でなく無期契約に変えて契約を継続するということになるため、「期間満了による明確な(労働契約の)終了の合意という特段の事情」自体考えられないことになる。そのため、この条件は付いてないのと同じであり、契約期間の趣旨目的が労働者の適性を判断するという場合には、常に試用期間における無期労働契約に解釈するということになる。
 
 そこで、この最高裁判例の一般化には、批判が多い。日本の労働法制においては、有期労働契約の目的は特に規制されておらず、2012年改正でも雇用政策上の観点から慎重に検討の上、利用目的についてはあえて規制しないことにしたとされる。以前から有期労働契約が試用期間という適性判断や正職員の養成のための利用が許容されてきたところであり、さらに、就職困難者のための雇用政策として行われているトライアル雇用も試用目的での有期労働契約を利用するものである。この判例の一般化は、このような利用目的を制限していない国の有期労働契約の考え方に合わないところであり、企業が労働者の適格性を判断するために試験的に採用する可能性に大きな制約を課したものとなったとされる。*注1
 
 この判決は、使用目的の有期労働契約の期間の定めは、当然に無期契約における試用期間と解するのではなく、あくまでも「期間満了により終了する明確な合意がない」すなわち「有期契約であること自体が明確でない場合に限定して理解すべきとあろうという解釈があった。(荒木労働法、同旨菅野労働法)しかも、この判決の争いのあった事実関係には、採用面接の際、理事長から契約期間は一応1年間とするが1年間の勤務状況を見て再雇用するかを判断するという説明を受けた上で、「1年の期限付き職員契約書」に自ら署名押印をしたという背景がある。この判例の枠組みは、有期か無期がはっきりしない場合にのみ適用されるものであろう。
 この解釈の延長線上に、次の福原学園事件の最高裁(最一小平成28.12.1)の判断はあるものであり、結局、その労働契約の定めが適性評価であろうとも、当事者の認識などから無期契約ではなく有期契約であることが明らかである場合は、期間満了による労働契約に終了は認められるとしたものである。
 
 この判決は、短大講師が1年で雇止めされたという事案で、3年の期間を試用期間と捉え原審は客観的合理的理由がないとダメということで無期契約に変更を認めたが、最高裁は本件労働契約が3年の更新期間満了時に当然に無期契約とはならず労働者の勤務成績を考慮して使用者にその有期契約の更新はゆだねられるとした。
 なお、短大講師は1年で雇止めとなったが、訴訟に発展したため、使用者は2年目、3年目の更新時の改めての雇止めを行っている。この場合、3年を限度に契約更新できるとしていたものである。*注2

 *注1 菅野労働法では、適性判断目的の有期契約の雇止めは、契約更新の合理的期待がある場合の解雇権濫用法理の類推適用という法理が判例上確立されて、2012年の労働契約法の改正で条文化されたので、こちらの方で労働者の保護を図り得るのであって、当判例のような一般化は必要ないとする。
 *注2 ただ、更新期限である3年を試用期間とするのは長すぎるのでは?(長くても1年が常識的な範囲)、ここで、1年目、2年目の契約更新は何なのか?

 参考 労働法 両角道代他著        有斐閣
    労働法 菅野和夫著         弘文堂
    労働法 荒木尚志著         有斐閣 
    最新重要労働判例200 大内伸哉著 弘文堂

 
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本来インターンシップは労働法(労基法・労契法)の適用外であり「無給」ですが・・<学生インターンシップの注意>

2017-05-07 06:40:48 | 社会保険労務士
 企業によっては安い労働力としての利用⇒労働者に該当すれば少なくとも最低賃金の支払いが必要

 学生に対するインターンシップとは、「自分の専攻や将来のキャリアに関連した職業体験」のことを指しますので、あくまでも「職業体験」であるわけで、労働法上の「労働者」ではありません。従って、その報酬としての「賃金」は当然支払われません。せいぜい会社まで行く交通費等などが支払われることになるにすぎません。ただし、会社としては、将来の良質な労働者の確保のために、この機会に会社を知ってもらうなどのPRをしない手はありませんし、みやげものを持たされることにもなるかもしれません。

 一方、インターンシップを賃金を払わないでいいからと、安い労働力として利用する輩=会社もいないとは限りません。労働力として利用するなら労働法の「労働者」となる可能性も出てきますが、労働契約法や労働基準法では労働者を次のように定義しています。
 労基法 この法律で労働者とは、職業の種類をとわず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。(9条)
 労契法 この法律で労働者とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。(2条1項)
 使用されていることと賃金を支払われていることの両方を満たしていれば労働法上の労働者ということになることになりますが、この労働者であるかどうかの具体的な判断基準として「使用従属関係」ということばが、よく使われることがあります。これは指揮監督関係賃金支払いの両方を含む概念ですが、重点は指揮監督関係におかれています。この「使用従属関係」の判断要素して、①仕事の依頼、業務の指示等に対する諾否の自由の有無(諾否が自由でない場合は「労働者」の要素がある)②業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無(指揮命令が認められれば労働者の要素あり)③勤務場所・時間についての管理の有無(管理されていれば「労働者」の要素あり)などが指揮監督関係の主なものとしてありますが、これらを総合的に捉えて、労働者かどうかを判断することになります。

 ここで、「指揮監督関係」の他に、「賃金が支払われていること」が判断の一(いち)要素となることとしてとらえることになると問題でして、安い労働力として利用する会社としては、もともと労働者としてではなく(疑似ですが)インターンシップとして扱われることで、賃金を払わないことにうまみを感じているわけですから、疑似のインターンシップは労働者の定義には当てはまらないことになります。したがって、ここで賃金を支払うことを疑似インターンシップの労働者の定義とすることはできません。そこで、行政通達では次のような判断基準が示されています。(1997・9・18基発636号労働省通達)
 一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり、使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労基法9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと認められる。

 賃金を支払う面も「労働者」として定義すると、疑似インターンとしては当てはまらないため、支払うべき賃金の源泉となるものとして、生産活動に従事した結果として「利益・効果」が企業に発生しているかを問うています。もちろん、使用従属関係が認められなければならないことは、前述のとおり、必要になってきます。

 労働者に該当すれば、最低賃金以上の賃金は支払わなければなりませんし、事故が起これば労災事故として処理しなければならず、労働法上の労働者として扱わなければなりません。それだけ企業としては責任を持たなければならないのです。真摯な会社であれば行政通達の意味するところを考慮に入れて、労働力として利用するような働かせ方はしないはずですが、実際にはブラックな企業もあり、インターンシップを悪用する事例がないとは限りません。学生の方、くれぐれもご注意を!!

 参考 大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A 石田眞・浅倉むつ子・上西充子著 旬報社
    労働法 両角道代・森戸英幸・梶川敦子・水町勇一郎著 有斐閣
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