元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

朝ドラ「舞いあがれ」第98話・新たな出発=ただのぎっくり腰・労災認定は?<業務上腰痛の認定基準>過失は要件でない!

2023-02-26 16:47:43 | 社会保険労務士

  現場での「技術の引継ぎ」の重要性について

  舞の勤務する 事務所に製造部門の「土屋」が駆け込んできた。                                      <・土屋>;社長は、どこですか。                                              <・山田>;外やけど。                                                   <・土屋>;笠巻さんが腰やってもうて。動かれへんようになってん。                            <・ >;ちょっと行ってきます。                                            <・山田>;頼むわ。                                                 

 病院で笠巻さんが舞と話している場面。                                      <・笠巻>;ただのぎっくり腰や。                                         娘の佐和子さんが駆けつけて、一人暮らしをしている笠巻を心配するが・・・。

 その後、社長のめぐみから笠巻さんの退職が皆の前で発表される。笠巻本人は前から考えていたらしいが、ぎっくり腰をきっかけに、退職を決意したらしい。「引き継ぎはちゃんとしとく」からと言い、今のうちに「なんでも聞いてくれ」と言う。

 この笠巻さんがいう「ただのぎっくり腰」というのが労災の認定には、実はむずかしいのだ。ぎっくり腰というのは、「業務に起因」しなくても、起こる可能性があるからです。労災というのは、「業務の遂行上」に起きたというのは、当然としても、「業務起因性」すなわち「業務上の行為が原因として起きたもの」なのかを認定しなければなりません。もともとこの「ぎっくり腰」というのは、急に起こる腰の強い痛みに一般的言われていることばで、いわゆる医学用語ではありませんが、日常的な動作やくしゃみ程度でも起こるといわれており、「ぎっくり腰」の症状だけで、労災の認定はできません。ですから、実はどんな状況でそれが起きたかを、労災申請の際には詳しく記載しなければ、労災の認定を得ることはできないのです。だから、事務所が現場にすぐに駆けつけるような緊急案件なのですが、同僚(それとも上司格?)の山田が舞へ「頼むわ」というのは、ちょっと軽いような気がします。

 ぎっくり腰をはじめとして、「腰痛」は日常生活の中でよく起こるものであるため、業務上のものなのかを区別することが難しくなってきます。そこで、厚生労働省では「業務上腰痛の認定基準」を定めていますので、これに基づき労災申請を行えばよいと思われます。そこで認定基準を見ていきますと「災害性の原因による腰痛」と「災害性の原因によらない腰痛」に2つに分かれています。「災害性の原因による腰痛」とは、仕事中の突発的な出来事によるもので、例えば、重量物を2人で担いで運搬中に、そのうちの一人が滑って肩から荷を外したときとか、持ち上げる重量物が予想より重かったとか軽かったとか、あるいは不適当な姿勢によって持ち上げたこと、これらによって、突然に急激な強い力が腰にかかった場合などです。

 また災害性の原因によらない腰痛」とは、日々の仕事で蓄積されたものにより発症、いうならば「慢性疲労による」腰痛ともいうべきものです。この場合、基準では、筋肉等の疲労の場合は、おおよそ3か月以上の従事を基準、骨の変化による場合は、約10年以上の従事を基準として、具体的な業務としては「毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持して行う業務」等、認定基準ではいくつかの例が挙げられています。

 IWAKURAの工場では現場作業であり、この認定基準に沿って判断していくことになりますが、笠巻さんは、何十年といわず現場で働いてきたベテラン。立ち仕事や無理な姿勢での作業や時には重い荷物を持つ作業もあったものと思われますので、労働基準監督署に相談の上、申請できるということであれば、事務部門で協力して申請していくことがよいと考えられます。

