Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

2型DMのICU患者に対するSGLT-2阻害薬

2023年06月19日 | その他
Mårtensson J, Cutuli SL, Osawa EA, et al.
Sodium glucose co-transporter-2 inhibitors in intensive care unit patients with type 2 diabetes: a pilot case control study.
Crit Care. 2023 May 16;27(1):189. PMID: 37194077.


この研究は僕が留学していたオーストラリアのICUで行われていて、Dr. Rinaldo Bellomoの指導で行われたと思われる。
確かに、アイデアも良いし、誰もやっていないし、SGLTは複数の意味でタイムリーな薬。でもそれが、1施設の後ろ向き研究で介入群のNが18しかないのに、Crit Careに掲載される理由になるだろうか。

僕も、リナルドに「こういう研究をやれ」と言われ、前向きや後ろ向きにデータを集め、解析して図表を作り、それでOKが出たら文献の草稿を書いてリナルドの修正を受ける、ということを何度もやった。勝手な想像だが、この文献のfirst authorも同様な立場ではないか。そしてそういう風にして書かれた文献は、多くの場合それなりの雑誌に掲載される。最近、1施設の後ろ向き研究のリジェクトの嵐を自分の周りでよく見ているので、もうこういう研究は載りにくい時代になったのだな、と思っていた。だから今回のはビックリした。
で、思ったこと。リナルドのネームバリューというのも否定はできないけど、「書き方の違い」というのも大きな理由じゃないだろうか。

僕も、研究ネタの提供から原稿を投稿するところまでを若者に指導するというのを、これまで数十人に対してやってきた。指導って、とにかく難しい。モチベーションの維持とか、たくさんハードルはあるのだけど、一番難しいのが英語の執筆、特にディスカッション(何度か書いた話題なので、宜しければこちらから過去ログをご覧ください)。
リナルドに原稿を渡すと真っ赤になって帰ってくる。文章のレベルが違うというか、とにかく別物になる。それと同じことに毎回挑戦するのだけど、全然上手くできない。もちろん英語力の問題もあるけど、それだけじゃない。なんか、絶対的な能力差がある。

僕がこの文献を紹介することにした理由。ディスカッションが素晴らしい。書くべきことが書くべきところに書いてある。
あまり文献を書き慣れていない方へ。方法と結果をまず読んで、自分ならどう書くかを想像してからディスカッションを読んでみてほしい。英語の表現も参考になるけど、それよりも、「何をどこにどう書くか」に注目してみて。
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