散歩の途中でのスナップ。携帯替えてから普段の写真はiPhoneXs。 CanonEOS6D FUJI X70はサブに
散歩の途中で… お腹がすいたよ~♪
テレビの罠@香山リカ
有馬哲夫氏の「テレビの夢から覚めるまで」で紹介されている話だが、1950年代のアメリカでテレビが一般家庭に普及し始めたころ、アメリカの人々は大真面目で次のように語ったのだという。
「テレビは神様からのクリスマス・プレゼントだ。われわれは、このプレゼントを手にして娯楽のことばかりを考えるのではなく、人類の善意と地上の平和のことを、そして、それをいかに役立てるのかをも考えなければならない。テレビを通じて、いかに人びとの蒙を啓き、偏見を根絶し、理解を深めるかに心をくだかなければならない。テレビこそその未来を開いてくれるだろう」
いうまでもなく、テレビ業界は熾烈な視聴率競争が行なわれ「ヤラセ」が日常茶飯と言われている。たまたまこれを書いている直前にも『あるある…』で知られる健康情報番組で科学的データの裏付もないまま『納豆』を取上げ、スーパーの店頭から納豆が消えうせるといった事態があった。
そうしたことがあって失望しつつも、われわれ(自分も含めて)はテレビから離れることができない。
しかし、お隣の韓国ではテレビが持つ力を改めて気づかされる事件があった。「ES細胞捏造事件」である。ネットでも容易に検索できるので事件の詳細は省くが、黄禹錫という遺伝子工学の権威とされる教授の論文捏造疑惑をいち早く報道した勧告の番組に対し、「博士を葬るのは『国益』に反する」とセンセーショナルな世論の非難を浴び、番組は放映中止に追い込まれた。しかしその後韓国のインターネット新聞の記者が番組側の正当性を裏付ける証拠を発見し世論の風向きが変っていった。
この番組のプロデューサーは「386世代」でインタビューに応えこう言っている。「国益と真実は一致するのです。長期的国益は真実を常に語ることでしか守ることはできません」
人びとが見たいものではなく、あくまでも真実を語るのがメディアの役割であり、それが国や人々のためになると信じて行動するテレビマンがいるということに驚きを禁じえない。残念だがこれは日本の話ではないのだが・・・
お隣の国・韓国でそんな理想に燃えた話がある一方、日本のテレビを巡る状況はどうなのであろうか?興味深いレポートがある。
2年ほど前の郵政民営化を巡る選挙戦術の一つに「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略」というものがあった。その企画書のターゲット戦略には、「構造改革」と「IQ」の2つを座標軸とする図があり、その4つに区切られた象限に属する集団にAからDまでの分類がなされていたという。
「構造改革ポジティブ、IQハイ」に分類され「財界勝ち組み企業/大学教授/マスメディア(TV)/都市部ホワイトカラー」とされるA層と、構造改革に関しては同じポジティブと括られるものの「構造改革ポジティブ、IQロー(Low)」に区分される「小泉内閣支持基盤 主婦層&子供中心/シルバー層」=B層について「具体的なことは判らないが、小泉総理のキャラクターを支持する層」と説明されている。
このB層に対して「B層にフォーカスした、徹底したラーニングプロモーションが必要と考える」。
こうした戦略に基づき小泉・竹中等の政権主要メンバーが選挙戦を通じ「難しいことはよく判らないが、とにかくテレビをよく見ていて小泉首相に好感を持っている人たち」にターゲットを絞った戦術の結果が296議席という史上空前の自民党の圧勝をもたらした遠因に他ならない。
テレビの送り手たちは、視聴者に好まれる番組作りを追求しながら、実際には視聴率に囚われるあまり、無自覚なままに小泉流のポピュリズムの先棒を担ぐ形になってはいないだろうか?
最近、「品格」という言葉があちこちで使われているが、中段に書いたような矜持を持ち「長期的国益は真実を常に語ることでしか守ることはできません」と胸を張っていえるようなテレビマンが今の日本にいるのだろうか?