 よく間違われる従業員の方もいらっしゃいますが、労災申請にあたっては、労働者側の「過失」の有無は関係ありません。例えば、会社でここは滑りやすいので気をつけてと申し合わせていたにも関わらずに、従業員がその日は何とはなしに全く注意していなくて、そこで滑ってぎっくり腰を発症したという場合でも、労災申請には全く影響はありません。民法上の損害賠償には過失等は必要ですが、この過失は労災の要件にはならず、労災の主な要件は「業務起因性」ですので、間違わないでください。

 なお、IWAKURAの例に戻りますが、職人さんの「技術の引継ぎ」は緊急の課題で重要な問題であり、なんでも聞いてくれという笠巻に対し、後任の女子工員である土屋が質問攻めにしているという話がありました。ここで出てくる「機械のくせ」などどう伝えていくか、現実として、非常に難しい問題を抱えているのです。実は、朝ドラの話の中では、ドラマの進展にはあまり関係ないので取り上げてはいなところですが、このようにサラリと工場現場の課題を挙げてはいるようですね。

   👉  詳しく知りたい方は、次の所を検索ください。

    業務上腰痛の認定基準・リーフレット⇒ 検索「業務上腰痛の認定基準 リーフレット」 

    業務上腰痛の認定基準等について・昭和51年10月16日基発第750号 ⇒検索「業務上腰痛の認定基準について」

                       

 




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日テレドラマ・リバーサルオーケストラ:続かないのもいる中で「努力する才能」<天才にない凡人が凡人たる・・・>

2023-02-19 16:32:01 | 第2の人生・老後・趣味と勉強

 天才・凡人もいるのを認めて自分の人生を与えられた能力で生きていく!!

 児玉交響楽団(通称「玉響」)団員 チェロ奏者の佐々木玲緒が突然、練習に来なくなった。団員の皆は、特に天才バイオリニスト・主人公の谷岡初音は心配するが、指揮者(マエストロ)の常葉朝陽は何か知っているらしい。ティンパニー奏者の藤谷耀司は、常葉に連れられてカラオケに行くが、そこには佐々木が一人でチェロの練習をしていた。常葉はその部屋に藤谷を無理やり押し込め、藤谷は佐々木玲緒と2人きりになる。なんとなく普段から反発していた2人である。

<・藤谷> 公演出ねえのか。べつに、いいけど。 <・佐々木> あんたに言う必要ある。              <・藤谷> まあ(ここで練習)やんなと不安になるのはわかるわ。                        <・佐々木> S響の首席だった人に分かったようなこと言われたくないんだけど。                   <・藤谷> 分かるよ。俺、凡人だからな。ティンパニーって、ほとんど一人しか出られねえからな。もう必死よ。若い人が入ってくるたびに、お前もういらねえと言われんじゃねえかって、焦って毎日練習して、若手に場所譲らない嫌がらせもした。いい加減、そんな自分が嫌になってオケ辞めた。別に、どうでもいいって顔してな。凡人のくせに、プライドだけは高かったからよ。でも、結局、また戻ってきちゃたわ。今は、ブランク埋めなきゃって、また必死よ。苦しいけど楽しい。厄介だよな。ふふっ・・。んじゃ。                                               <・佐々木>はあ、何一人で気持ちよくしゃべって帰ろうとしているの。                          

