以前D君に聞いたが、書くのをやめた話。
修正された震災本では現場のことが伝わらないだろうと思い、やはり書いておくことにする。
・・・・・震災3日後に、会社の人間数人と岩沼の取引会社の様子を見に行った。
取引会社は津波の直撃で跡形もなくなっていた。
周辺道路も瓦礫で埋もれており、その会社があった場所も判別できなかった。
壊れた壁を修理するとか、泥だらけの社内を掃除するとかを想定して出かけたのだが、何もできることはなかった。
少し海方向に車を走らせてみると、消防と警察が仏さまを収集していた。
その頃はまだ至る所に仏さまが散乱していて、警察は猫の子の手も借りたい状態だった。
俺たちは2トントラックで行ったので、体育館まで運んでくれ、と頼まれた。
「いいっすよ」、俺らは答え、トラックの荷台に仏さまを乗せた。
頭は前方に、足が後方になるようにした。
縦に4体を並べて、ブルーシートで全体を覆った。
風でブルーシートが飛んだら大変なので、俺が荷台の一番後ろに乗って押さえて行くことになった。
ところが道路には瓦礫があり、アスファルトもところどころ凸凹になっていた。
段差のところに来るたびに、なんと仏さまたちが一斉に跳ね上がるのである。
しかも跳ね上がるたびに少しずつ後ろに、8本の足が、近づいて来る。
俺は足に触れないように、後ろに下がったが、そのうちどうしても触れるようになった。
「すみません、もうちょっとあっちさ・・・」、俺は手を合わせながらそれを前方に押しやった。
今でも運転中、段差を越えるとき、仏さまが跳ね上がる光景が浮かんでくる。
こういうのばフラッシュバックていうのがい? ・・・・・