一番好きな五月。
五月になると思い出す歌がある。
陽水の「五月の別れ」。
1993年3月19日、8cmCDシングルでリリースされた。
「キリンラガービール」CMソングとして使われたが、すでに廃盤である。
五月になると、と書いたが今日で五月は終わり。
満面で笑う花々、萌え上がる青草、肌に気持ちの良い微風。
今年はどれも心に届かなかった。
美しい季節は、雨の中で後ろ姿を見せている 。
五月の別れ
作詞 作曲 井上陽水
風のことばに諭されながら
別れゆく二人が五月を歩く
木々のことばは強がりだから
風の流れに逆らうばかり
鐘が鳴り花束が目の前で咲きほこり
残された青空が夢をひとつだけ
あなたに叶えてくれる
いつか遊びに行きたいなんて
微笑を浮かべて五月の別れ
月と鏡はお似合いだから
それぞれにあこがれ 夜空をながめ
星の降る暗がりでレタスの芽がめばえて
眠りから覚めながら夢をひとつだけ
あなたに叶えてくれる
果てしなく星達が訳もなく流れ去り
愛された想い出に夢をひとつだけ
あなたに残してくれる
甘美な別れの歌である。
緑の風が音と音の間を吹き抜けて行くような。
人と別れるのはたいてい三月。
三月の別れは辛いけれど、五月ならそれもいいかもしれない。
男には家庭があるんだろうか。
次の日曜日、女は別の男と式を挙げるんだろうか。
ひとつだけの夢って何?
恋人が人妻になって遊びに来たら、何を話すの?
果てしなく流れ去るのは、星なの、涙なの、思い出なの?
若い日の妄想はどこまでも広がった。
「レタスの芽」は、「氷の世界」の「りんご売り」と並んで新鮮な歌詞だった。
ラジオをつけっ放しにするのが習慣になった。
そのラジオが、仙台ももうすぐ梅雨入り、と告げている。
過去、最も早い梅雨入りは、昭和37年の6月1日だそうだ。
来年の五月、
緑は今年よりずっと深く、
空は悲しいほど青いんだろうな、きっと。