 場面は変わり、中華料理の看板が写る。飲みながら、佐々木と藤谷が話している。                                       <・藤谷> なんであそこで練習しているんだ。家、防音じゃないのか。                       <・佐々木> 楽器弾いていいのは夜9時まで。そんなんじゃ全然足りないっしょ。私も凡人だからさ。他の人の何倍も努力しないと人並みにはなれない。昔はあると思っていたんだけどあ、才能。コンクールで取材も受けちゃったりして。         『ー取材の回想ー 記者に「玲緒」の名前の由来を聞かれたことを思い出す。そして、その記者がブランクのあった後に復帰した「谷岡初音」の取材を自分の目の前でしていたが「才能がある人(谷岡初音のこと)のことは忘れませんよ」といった。』 (その記者は)私のことは覚えていなかった。私はハツネッチ(谷岡初音)にはなれなかった。だったら、凡人なりにがんばろうと思ったけど、次の曲はカルメンでチェロはベース弾くだけで見せ場もない。『指揮の常葉の言葉の回想=カルメン組曲は、それぞれにその力を優秀な首席たちがソロでその力を発揮できる曲なんです。』 ああ、またここで線引かれちゃったかな~て。でもショックを受けている自分が嫌だった。私の人生はハイスぺと結婚してのんびりとチェロを弾いて暮らすこと。そう決めたはずなのに。『ー回想場面ー 天才の異名を取る世界的指揮者で父の市長に頼まれて「玉響」の専属になった常葉朝日を、佐々木は食事に誘うが・・・常葉から「それ、いつまで続けるんですか。あなたの一番はチェロですよね。自分を偽るのは疲れませんか」といわれてしまう。』 図星し過ぎてむかついて、つい、公演は出ないと言っちゃって。ああ、今思えば大人げなかったと思う。けどさ、天才に凡人の気持ちは分からないよね。どんなに努力しても追いつけない。才能の差って残酷だよ。                                        <・藤谷>才能ならあるんじゃない。あんたにも俺にも。努力する才能。世の中、努力が続かないやつが多いんだ。それ考えたら一番好きなことのために、しゃかりき努力できんだって立派な才能だろ。オレはそれを頼りにやっていこうと思っているよ。                                                <・佐々木>あんたに説教される筋合い(ない・・・と言う前に「藤谷」が言う。)                                    <・藤谷>いいから戻って来いよ。

 筆者は、地方の割と裕福な家庭に育ったので、家に帰ると手伝いをさせられるようなこともなく、自由に勉強時間も与えられて、それでも試験前には一夜漬に近い形で勉強して、何とかトップレベルの成績をあげられた。今の人とは違い、戦後の復興期の育ちだったので、まだまだ、おおらかな時代である。大学はどうにか地方の公立大学にいけた。そして、ここまで来ると悩みに悩んだことがある。それは、地方とはいえ、ここで「天才」に会うことになるのだ。英語のできるやつ、数学のできるやつ、スポーツ・芸術のある才能のあるやつ・・・社会性に優れたやつと言おうか・・・など。いままで、努力すればどうにかなる、達成できるもんだと思っていたのに、能力(才能)の差を思い知らされることになる。米人のクリスチャンの英語の講師に、能力の差はどうしてあるのかと尋ねたが、あまり明確な答えは返ってこなかった。

 実は、大学に入る前に、中学の頃、算数が得意な人がいて、あの人は勉強しなくてもテストでは点数が良いと聞いたことがある。その頃、本当なのかと疑った。友達の中にはその人とクラスが一緒だった人がいて「お前があの人とクラスが一緒だったら、思い知らされるよ」と言ったことがある。今思えば、そうなんだと思う。だから、大学でのこの悩みは、中学の頃、悩むべき課題だったかもしれないので、いずれにしても人生において悩まなければならない問題だったのだ。悩んだ後の結論として、藤谷がいう「努力する才能」を自分は持っているということで納得したように思う。

 しかし、また、社会に出てから思い知らされることになる。一生けん命その方面の知識を身に着けても、完全に「負けた」と思ったのは、瞬間的にその場に応じて答えが出てくる「能力」のなさである。世の中には、こういった能力に本当に長けた者がいる。うらやましい。その場その場に応じてすぐさま的確な解答を出せる能力というのは、ちょっとそっとで勉強しても出来て来ないものである。これには参った。しかし、「努力に勝る才能なし」ということで、引き下がるしかない。凡人は凡人なりに努力を続けるしかない。藤谷のことば「一番好きなことのために、しゃかりき努力できんだって立派な才能だろ。オレはそれを頼りにやっていこうと思っているよ。」

