Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

医者の手指衛生のコンプライアンスを上げる方法

2015年08月24日 | 感染
先週の文献ではダントツトップの面白さ。

Reich JA, Goodstein ME, Callahan SE, et al.
Physician report cards and rankings yield long-lasting hand hygiene compliance exceeding 90.
Crit Care. 2015 Aug 14;19(1):292. PMID: 26271619.


ボストンの大学病院の10床のSICU。電子カルテが導入されてから病棟クラークが暇になったので、ICUベッドの入り口(多分すべて個室)を出入りする医師が手指衛生を行うかどうかを調査するようにした(WHOの五つのモーメントは無理だった)。そして毎月、各科毎の手指衛生のコンプライアンスをグラフにして、各科の部長にメールし、かつ院内のICU会議と感染会議で発表した。その結果、当初は65.1%だったコンプライアンスが9ヶ月後には91.6%まで改善した。さらに、部長への報告をやめてからも調査を続けた結果、2年経ってもコンプライアンスが90%を下回る月は一度もなかった。

考察として、医者に手指衛生をさせるには、
・ちゃんとやらなかったら公共の場で恥ずかしい思いをさせる(”an element of public shame was an important and compelling ingredient in this program’s success)。
・見られていることを意識させる(Hawthorne Effect should be seen as a key and sustainable contributor to performance improvement)。

みんなが手指衛生の重要性を理解して、その結果としてちゃんとやる、が理想だけどね。現実はそうはいかないので。

ちなみにこの文献の中に、最初の月と9ヶ月目の各科のコンプライアンスがグラフになっているのが載っている。
まず最初の月の最下位は麻酔科で、なんと10%以下。でも9ヶ月後には90%弱まで改善。
心臓外科は最初の月が45%で、9ヶ月後も45%で最下位に転落。

なんとなく理解できてしまうのは気のせいか?
あ、慈恵の話ではないですよ、もちろん。
もちろん?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする