goo blog サービス終了のお知らせ 

Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

肝不全とCRRT

2018年03月14日 | 消化器・血液
Cardoso FS, Gottfried M, Tujios S, et al.; US Acute Liver Failure Study Group.
Continuous renal replacement therapy is associated with reduced serum ammonia levels and mortality in acute liver failure.
Hepatology. 2017 Aug 31. [Epub ahead of print] PMID: 28859230.


観察研究とはいえ、急性肝不全でNが1000を超える研究というのはなかなか無いのではないか。
結果は観察研究なので定まったものではないけど、まあそうだろうという気はする。

ALFとRRTの話はパラパラ出るけど、見かけるたびに10年以上前のことを思い出す。
まだ慈恵の集中治療部ができたばかりで、他の科の医者から半分無視されていた頃のこと。若い急性肝不全の患者さんに対して、誰かがHDFをやろうと思いつき、開始後からだんだん血圧が上がり、2時間くらいで瞳孔散大。週末にこの治療が行われ、その話を週明けに聞いて、複数の意味でがっくりした。

これまた複数の意味で、もうそんなことは起こらない。
それは良いことなのだけど、性格がhalf emptyなので、楽しくない記憶としてつい思い出してしまう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

消化管出血とトラネキサム酸

2017年12月26日 | 消化器・血液
Stollings JL, Landsperger JS, Semler MW, Rice TW.
Tranexamic acid for refractory gastrointestinal bleeds: A cohort study.
J Crit Care. 2018 Feb;43:128-132. PMID: 28889070.


プロトコルを作って、止血されない消化管出血36例にトラネキサム酸を投与したら、輸血の必要量がガクッと減った。

先日、勉強会でトラネキサム酸のエビデンスレビューをした(171114)。実際にICUで出血している人に投与すると効くのか効かないのか、ということについての研究は驚くほど少ない。消化管出血についてはメタ解析があるくらいだけど、ほとんどの研究は1980年代までに行われているのだそうだ。だからこんな研究でも載るんだね。

Figure 2が綺麗。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経管栄養は胃薬の代わりになるか

2017年12月23日 | 消化器・血液
El-Kersh K, Jalil B, McClave SA, et al.
Enteral nutrition as stress ulcer prophylaxis in critically ill patients: A randomized controlled exploratory study.
J Crit Care. 2018 Feb;43:108-113. PMID: 28865339.


人工呼吸中に経管栄養を開始するときに、静注のPPIを投与するかでRCT、2施設、124例。どちらも顕性の消化管出血は1例ずつにしか起こらなかった。

ANZICS-CTGでPPIとH2Bを比較したPEPTIC studyが進行中だけど、こっちの話題も興味があるわ。そもそも不要ではないか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

肝性脳症と便移植

2017年12月03日 | 消化器・血液
Bajaj JS, Kassam Z, Fagan A, et al.
Fecal microbiota transplant from a rational stool donor improves hepatic encephalopathy: A randomized clinical trial.
Hepatology. 2017 Dec;66(6):1727-1738. PMID: 28586116.


昨日の今日で、あえて小さいRCTを紹介(N=20)。
すぐに肝性脳症を起こす肝硬変患者に、まずガッツリ広域抗菌薬を投与して、その後で便移植をすると、ほとんど肝性脳症を起こさなくなって、認知機能も良くなった。

うんちって、すごいのかも。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食べ物と健康

2017年11月12日 | 消化器・血液
これまたICUとは関係ない話。
でも興味はとってもある話。

Miller V, Mente A, Dehghan M, et al.; Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study investigators.
Fruit, vegetable, and legume intake, and cardiovascular disease and deaths in 18 countries (PURE): a prospective cohort study.
Lancet. 2017 Aug 28. [Epub ahead of print] PMID: 28864331.


Dehghan M, Mente A, Zhang X, et al.; Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study investigators.
Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study.
Lancet. 2017 Aug 28. [Epub ahead of print] PMID: 28864332.


何を食べるのが健康に良いか。
この二つの研究の結論は、
・果物と野菜と豆は健康に良いが、たくさん食べても効果が上がるわけではない。
・炭水化物の取り過ぎは不健康、油はあまり関係がない。
だそうです。
でも、それぞれのeditorialはあまり褒めていない。交絡因子がたくさんあるものね。

食べ物と健康って、もしかしたら医療の中でもっとも重要な分野かもしれないのに、分からないことが多い。
ま、何でもそうだわな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ガムを噛むと胃の蠕動運動はどうなるか

2017年11月11日 | 消化器・血液
Bouvet L, Loubradou E, Desgranges FP, et al.
Effect of gum chewing on gastric volume and emptying: a prospective randomized crossover study.
Br J Anaesth. 2017 Nov 1;119(5):928-933. PMID: 29077816.


