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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

コロイドかクリスタロイドか

2011年05月23日 | 循環
さて、今回はミーハーに(?)、CCMでいこうかと思います。

補液、なんて難しいんでしょう。
するべきかしないべきか、するなら何でするか?
悩まない日はないと言っていいでしょう。
そんな中、さらに悩みを増やす文献がCCMに出ています。

Renal effects of synthetic colloids and crystalloids in patients with severe sepsis: A prospective sequential comparison.
Bayer, Ole; Reinhart, Konrad; Sakr, Yasser; Kabisch, Bjoern; Kohl, Matthias; Riedemann, Niels C.; Bauer, Michael; Settmacher, Utz; Hekmat, Khosro; Hartog, Christiane S.
Critical Care Medicine. 39(6):1335-1342, June 2011.

http://journals.lww.com/ccmjournal/Abstract/2011/06000/Renal_effects_of_synthetic_colloids_and.15.aspx

この人達は、それまでスターチ(4% HES 130/0.4)を使っていたのですが、いろいろ考えた結果、ゼラチンに変更した。しかし、AKIの発生頻度を調べたら全然改善がなかったので、いっそのことコロイドを止めようということになり、ICU/ER/手術室の全てでクリスタロイドのみに変更したそうです。その結果、敗血症患者のAKIの発生頻度が70%から48%、RRTの必要度が34%から20%になった、という報告です。
クリスタロイドに変更したら、やっぱり補液の量は最初の二日間では倍になったけど、それ以降では同等で、ICU滞在期間中の合計の補液量はなんとコロイド群の方が多かったらしい。
ちなみに、死亡率は同じ、SOFAスコアの最悪値も同じ。

さて、どう考えたらいいのやら。
とりあえず、RRTの必要度が半分になったのに死亡率は同じというのはピンと来ないし、多変量解析でもHESやゼラチンの投与量はAKIの独立因子として有意ではないし、患者背景も随分違うし。
一施設の観察研究はやはり限界があるのかな、というのが感想でしょうか。

輸液の棚の前で、さて、どれにしようかといつも悩みますが、僕は大抵はヘスパンダーを使います。理由は話すと長いので、まあ個人の趣味ということで。
この文献を読んで、その選択に影響するかというと、まあ、それはないですな。

コロイド vs. クリスタロイド。
もう何十年も議論が続いているようですが、まだ当分続きますな、これは。
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