daisukeとhanakoの部屋

わが家の愛犬 daisuke(MD、13歳)とhanako(MD、6歳)の刺激的仙台生活

海辺の風景 10  ランドセル

2011年04月24日 10時34分11秒 | 地震

 

 

あのとき
これは大きい、と感じたが、すぐに終わるだろうと思った。
しかし揺れは収まるどころか上下方向から東西方向に変わり、次第に振幅を増した。


左手でとっさにパソコンを、右手で本棚を押さえた。
電気が消え、悲鳴が響く。
「地震が来たら、まず火を止めて、出口を確保する」
普段はやっているが、今度ばかりは一歩も足が出ない。
棚を押さえているというより、棚に掴まってようやく立っている。


頭の上を掛け時計が飛んで行った。
窓から見える電柱が右に左に、大きく揺れている。
耐震性は十分のはずのビルだが、壁の繋ぎ目がギシギシと音を立て、コンクリートの粉が落ちて来る。
本棚の突っ張り棒が外れ、窓が平行四辺形に歪んだ。
誰かが邪悪な意思をもって、このビルを引き倒そうとしている。
倒壊する、と思った。

震源はどこなのだろう。
子供たちは、犬たちは、どうしているか。
ガス栓は自動的に閉まるのだろうか。
生命保険の證券はどこにあったか。
書類も、写真も、ちゃんと整理しておけばよかった。
いろんな思いが通り過ぎる。


本棚と壁の物を落とすだけ落とすと、揺れは突然止まった。
職員が、ああ止まった、と言ったが、まだ揺れているように思えた。
30分も経ったようだったが、後日の新聞に「揺れは7分」とあった。

 

津波が来たのが陽のあるうちで良かった。
その日の月齢は6.6で、晴れていても暗い夜だった。
停電で、しかも夜だったら、沖に襲来する津波も見えず、逃げる方向も分からない。
闇の中からいきなり水の壁が現われる恐ろしさはどうだろう。
犠牲者は何倍に増えただろう。

映像で見た津波は、何匹もの黒い龍が暴れ、咆哮しているように見えた。
容赦ない凄まじい暴力に、神の怒りを感じ、震えた。
その怒りの理由は何だろう。
われわれが科学を弄び、力を過信し、我慾に走ったとでも言うのだろうか。
陽のある時間にしてくれたのは、せめてもの慈悲だったのか。


龍が通った海辺に立ち、凪いだ海に問う。
神の答えはいつも、永遠の沈黙である。
理由があるなら、龍は必ずまたやって来るだろう。
瓦礫の原の泥だらけのランドセルを見れば、その容赦のなさに身震いするほかはない。



 

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