 そう思っても、天才がいるのも事実。自分に与えられている「努力する才能」というのも事実。これをそのまま認めざるを得ないのだ。この年(70代)になって、やっとどうにかこの答えに納得できるようになったようだ。他人にはその他人なりの人生があるのだ。自分の人生は、これなんだ。他人をうらやんでも仕方がない。オギャーと生まれて、人生が始まりこれまで、できる限りの自分の能力<「努力する才能」を含めて>を使って問題解決し、生きてきた人生である。他人をうらやむのでない、その人の人生なのだ。だれの人生でもない、自分の人生を自分の人生として生きていくのだ。残った人生、後、何年生きるかも分からないが、心うきうき・ワクワクする人生があることを期待して、生きていきたいと思う。                                              

 最後に、天才は天才なりに苦労も努力もしているようなのだ。演奏会が終わった後、本番前に不安になったことを帰りのバスの中、天才バイオリニスト「谷岡初音」が皆に詫びるシーンがある。                                    <・佐々木> 天才でも不安になることもあるんだね。<・藤谷> 同じ人間だからな。                   (お腹が空いた2人。夕食に佐々木が藤谷を誘い、おごるという。)                                   <・藤谷> 今日は、俺は飲まねえぞ。 <・佐々木> 夜練ね。私もそのつもり。

 この作品は、原作はなく、脚本家・清水友佳子氏のオリジナルだそうです。音楽短大卒とのこと。なるほど・・・。

 

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「舞いあがれ」求人サイトの募集は労働契約申込の誘因⇒労働契約は「指揮下労働」「賃金支払」「その合意」があれば成立(賃金額の決定は不必要)

2023-02-11 10:33:26 | 社会保険労務士

 労働契約成立と具体的な労働条件決定は別でトラブル防止のため書面確認・内容の明示義務(労働契約法・基準法)

 朝ドラ「舞い上がれ」(91回・2/10). 社長のめぐみの所へ舞が決裁文書をもってやって来た。めぐみはパソコンを覗いている。

(・舞);メール来ました?    (・めぐみ);全然来てへん。                               (・山田);何のメールですか。 (・めぐみ);求人サイトにIWAKURAの情報を載せたおってな。それを見た人から問い合わせがきてへんかなって、待ってんやけど。                                                         (・山田);そもそも工場で働きたいという人自体が少ないですからね。私も、よう要らん心配されますもん。何で工場なんかで働いているのかとか。仕事きついし、危ないのとちゃうのか。なんかそういうイメージ持たれていますね。  (・めぐみ);なんとかせな、いつまで立っても人手不足やわ。

 IWAKURAの求人サイトの募集は、あくまでも、労働契約の申し込みの「誘因」であって「勧誘的なもの」である。それを見た人(労働者になるべき者)からの「問い合わせ」があって、その人が労働契約の内容詳細を理解することになる。そこで、労働契約が成立するためには、改めて労働者の申し込み(場合によってはIWAKURAからの申し込み)があり、そしてIWAKURAの承諾(場合によっては労働者の承諾)となり、このことにより労働契約内容の合意となって、初めて労働契約の成立に至ることになるのである。だから、求人サイトに上げただけでは、労働契約締結までは、段階的には、まだまだの感がある。労働契約の成立となって、初めて、企業は働いてもらい、労働者は労働して賃金を得ることができるのである。   ※※以下、 労働契約・雇用契約どちらの表現もあるが、ここでは同じ意味と理解してもらってよい。

 さて、商品の売買においては、いくらで買うかという値段は、契約の重要な条件(=法的には「要件」)であり、これが決まっていないと一般的には売買契約は成立しないといっていいのであるが、雇用契約の場合はどうなのか。雇用契約の場合は、これは「賃金」の額に他ならないのであるが、賃金の額が決まらない限り、雇用契約は成立しないのであろうか。             

