時間的制約もあり、文献4つ紹介して、メインディッシュは無しで。
どれも大きな研究ではなく、何かを証明するわけではないのだけど、ちょっと考えさせられるかも。
Bigatello LM, Amirfarzan H, Haghighi AK, et al.
Effects of routine monitoring of delirium in a surgical/trauma intensive care unit.
J Trauma Acute Care Surg. 2013 Mar;74(3):876-883. PMID: 23425751.
アメリカのある外科/外傷ICUに48時間以上在室した患者に対し、CAM-ICUでせん妄を評価。二つあるICUチームのうち、一つにはCAM-ICUの結果を教え、もう一つには教えなかった。283例中、35%にせん妄が発症。せん妄の発症から治療介入までの時間は二群間で差はなかったが、せん妄の治療が行われなかった頻度は情報提供された群で低かった(オッズ比0.67)。しかし、せん妄の期間、人工呼吸期間、ICU在室期間に差はなかった。
ここ数年、せん妄がブーム。せん妄の発生が予後に関連するから、が主な理由。でも、せん妄の発生が予後を悪くするということと、せん妄の予防/早期治療が予後を良くするということとは別。
CAM-ICUを使った研究はどんどん増えている印象。この疑問も数年である程度の結論に達するのでは、と期待しております。
Bellomo R, Lipcsey M, Calzavacca P, et al.; RENAL Study Investigators and The ANZICS Clinical Trials Group.
Early acid-base and blood pressure effects of continuous renal replacement therapy intensity in patients with metabolic acidosis.
Intensive Care Med. 2013 Mar;39(3):429-36. PMID: 23306586.
ご存知、RENAL trial(CVVHDFの治療強度、25 vs. 40 ml/kg/hrの比較)のsub-study。RENAL trialの症例に対し、二施設で酸塩基と血圧について詳細な情報を集めた。症例数は115例。治療強度が高い方がアシドーシスの改善が早く、その結果として循環動態の改善も早く起こるのでは、というのが仮説。しかし、pHもBEも、二群間で改善のスピードに差は無し。しかし、CVVHDF開始後の血圧およびノルアドレナリンの使用量は、40ml/kg/hrの群で有意に改善。また、アシドーシスの変化と血圧/ノルアドの変化とに相関関係は認められなかった。
つまり、治療強度が強いと、酸塩基とは関係無しに循環が改善する、という話。だから治療強度が高い方が良い、ということには当然なりません。そもそも二群間で死亡率に差はなく、high intensityは予後を改善しない、というのが結論の研究なのだから。ということは、血圧のより早い上昇が死亡率の低下にはつながらない、ということ。そうそう、あれですよ、あれ。
Wilson ME, Samirat R, Yilmaz M, et al.
Physician staffing models impact the timing of decisions to limit life support in the intensive care unit.
Chest. 2012 Sep 3. doi: 10.1378/chest.12-1173. [Epub ahead of print] PMID: 23187703.
PubMedではEpubだけど、Chestの3月号に出てます。
アメリカのあるICUで、昼だけ集中治療専門医が患者管理を行うシステムから、夜も集中治療専門医がカバーするシステムに変更した。その前後6ヶ月間で亡くなった症例の終末期医療にどんな変化があったかについて検討。症例数は前期85名、後期65名。後期の方が、ICU入室から人工呼吸を中止するまで、ICU入室からDNRとなるまでの日数が2日短くなった。また、すべて有意差は無かったが、死亡時に家族がベッドサイドにいる頻度が増え、家族とのカンファレンスを行うまでの時間、治療制限を決めるまでの時間が短くなり、患者の意思に反して挿管する頻度が減少した。
この結果の説明として、夜間に家族とコミュニケーションをとるのが専門医か研修医かで違いが出たのではないかと推測している。アメリカで流行りの研究テーマ、24/7 intensivist coverageの一つ。じゃあ、そもそも集中治療専門医がいるかどうか、家族とコミュニケーションをとるのが主治医か集中治療専門医か、ではどうなるのだろう?
Maggio M, Corsonello A, Ceda GP, et al.
Proton Pump Inhibitors and Risk of 1-Year Mortality and Rehospitalization in Older Patients Discharged From Acute Care Hospitals.
JAMA Intern Med. 2013 Mar 4:1-6. [Epub ahead of print] PMID: 23460307.
こっちは本当にEpub。
65歳以上の患者が急性期病院から退院するときにPPIを処方されたかどうかで退院後の予後に差があるかについて検討した一施設観察研究。591例、平均年齢80歳。174例にPPIが処方された。処方された群の方が、1年以内の死亡率が1.51倍高く、特に高用量群では2.59倍だった。
PPIはICUで頻繁に処方される薬剤の一つ。ICU退室後、さらには退院時にはどうなるんだろう。そのまま処方され続ける可能性は十分にあるのでは。ストレス潰瘍予防に対し、PPIがH2ブロッカーに比べて本当に有益な薬剤かはまだ未確定、そして短期的/長期的な有害性は示唆されている(肺炎、偽膜性腸炎、骨粗鬆症など)。安直に処方されすぎてないだろうか?
