緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

企業さんとの距離感

2018年12月24日 | 医療

このクリスマスシーズン、
家族が我が家に集い、
食事を共にしました。

20年来飾ってきたクリスマスツリーと共に、
次男が結婚し、子どもが生まれ、
さらに、この春には長男も結婚することとなり、
3人増えた食事に、
いつも以上に華やぎました。





話しは変わり・・
このところ、ずっと考えていたこと・・

医師のプロフェッショナリズムとして
企業の方々とどのように共働していくかということ。






利益を追求する企業に依頼された医師が
宣伝的な講演をする人がいます。

例えば、新薬が発売になるとき、
その薬剤に関する論文紹介や
効果効能や副作用、
ひいては、実際の臨床上の感触などを
解説することがあります。

それについて、客観性が低く、私見を中心に、
さらに、まるで企業が言いたいことを代弁するような
講演をする医療者がいます。

この薬剤はどれほどよいものか、
さあ、皆さん、これをどんどん使ってくださいと
聞こえてしまうような展開です。

そうした講演を聞いた方が
まるで洗脳されているよう・・・と
感想を漏らされたこともあります。







国立病院に勤務していた時、
企業から講演の依頼があると
申請書をだし、総長の許可印を貰った上で、
依頼を引き受けていました。

この時、なぜ、それを引き受けようと思ったか、
理由を記載するのですが、

一例として、「本講演を通して、
 国民の健康や福祉に寄与できると判断したため」
などと記載したことを思い出します。

利益を追及する企業の薬剤等であっても、
それが、どれだけ売れるかということではなく、
適正に使用されることをめざし、
講演を聞いてくれる医療者を通して、
その先にいる患者さんやご家族、
さらにそれに関与する多くの市民の方々にこそ
恩恵があるように伝えていくことが、
有るべき姿だと思うのです。



この言葉は今も、私の根底にあります。

ありがたいことに、
多くの医療者の方から、
講演のご依頼を頂きます。

そして、何故、依頼したいと思ったか、
例えば、地域の医療機関と共に、
知見を学び共有することで、
緩和医療に対するボトムアップをしたいから・・など
事前に、お知らせしてくださいます。

ですから、引き受ける意義を
きちんと確認したうえで、
その目的を達成できるように
講演をさせて頂く努力をします。





このような目的が明確な医療者からの依頼ではなく、
企業の方から、企業主催の企画に
お声掛けを頂くことも増えてきました。

問題は、こうした場合です。

ご依頼を頂く時、
背景にあることや動機などを伺うのですが、
どうしても利益追求や企業が努力すべきところを
ふられているようなそれぞれの気配がする場合、
講演等を見聞きされる医療者が対象であり、
成果としては、処方数が増えることと
ストレートに感じることが少なからずあり、
その背後にいる患者さんやご家族はもとより、
取り巻く市民の方々のために
という視点はないことがあります。

自分の役割はどうであれば、
市民に届くのだろうかという観点で反芻し、
結果、届かないと感じたら、
お断りするべきだと
強く感じたことが最近ありました。




こうしたことは、
担当される方によって、
同じ企業さんでも随分違うものだなあと
感じます。

国立病院時代に担当されていた方は、
申請書を出して許可を貰い
講演していることはよくご存知でした。

ですから、薬剤の宣伝はしませんと明言していました。
WHO除痛ラダーの話をさせてほしいと言う私に、
それを企業さん方も望んでいますと行ってくださいました。
10年以上前のことでありますから、
緩和ケア研修会が始まる前のこととして、
なおさら、WHO除痛ラダーの総論の中の、
薬剤はその中のどこに位置するものなのかという
がん疼痛緩和全般の普及・啓発としての
姿勢がその根底にありました。

担当者の方も、その目的を
よく理解してくださっていました。

座長をお引き受けする時も、
演者の方の論文を読ませて頂き、
講演の内容がフロアの医療者の方に伝わり、
患者さんや家族、市民の方に
届くように努めてきました。

演者の方がどのような仕事をされてきたのか
まったく知らないで
座長を務めることもありませんでした。







薬剤が安全に、持っている効果が
きちんと患者さんに反映されることは
とても大切なことだと思っています。


そのことと、処方数が増えることとは別です。


これからも、市民の方々への恩恵にこだわり、
今までの姿勢は崩さないで行きたいと思っています。

付き合い辛い頑固な奴だと
思われているだろうなあと思いますが、
これも私らしさとして・・・


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