 労働契約法では、労働契約の成立要件として「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」とある(労働契約法6条)。これは、労働契約の成立は、①、労働者が使用者に使用されて労働すること(指揮監督下の労働) ②、使用者がこれに対し賃金を支払うこと(労働に対し賃金を支払うこと) ③、①②のことで労働者と使用者が合意すること(意思表示の合致)の3つが要件となるとしているのである。

 これに加え、さらに、例えば、具体的な賃金額の合意が必要になるかについては、有名な最高裁判決がある。これは「内定」が雇用契約の成立にあたるのかという争いであったが、いわゆる、この「大日本印刷事件」では、会社側が「採用内定の段階では賃金(額等)、労働時間、勤務場所等の労働条件が明らかになっていないため雇用契約が成立していない」と主張したが、裁判所側は、具体的条件が決定されていない「採用内定」での労働契約の成立を認めたのである。すなわち、①②③の要件が認められれば、当事者間に労働契約が成立しているとされたのである。

 また、荒木・菅野・山川氏の「詳説労働契約法」では、次のように述べている。『労働契約法(6条)は、労働契約の成立に関するこのような多様な現実(すでに契約内容が具体的に詳細に決定しているものやそうでないものもある。)の中で、労働契約の共通の成立要件としては、・・抽象的な労働提供と賃金支払いの合意で足り、従事すべき労働の具体的内容や労働時間等の詳細まで合意されることは必要がなく、同様に賃金の額、決定方法、支払い時期が具体的に合意される必要もない、としたものと解される。』 要するに、使用者が労働の内容、賃金支払いの具体的内容を明示していなくとも、たとえ、これらを後から決定したとしても、労働契約そのものは成立するとの立場をとったものである。また、関連する規則や規程、労使慣行、従前の労働条件等に照らし、その雇用契約を解釈することによって、補充的に決められる場合も多いからでもあると考えられる。        

    ただし、これはどこで契約が成立しているかの判断であって、具体的な労働の内容、賃金額等について、決定されていないことでよいということではなく、その後の継続的な労働関係にある労働者と使用者にあっては、むしろこの契約は事細かに決定されることが必要です。これらが決定されていないことは、後々の労働トラブルの原因となります。そのため、労働契約法では、労働者の理解を深めるため、できるだけ契約内容を書面で確認されるべき旨を規定し、また、労働基準法では、使用者に対して、契約の内容について書面による明示義務を課しているのである。 

 なお、労働契約は諾成契約であり、口頭でも成立するというのは法律的な考え方であるが、上記の通り、労働契約法・労働基準法では、「書面」確認・明示を規定しているのである。

 (参考) 詳解労働法第2版 水町勇一郎著 p457~459  

     労働法      菅野和夫著  p153~154                                                                                               

 

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朝ドラ「舞いあがれ」78話・大きな夢に向かって=複数の会社の得意な技術を組合せて高度な製品を<協同組合法・組織化法>

2023-02-06 15:02:35 | 社会保険労務士

 中小企業組織化法・中小企業協同組合法は成熟した法律であるが協同化等には困難な課題があってそれを指導する中小企業団体中央会が各県にある!!

 舞は「航空機産業参入支援センター」の説明会を参加することを社長のめぐみに提案する。亡き父が抱いていた「最高の夢」であったことを熱心に伝えたところ、めぐみは説明会に参加することに同意した。
 説明会の後半、航空機に参入するには専門的に対応しなければならず規模の小さな工場ではむつかしいのでは?また、資金の援助はしてもらえるのか?との発言があり、参入支援センターとしては、それに対する答えは用意していないということになったが・・・。

