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Dr内野のおすすめ文献紹介

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伏臥位?腹臥位?

2021年08月18日 | 呼吸
Prone positionの日本語はどっちなんだろう?
僕は伏臥位が正しいと思っていたのだけど、最近は腹臥位療法という言葉を頻回に見かける。
さらに、prone positionの反対の日本語は仰臥位としていることが多い。
伏臥位なら仰臥位、腹臥位なら背臥位だろうに、なぜか腹臥位と仰臥位がメジャー。

誰でも思いつきそうな疑問なのに、ググっても答えが見つからなかった。
仕方がないので、調べたことをまとめてみる。

まずは困った時のwiki。
伏臥位はあるけど腹臥位はない。残念ながら、「腹臥位とも表記される」とだけ書いてあって、説明はない。

次は辞書。
goo辞書には、伏臥位腹臥位もある。ただし、伏臥位には「うつぶせになった姿。腹を床に着けて寝た状態。腹臥位」と書いてあるが、腹臥位には単に「伏臥位に同じ」とだけ書いてある。
伏臥には二葉亭四迷が書いた例文があるが、腹臥はそもそも辞書に掲載がない。

次に英語。
Proneは「・・する傾向がある」「・・しがち」という意味と「うつ伏せ」の意味がある。ラテン語の「前に傾いた」という意味から派生しているそうだ。前のめりな感じね、なるほど。
対語はsupine。「あおむけ」という意味以外にも「怠惰な」という意味もあるそうだ。これもなるほどだ。
Prone, supine以外にも、体位の表現にはdorsal position、abdominal positionという言い方もあるようだ。
つまり、
supine - prone(仰向き、うつ伏せ)
dorsal position - abdominal position(背側、腹側)
となる。

なんだ、日本語の歴史的にも、英語の意味的にも、prone positionは伏臥位じゃないか。
伏臥位ー仰臥位で決まりだね。
と思ったら、そうは問屋が卸さなかった。

次に見たのは医中誌(#2と#3は重複)。

伏臥位と入力すると、勝手に「腹臥位/TH」が付く。背臥位も同様で、勝手に「仰臥位/TH」が付く。
THというのはthesaurus、統制語という意味。ちなみにALはall fields。
なんとALだけに限定すると伏臥位はほとんどなくなってしまった。
でも、この4単語全てで1950年代の文献が出てくるので、僕の生まれるずっと前から混乱は存在していたようだ。

そして、救急医学会の医学用語解説集には、腹臥位呼吸療法と書いてあった。

ここまで調べたところで、僕なりの結論。
・日本語の歴史的にも英語の意味的にも、prone positionの日本語訳は本来は伏臥位が正しそう。
・でも現在は腹臥位、そしてその対語は仰臥位が主流。

こういう話をすると、「意味が通じればどうでもいいじゃん」と言われてしまう。
その通りだが、疑問に思って調べると勉強になるのも事実。
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