Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

個々に合わせたICUでの死亡

2015年08月26日 | 終末期医療
本当はこれが一番のメジャー雑誌なので、いつもなら最初に紹介するのだけど。なんか凄くて、ちゃんと読むのがちょっと辛かったので後回しになった。

Cook D, Swinton M, Toledo F, et al.
Personalizing Death in the Intensive Care Unit: The 3 Wishes Project: A Mixed-Methods Study.
Ann Intern Med. 2015 Aug 18;163(4):271-9. PMID: 26167721.


カナダのMICUで、withdrawが行われることが決まった患者、計40名に対し、”三つの希望プロジェクト”を行った。具体的には、患者(可能であれば)、家族、および医療従事者に対し、患者や家族のためになることを考えてもらい、それをできるかぎり実践するというもの。そして、患者死亡の1-6ヶ月後に家族に、1~2週間後に医療従事者にインタビューを行った。
明確なアウトカムがあるのではなく、実際にこんなことをやって、感想はこうだった、という文献。

かなえた希望は、たとえば、
・記念の品を病室に飾る
・好きだったテレビ番組をつけておく
・ニックネームで呼ぶ
・部屋に花を飾る
・死亡時に家族が部屋に集う

ここまではありそうだけど、

・死亡時に病室でバグパイプの演奏をする
・患者の名誉をたたえて木を植える
・寄せ書きを作る
・病室でティーパーティーをする
・ICUのカンファレンス室で家族と晩餐をする
・ペットを病室に連れてくる
・患者が好きだったパスタソースを死亡前に味わう
・結婚式をベッドサイドで行う
・患者に関連した団体に募金を行う
・家族に葬式後の食事券を渡す

なんてこともしたんだそうだ。
そして、このプロジェクトに対する家族及び医療従事者の感想がたくさん書いてある。

しかも対象はICU在室日数が中央値で4日で、プロジェクトに参加してから死亡まで中央値で1日。長期の在室で家族とお知り合いになったときだけじゃない。

効果を評価していないので、これが良いか悪いか、という話ではない。
でも、こういうことをやっちゃうのもすごいし、一施設からの研究とは呼びにくい報告を載せちゃうアナルズもすごいなー、と思った。

ホームページあります。興味のある方はどうぞ。

コメント
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