全然ICUとは関係ないけど。
結論も、影響なし、なので面白くないけど。

こういうことでもちゃんとRCTをして確認しようとするところは偉いなと思うのと。
ボランティア20人にガム噛ませてお腹にエコーあてるだけで、BJA(麻酔科系では一番impact factorが高い雑誌)に載っちゃうなんて、アイデアだわ、と思うのと。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Baby stomach

2017年11月10日 | 消化器・血液
Thiessen SE, Derde S, Derese I, et al.
Role of Glucagon in Catabolism and Muscle Wasting of Critical Illness and Modulation by Nutrition.
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Nov 1;196(9):1131-1143. PMID: 28475354.


Baby stomachという表現はこの文献のeditorialに書いてある。

Preiser JC, Wernerman J.
Provision of Nutrients to the Acutely Ill. Introducing the "Baby Stomach" Concept.
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Nov 1;196(9):1089-1090. PMID: 28594576.


急性期にアミノ酸を投与するのは火に油をそそぐようなもので、逆に有害かも、という話。
であれば、蛋白もダメかも?

今後の臨床研究を待ちたいところですが、通常(普通の経管栄養剤、普通の経静脈栄養剤のみ)以上に蛋白やアミノ酸を投与するのは待った方がいいのでは。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

血小板とリンパ球の比

2017年10月23日 | 消化器・血液
Zheng CF, Liu WY, Zeng FF, et al.
Prognostic value of platelet-to-lymphocyte ratios among critically ill patients with acute kidney injury.
Crit Care. 2017 Sep 8;21(1):238. PMID: 28882170.


MIMIC-IIIのデータベースを用い、1万例以上のAKI患者の血小板/リンパ球比と予後の関係を調べたところ、U-shapeであった、と。

Nの暴力の典型だと思う。
血小板が少なくなる病態、多くなる病態、リンパ球が少なくなる病態、多くなる病態、いろいろあるし、どれも単独で予後と関係するはず。その比を計算したらU-shapeになったっておかしくない。それにどうしてAKI?敗血症だー、術後だー、肝不全だー、なんでもありじゃんか。

大きなデータベースを用いて、Xと予後の関係を多変量解析を用いて調べると、関係があったりなかったりする。そういう研究は、それなりの雑誌に掲載される。
でも、そこから新たな仮説が生まれる場合を除いて、医学の進歩にどう影響するのか疑問を感じる研究を見ることは少なくない。

もうやめよーよ、そういうの。。。

Nの暴力についての過去ログはこちら
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トラネキサム酸の雑学

2017年09月01日 | 消化器・血液
この研究のeditorialが面白い。

Goobie SM, Frank SM.
Tranexamic Acid: What Is Known and Unknown, and Where Do We Go From Here?
Anesthesiology. 2017 Sep;127(3):405-407. PMID: 28696996.


たった2ページなのに、トラネキサム酸についての情報が満載。相当おすすめ。
例えば、日本で123円で買える1gの静注薬、アメリカでは4000円するらしい。

そうそう、頭部外傷についてのRCTであるCRASH-3、来年早々に終わる予定だって。楽しみだね。

ちょっとPubMed調べてみてビックリ。
Tranexamic acidがタイトルにある文献をrandomized controlled trialでフィルターをかけると378出てきた。なんとその半分以上が2010年以降に行われている。特に整形と心臓外科が多い。

安いし(日本では)、副作用もほとんどないし、良い薬だ。
ア○ナと同じレベルで考えている人が未だにいそうなのは残念だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

周術期のアミノ酸投与

2017年08月29日 | 消化器・血液
Aoki Y, Aoshima Y, Atsumi K, et al.
Perioperative Amino Acid Infusion for Preventing Hypothermia and Improving Clinical Outcomes During Surgery Under General Anesthesia: A Systematic Review and Meta-analysis.
Anesth Analg. 2017 Sep;125(3):793-802. PMID: 28742771.


これは何の根拠もなしに勝手に思っていることなのだけど、
ICUに集中治療医がいるかいないかで、静注のアミノ酸製剤の使用頻度は極端に違う気がする(ただし最近はタンパクの投与量がどうこうという話があるからちょっと変化してきているのかもしれないけど)。

静注のアミノ酸製剤ってもう何年も見てないから存在自体を忘れていた。このメタ解析を見てRCTがそれなりに行われていることを知った。
周術期に使うと体温が0.5度上がってシバリングが減って、それ以外にも良いことが起こるんですって。ほお。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする