プロメテウスの政治経済コラム

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辺野古デモフライト  姑息なアセス逃れ 「アリバイ工作の“デマ飛行”」と怒る住民

2009-09-15 20:03:08 | 政治経済
沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設に伴い、防衛省沖縄防衛局は10日午前11時50分ごろから約2時間、建設予定地周辺海域の騒音を測定するため、CH53ヘリコプター(普天間飛行場所属)2機による「現地試験飛行(デモフライト)」を実施した。防衛局は辺野古集落など15カ所で騒音と低周波を測定、県は6カ所で測定したが、解析が必要だとして、両者とも結果を公表していない。名護市が、辺野古区内で測定した結果は80・6デシベルで、電車の中や交通量の多い幹線道路の交差点付近の騒音と同レベルだった。
住民らは「通常の半分の騒音。まやかしだ」「こんなデモフライトにだまされてはいけない」などと怒りの声を次々と上げた(「しんぶん赤旗」2009年9月11日)

 

新基地建設にむけた米軍ヘリによる「現地試験飛行(デモフライト)」は矛盾に満ちたものだ。環境影響評価(アセス)法を順守する気があれば、沖縄防衛局は環境影響評価(アセスメント)で実施すべきものであるからだ。沖縄防衛局報道室によると、デモフライトは県、名護市、宜野座村の要請に基づくもので、現在手続きが進行中の「環境影響評価(アセスメント)には位置付けない」という。「ヘリ基地反対協議会」は同日、抗議声明を発表し、今回のデモフライトを「環境アセス法とは関係ない」とする沖縄防衛局の姿勢を「準備書の不備を覆い隠そうとする腹黒い手段であり、環境アセス法を否定するもの」と厳しく批判した。安次富浩代表委員は「デモフライトは欺まん満載のアリバイ工作だ。アセスに記載しないなら、何のためにやるのか」と怒りを顕わにした(「しんぶん赤旗」同上)。

 試験飛行を「環境アセスに位置づけない」という沖縄防衛局の態度は許し難い。アセスを逃れておいて、仮に高レベルの騒音が測定されても、「基地供用段階で米軍に配慮するよう求める」などの言葉ですます積もりなのだ。どんなに騒音被害が出ても、米軍の「運用上の問題」に日本政府は口出しできないと逃げる積もりなのだ。試験飛行は、滑走路侵入経路に沿ったものだったが、ヘリは航空機と異なり、滑走路への進入は原則としてどこからもでき、自由自在だといえる。そのため、一定の条件だけでの試験飛行では、多様な結果は得られない。基地周辺で暮らす人たちは常にヘリや戦闘機の騒音に悩まされている。騒音は、季節ごとに変わる風向きや、人々が寝静まる夜間から深夜など自然、生活環境の変化でも聞こえる状況が変わる。デモフライトを2時間に限定したことをみても、はじめから客観的かつ科学的調査による環境影響評価をやる積もりがないのである。

 県や名護市の当局は、新基地建設容認派である。貧乏な県や市は、札束攻勢には勝てない。仕事のない地元の建設業者もノドから手が出るほど仕事がほしい。一度基地に依存し始めた自治体や利権に染まった者は、いつまでも基地を続けてほしいと願う。しかし、住民の手前、「近くの住民は大変だ。可能な限り、沖合に出す姿勢を堅持したい」(名護市・島袋吉和市長)などということになる。 
これまで、頑なに「沿岸案の変更はない」としてきた米軍も、総選挙での新基地推進勢力の敗北、民主連立政権による「県外移設」議論を警戒、「(50メートル程度なら)日米合意の範囲内」と県、名護市との落し所をさぐり始めている今度の試験飛行が日本政府と県、名護市の3者による新基地予定地の「微調整」と並ぶ「最終ステージの政治ショー」といわれるゆえんである

 選挙中の党首討論の中で、民主党の鳩山由紀夫代表は普天間基地移設について次のように述べた。「基本的には一番いいのは海外に移設されることが、望ましいと思っておりますが、最低でも県外移設が期待をされると思っています」「しかし、それもくどいようですが、一気にですね、政権をとった直後に交渉してすぐに解決ができるというものでもりませんし、この問題は、沖縄県、特に知事をはじめとする沖縄県民の思いというものも十分に理解をしていかなければなりません。その中で、われわれくどいようですけども包括的なレビューを行って最終的な結論というものを得てまいりたいと、基本的なスタンスを変えない中で、きちんとした信頼関係の中でレビューを行っていくというスタンスでございます」

 民主党は、札束攻勢に負けた知事と基地のない平和な沖縄を求める一般住民とを混同してはいけない。沖縄県民の声をどれだけアメリカに伝える努力をするか、海外移設・県外移設の言明はどこまで本気なのか、札束に無縁な多数の沖縄県民が民主党を注視している。


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