緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

高齢な男性からの質問;生存期間の延長効果がある治療と延命治療

2019年07月21日 | 医療
今年は、区と大学病院が連携する
医療に関する市民講座の
開催年に当たっています。

年6回で、昨日が初回

「がんになっても安心して過ごすために
もっと知ろう! 緩和ケア」
というタイトルで
トップバッターを務めました。

様々なところで
市民向けの緩和ケアの話を
させていただくようになり、
かなり改定を重ねてきました。

大体地域向けとなると
60代以上の女性が多いのですが、
昨日は、70代の男女の方が主体で、
平易な言葉はもとより、
短いセンテンス、
例え話を入れること、
伝えたいメッセージは繰り返し登場させること、
同じことでも、言葉を聞く、絵やイラストで見せる、考え感じる、
といった別の知覚を複数回用いる
といった、コツもつかめてきました。




昨日のメッセージは、
「早い時期から症状を伝えていくことの大切さを知ってほしい」
というもので
診断時の心のサポートのこと
医療用麻薬をはじめ、痛み治療のこと
緩和ケアの種類と特徴や
相談方法のことなどを含めました。




2010年のテメルの論文。
進行肺がん患者さんに
早期から緩和ケアを受けた患者さんは
受けなかった患者さんに比較して、
いのちが長かったことを
グラフをゆっくり読み解きながら
見ていただくこと
3回・・・・

2017年に掲載されたJAMAの論文
アプリを使って、
高齢の方には外来の前に待合の端末を使うことをサポートし、
症状を定期的に伝えた固形がん患者さんは、
通常の外来だけの患者さんに比較して
2か月化学療法が長く実施でき、
いのちは5か月長かったというグラフも
示しました。

亡くなる直前の医療ではなく、
早い時期から症状を取り除くためにも
緩和ケアを早い時期から受けてくださいと
メッセージを送ると
皆さん、うんうんとうなづいてくださいました。





会が終わって・・・
何人もの方が、
 来てよかった
 わかりやすかった
 麻薬安全ですね
 早いうちからちゃんと相談するようにします
 夜間電話相談いいですね、覚えておきます
  ・
  ・
  ・
一人の高齢の男性が歩み寄られました。

 緩和ケアって延命するんですね。
 私、最期は延命医療はいらないって思っているのですが、
 私は緩和ケアは受けられるのでしょうか・・


あ・・・

ああ・・

しまった・・・
そういう方向に・・・

緩和ケアを抗がん治療に併用して生存期間が延長したグラフを出したことで、
「生存期間の延長」は、「いのちを長くした」という表現を加えたことで
延命効果があるものは、延命治療だと理解されてしまったことを
改めて知りました。

それは、本当にそうですよね。
延命効果も、延命治療も「いのちを長くしたこと」という意味では同じでした。


「生存期間の延長効果がある治療」と
「延命を目的に寿命を超えて医療機器に依存した状態になること」の
違いをもっと意識して言葉を添えたうえで、
生存期間延長効果のグラフの説明をしなければいけなかった・・・・

要するに、
延命治療は、人工呼吸器、心臓マッサージなどですよ。
と簡単でもよいので、説明しておけば
QOLを維持治療が
抗がん治療によい影響を与えたこととは
異なると、高齢の方でもすっと理解していただけたことでしょう。

あああああ・・・・・

慣れてきた~ 
どころか
まだまだでした。

率直な質問を頂いて、本当に勉強になりました
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2 コメント

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fukkoさん (aruga)
2019-08-07 16:52:53
公開講座、来てくださったのですね。
わかりやすかったとお書きくださり、安堵するとともに、とても励まされます。

緩和ケアは延命を目指した治療ではありませんが、QOLを維持、向上させることが結果的に命を長くしたということは、体と心を大切に生活していくことが、より長く生きることにもつながっていくということなのだと思います。
素敵なことですね。生きるって。

温かなコメント、本当にありがとうございました。
返信する
Unknown (fuuko)
2019-08-06 12:05:45
初めまして。先生のお話が聞きたくて、この公開講座を申し込みました。とてもわかりやすいお話で大変参考になりました。特に、医療用麻薬の説明に使われた「快・不快」の天秤の図がわかりやすかったです。

私はこれまで、緩和ケアは治療中のQOLを高める(または維持する)ために行うものだと思っていて、延命効果のことまでは考えたことがありませんでした。結果としてそのような効果もあるのですね。
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