著者は精神科医という立場から現状の分析を試みているが、冒頭引用した50年代のアメリカで大真面目に語られていたような理想を現実のものとできるか否かは単に私たちの姿勢に関わっていると考えざるを得ない。
テレビの罠-コイズミ現象を読みとく 香山リカ ちくま新書 2006年3月初版
「テレビは神様からのクリスマス・プレゼントだ。われわれは、このプレゼントを手にして娯楽のことばかりを考えるのではなく、人類の善意と地上の平和のことを、そして、それをいかに役立てるのかをも考えなければならない。テレビを通じて、いかに人びとの蒙を啓き、偏見を根絶し、理解を深めるかに心をくだかなければならない。テレビこそその未来を開いてくれるだろう」
いうまでもなく、テレビ業界は熾烈な視聴率競争が行なわれ「ヤラセ」が日常茶飯と言われている。たまたまこれを書いている直前にも『あるある…』で知られる健康情報番組で科学的データの裏付もないまま『納豆』を取上げ、スーパーの店頭から納豆が消えうせるといった事態があった。
そうしたことがあって失望しつつも、われわれ(自分も含めて)はテレビから離れることができない。
しかし、お隣の韓国ではテレビが持つ力を改めて気づかされる事件があった。「ES細胞捏造事件」である。ネットでも容易に検索できるので事件の詳細は省くが、黄禹錫という遺伝子工学の権威とされる教授の論文捏造疑惑をいち早く報道した勧告の番組に対し、「博士を葬るのは『国益』に反する」とセンセーショナルな世論の非難を浴び、番組は放映中止に追い込まれた。しかしその後韓国のインターネット新聞の記者が番組側の正当性を裏付ける証拠を発見し世論の風向きが変っていった。
この番組のプロデューサーは「386世代」でインタビューに応えこう言っている。「国益と真実は一致するのです。長期的国益は真実を常に語ることでしか守ることはできません」
人びとが見たいものではなく、あくまでも真実を語るのがメディアの役割であり、それが国や人々のためになると信じて行動するテレビマンがいるということに驚きを禁じえない。残念だがこれは日本の話ではないのだが・・・
お隣の国・韓国でそんな理想に燃えた話がある一方、日本のテレビを巡る状況はどうなのであろうか?興味深いレポートがある。
2年ほど前の郵政民営化を巡る選挙戦術の一つに「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略」というものがあった。その企画書のターゲット戦略には、「構造改革」と「IQ」の2つを座標軸とする図があり、その4つに区切られた象限に属する集団にAからDまでの分類がなされていたという。
「構造改革ポジティブ、IQハイ」に分類され「財界勝ち組み企業/大学教授/マスメディア(TV)/都市部ホワイトカラー」とされるA層と、構造改革に関しては同じポジティブと括られるものの「構造改革ポジティブ、IQロー(Low)」に区分される「小泉内閣支持基盤 主婦層&子供中心/シルバー層」=B層について「具体的なことは判らないが、小泉総理のキャラクターを支持する層」と説明されている。
このB層に対して「B層にフォーカスした、徹底したラーニングプロモーションが必要と考える」。
こうした戦略に基づき小泉・竹中等の政権主要メンバーが選挙戦を通じ「難しいことはよく判らないが、とにかくテレビをよく見ていて小泉首相に好感を持っている人たち」にターゲットを絞った戦術の結果が296議席という史上空前の自民党の圧勝をもたらした遠因に他ならない。
テレビの送り手たちは、視聴者に好まれる番組作りを追求しながら、実際には視聴率に囚われるあまり、無自覚なままに小泉流のポピュリズムの先棒を担ぐ形になってはいないだろうか?
最近、「品格」という言葉があちこちで使われているが、中段に書いたような矜持を持ち「長期的国益は真実を常に語ることでしか守ることはできません」と胸を張っていえるようなテレビマンが今の日本にいるのだろうか?
著者は精神科医という立場から現状の分析を試みているが、冒頭引用した50年代のアメリカで大真面目に語られていたような理想を現実のものとできるか否かは単に私たちの姿勢に関わっていると考えざるを得ない。
テレビの罠-コイズミ現象を読みとく 香山リカ ちくま新書 2006年3月初版
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