これにて、今週はご勘弁。
どれも大きな研究ではなく、何かを証明するわけではないのだけど、ちょっと考えさせられるかも。
Bigatello LM, Amirfarzan H, Haghighi AK, et al.
Effects of routine monitoring of delirium in a surgical/trauma intensive care unit.
J Trauma Acute Care Surg. 2013 Mar;74(3):876-883. PMID: 23425751.
アメリカのある外科/外傷ICUに48時間以上在室した患者に対し、CAM-ICUでせん妄を評価。二つあるICUチームのうち、一つにはCAM-ICUの結果を教え、もう一つには教えなかった。283例中、35%にせん妄が発症。せん妄の発症から治療介入までの時間は二群間で差はなかったが、せん妄の治療が行われなかった頻度は情報提供された群で低かった(オッズ比0.67)。しかし、せん妄の期間、人工呼吸期間、ICU在室期間に差はなかった。
ここ数年、せん妄がブーム。せん妄の発生が予後に関連するから、が主な理由。でも、せん妄の発生が予後を悪くするということと、せん妄の予防/早期治療が予後を良くするということとは別。
CAM-ICUを使った研究はどんどん増えている印象。この疑問も数年である程度の結論に達するのでは、と期待しております。
Bellomo R, Lipcsey M, Calzavacca P, et al.; RENAL Study Investigators and The ANZICS Clinical Trials Group.
Early acid-base and blood pressure effects of continuous renal replacement therapy intensity in patients with metabolic acidosis.
Intensive Care Med. 2013 Mar;39(3):429-36. PMID: 23306586.
ご存知、RENAL trial(CVVHDFの治療強度、25 vs. 40 ml/kg/hrの比較)のsub-study。RENAL trialの症例に対し、二施設で酸塩基と血圧について詳細な情報を集めた。症例数は115例。治療強度が高い方がアシドーシスの改善が早く、その結果として循環動態の改善も早く起こるのでは、というのが仮説。しかし、pHもBEも、二群間で改善のスピードに差は無し。しかし、CVVHDF開始後の血圧およびノルアドレナリンの使用量は、40ml/kg/hrの群で有意に改善。また、アシドーシスの変化と血圧/ノルアドの変化とに相関関係は認められなかった。
つまり、治療強度が強いと、酸塩基とは関係無しに循環が改善する、という話。だから治療強度が高い方が良い、ということには当然なりません。そもそも二群間で死亡率に差はなく、high intensityは予後を改善しない、というのが結論の研究なのだから。ということは、血圧のより早い上昇が死亡率の低下にはつながらない、ということ。そうそう、あれですよ、あれ。
Wilson ME, Samirat R, Yilmaz M, et al.
Physician staffing models impact the timing of decisions to limit life support in the intensive care unit.
Chest. 2012 Sep 3. doi: 10.1378/chest.12-1173. [Epub ahead of print] PMID: 23187703.
PubMedではEpubだけど、Chestの3月号に出てます。
アメリカのあるICUで、昼だけ集中治療専門医が患者管理を行うシステムから、夜も集中治療専門医がカバーするシステムに変更した。その前後6ヶ月間で亡くなった症例の終末期医療にどんな変化があったかについて検討。症例数は前期85名、後期65名。後期の方が、ICU入室から人工呼吸を中止するまで、ICU入室からDNRとなるまでの日数が2日短くなった。また、すべて有意差は無かったが、死亡時に家族がベッドサイドにいる頻度が増え、家族とのカンファレンスを行うまでの時間、治療制限を決めるまでの時間が短くなり、患者の意思に反して挿管する頻度が減少した。
この結果の説明として、夜間に家族とコミュニケーションをとるのが専門医か研修医かで違いが出たのではないかと推測している。アメリカで流行りの研究テーマ、24/7 intensivist coverageの一つ。じゃあ、そもそも集中治療専門医がいるかどうか、家族とコミュニケーションをとるのが主治医か集中治療専門医か、ではどうなるのだろう?
Maggio M, Corsonello A, Ceda GP, et al.
Proton Pump Inhibitors and Risk of 1-Year Mortality and Rehospitalization in Older Patients Discharged From Acute Care Hospitals.
JAMA Intern Med. 2013 Mar 4:1-6. [Epub ahead of print] PMID: 23460307.
こっちは本当にEpub。
65歳以上の患者が急性期病院から退院するときにPPIを処方されたかどうかで退院後の予後に差があるかについて検討した一施設観察研究。591例、平均年齢80歳。174例にPPIが処方された。処方された群の方が、1年以内の死亡率が1.51倍高く、特に高用量群では2.59倍だった。
PPIはICUで頻繁に処方される薬剤の一つ。ICU退室後、さらには退院時にはどうなるんだろう。そのまま処方され続ける可能性は十分にあるのでは。ストレス潰瘍予防に対し、PPIがH2ブロッカーに比べて本当に有益な薬剤かはまだ未確定、そして短期的/長期的な有害性は示唆されている(肺炎、偽膜性腸炎、骨粗鬆症など)。安直に処方されすぎてないだろうか?
これにて、今週はご勘弁。
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