小山田(MC);そのハードルを乗り越えるには、どうすればいいのでしょうか。
;  株式会社イワクラの岩倉舞と申します。
    東大阪から来ました。亡くなった父の夢が弊社のねじを航空機に搭載することでした。
    私も、同じ夢を目標に掲げております。
    中小企業が航空機に参入する一つの方法として、私は複数の会社が協力すればよいのではないかと考えます。
    東大阪には、様々な工場があります。それぞれの得意な技術を組み合わせれば、高度な製品を生み出すことが可能です。
    数社が集まって一つの工場を作り、そこで航空機の部品を生産するんです。
    一括受注、一貫生産に対応するため、発注元にもメリットをもたらすのではないでしょうか。
 <説明会終了後、演壇で興味深く聞いていた男性が声をかける。>
荒金 ;岩倉さんとおっしゃいましたか。菱崎重工業の荒金(部長)です。
  ;株式会社イワクラの岩倉と申します。<以上、名刺を交換する>
荒金 ;東大阪でねじをやっておられるのですね。
  ;はい
荒金 ;先ほどの岩倉さんの発言、興味深く伺いました。複数の会社が協力して部品を作る。夢があっていい。
  ;ありがとうございます。
荒金 ;本当にそんなことが可能と思われますか。
  ;はい。東大阪には独自の技術を持ったまち工場がたくさんあります。力をあわせればすばらしいものを作りあげれると思うんです。
荒金 ;力を合わせるということが難しい。それぞれにはプライドと思惑がある。それでも、力を合わせることができますか。
  ;はい 同じ思いがあるからです。自分たちで作った部品を最高の製品に使って欲しい。
荒金 ;だから、航空機部品のチャレンジに同調する企業があるはずだと。
(舞の返事「はい」に続けて)
荒金 ;そして、御社にも優れた技術がある。
(舞の「あります」に続けて)
荒金 ;うん、面白い。
 (秘書;荒金部長お時間が・・・)
荒金 ;では、失礼します。
 株式会社イワクラの社長のめぐみは、舞が手を挙げて、積極的に発言したことに驚いていたようであったのだが・・・。
 そして、舞は菱崎重工業が重工業において、トップクラスであることをめぐみに確認したが、
 めぐみは舞に、そこは亡き父がイワクラの工場を継ぐまで勤めていた会社であることを伝えた。

 舞が考えるような中小企業同士が協力して製品を作りあげるというようなものとしては、制度として、すでに法的には出来あがっている。中小企業組織化法・中小企業等協同組合法であって、組織化法は昭和32年、協同組合法は昭和24年の成立の法律であって、戦後の復興期のころにはすでに成立していた成熟した法律でもある。舞の言うように、中小企業でも得意な技術を出し合い「協力すれば」、高度の製品ができる、これを後押しする法律なのである。基本的には、「協力」の態様としては、主には「協同化」して行うのと「協業化」して行うのが分かれるところであるが、協同は自分ところの企業は現状は一応そのままで、共同生産、共同販売・共同受注等を共同で何かをしようとする場合に使われる。一方、協業化は、各自の事業を全面的に提供して共同経営にしてしまうという、それぞれの会社の事業そのものを統合してしまうというものである。舞が提案した「数社が集まって一つの工場を作る」というのは、この協同化を意識したものであろう。

 荒金部長は「各会社にはプライドと思惑があり、それでも力を合わせるということができますか」と質問した。実はこのことが、協同化・協業化の際に超えなければならないハードルとなる。作者は、この難しい課題を荒金部長を通して指摘したのだ。現実には、その課題を克服するために、各都道府県には都道府県中小企業団体中央会があり、そこに所属する指導員が頑張っているのだ。

 (その後のドラマの展開・第85回) 今回はすぐに量産体制することとなったので、朝霧工業にお願いすることになったが、負けず劣らない試作品を作りあげたイワクラに、将来航空機部品に特化する気はないかと荒金部長が尋ねた。社長のめぐみは、特化の大きなリスクを考えて、今の現状を維持したいと答えた。しかし、その後、荒金部長からは「自動車部品」(エンジンのボルト)の発注を委託され、これこそ自社の機械では作れないところもあり、地区の仲間内で協力してもらい作ろうということになったのである。 
 

  
    

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