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2009年5月3日茅ヶ岳での出来事

2009年05月04日 | 日記・エッセイ・コラム

P1000478  まずは次のNHK甲府放送局のニュースを読んで欲しい。

----ここから引用----

登山途中で男性死亡
甲斐市と北杜市などにまたがる茅ヶ岳に登山に出かけた50歳の男性が登山途中に倒れ、まもなく死亡しました。
警察は男性に高血圧などの持病があることから登山途中に病気で倒れたものと見て調べています。

3日の午後1時前、「茅ヶ岳の登山道に男性が倒れている」と別の登山者から消防に通報がありました。

男性は標高およそ1700メートルの茅ヶ岳の山頂まで200メートルほどの場所で倒れていたということです。

消防によりますと、発見当時、男性は意識がもうろうとした状態で、別の登山者が心臓マッサージなどを施したほか、駆けつけたヘリコプターが男性を救助をして、甲府市の病院に運びました。

しかし、発見から、およそ1時間後に病院で死亡が確認されました。

死亡したのは、宇都宮市に住む50歳の会社員の男性です。

警察の調べによりますと、男性は20歳の長男と2人で、登山に出かけましたが、倒れた時は別々に行動していたということです。

男性には高血圧などの持病があったということで、警察は、登山途中に病気で倒れたものと見て調べています。

情報ソース:NHK甲府放送局 2009年5月4日の記事より

----ここまで引用----

 ボクらは毎年ゴールデンウィークに山梨の茅ヶ岳へ登っている。今年も連続4回目の登頂を行った際の下山途中の出来事だった。ボクらは一人の男性が倒れているのを見付けてしまったのである。当時の状況から上記NHKのニュースの男性とほぼ間違いないだろう。ボクはこのことをブログに書くまいと思っていた。興味本位とか野次馬根性のように思われると、ご親族やお知り合いの方々に失礼だと思ったし、この突然の出来事に対して自分でも整理できないからだ。でも、もしこの男性のご親族が最期の状況を知りたいと思った時、それを知っているのはボクらしかいない。もしネットで検索してこの記事か引っかかったら知ることができるのではないか、という思いと、これを決して他人事と思わず、これからの警鐘にすべくこととして自分のブログに書くことを決めたのである。もしこの記事で不愉快な思いをされた場合は、コメント欄にその旨お願いします。即刻削除致します。

 ボクら夫婦と登山仲間のT氏は茅ヶ岳の山頂で昼食を終え、360度の絶景を楽しんでいた。天気は下り坂であったが、まずまずの眺望で日差しも時折射していた。じゃぁそろそろ降りようか、と深田公園口へ目指して下山を開始し、行きにも通過した深田久弥の墓標へ挨拶をして更に先を急ぐ。途中白いシャツを着た青年とすれ違った。さすが若さからかガイドブック片手に軽快に登っていくな、という印象であった。「こんにちは」とお互いに声を掛けたが、後に再開するとはこの時夢にも思わなかった。

 尾根から外れると、水場のある女岩までは急坂となる。茅ヶ岳で一番慎重になるところだ。視界の先には岩に腰掛けて休んでいる人が見えたが、特に変なことでもないので自分の足元に集中していた。そしてその休憩している方の近くまで来た時、前のめりに倒れているのに気が付いた。もう直感的にヤバイんじゃないか、とあわてて駆け寄ったのだが、いびきを掻いているではないか。これは良くない兆候と判断し、すぐさまカミさんに警察か消防へ連絡するように伝えて、その男性の元へ急行した。カミさんの携帯電話はauだが、電波の調子が悪く切れてしまったので、T氏のdocomoで掛け直してもらい、消防への一報を行いつつ、男性に声をかけると「大丈夫です」と一瞬だが普通の状況のようになっていた。あれ、連絡を早まったかな、と思うくらい普通だったのだが、すぐにまた気を失っていびきを掻きかじめる。その後もT氏には消防との連絡を行ってもらい、場所の特定や患者の状況等を伝えてもらった。急斜面なものだから変な姿勢になると落ちてしまいそうになるので、少しでも楽な姿勢と思って「大丈夫ですか?」と声を掛けながらポジションをずらしていった。時々意識を戻して「大丈夫です」を繰り返すが、どうみても大丈夫ではない。「今消防に連絡しましたからね」と励ますも、二度と返事をしてくれなくなっていた。消防からの指示で、心臓マッサージと人工呼吸を施すように言われるも、ボクらには経験がなかったのだが、たまたま通りかかった女性が実施経験があるらしく、消防からの指示を仰ぎながらボクら周囲の人達に的確に指示を出す。胸に両手を当てて30回繰り返して、人口呼吸を行う。いつの間にか周りには10人位の人が集まって、励ましたり心臓マッサージを交代したりを繰り返した。こんな1分1秒が長く感じることはない。救助ヘリが向かっているようだが、遠くに聞こえるバイクの音をヘリの音に感じたり、と気持ちは焦る。そんな時に爆音をとどろかせてヘリが近付いて来た時の頼もしさは言い難いものがある。ボクはカミさんが着ていた黄色いフリースを持って、目立つように目一杯降り続けた。無意識に急斜面を上へ上へと登ってしまったらしく、降りるのが怖いようなところまで来てしまっていた。ヘリからはレスキュー隊員が木立の中をかいくぐってロープで下降してきた。ホバリングしているヘリの真下にいるので、もの凄い風とほこりでまともに見ることができない。会話もままならぬままただひたすら吹き飛ばされないよう姿勢を低くしていた。やがてヘリは一時場所を離れ、男性の救助が続く。心臓マッサージを続けながらも隊員へ状況を説明していると、先ほど山頂直下ですれ違った白いシャツの男性が血相を変えて降りてきた。知り合いか訪ねると「お父さん」と一言・・・。そうか、親子で登山に来ていたんだ。息子さんのショックは計り知れないものがある。隊員の指示で再度ヘリが降下してきた。またしても暴風になるので、適宜安全そうな場所へ避難する。まずは倒れた父さんにハーネスを通して、隊員と一緒にヘリへ搬入された。続いて息子さんもヘリへ搬入され、あっという間に飛び去って行った。

 下山しながらボクらは自分たちの無力さを語り合った。他にやりようがあったのではないか、もっと救護関係の講習会とか受けておけばよかったのではないかetc...。男性の無事を祈りつつも状態が決して良くないことは、恐らく誰しも感じ取っていたかもしれない。てきぱきとボクらに指示を出してくれたあの女性のようにもっと知識を付けておくべきだと痛感した。

 茅ヶ岳はご存知、日本百名山の著者、深田久弥氏が急絶したところでもある。調べてみると、去年の同じ日にも男性が亡くなっていた。ちょっと気楽に感じられる山なのだが、1700mの立派な山でもある。ボクらはどんな山に登ろうとも決して自然を甘くみてはいけないのだ。自分の体調もきちんと管理しないといけないのだ。今回の出来事は本当にいろいろと思うところがあった。この出来事は決して無駄にしてはいけない。息子さんももしかしたら自責の念に駆られておられるかもしれない。それを思うと本当に心が痛む。心よりご冥福をお祈り致します。

 茅ヶ岳は南アルプス、八ヶ岳、奥秩父、富士山など360度の眺望が楽しめる素晴らしい山である。だが正直今は茅ヶ岳へ登ろうとは思えない。だけど近いうちに気持ちの整理を付けて同じコースで登ってみようと思っている。もしこの場所がわかれば手を合わせてみたい。ヘリが去ったあと、その現場は何事もなかったように、いつもの茅ヶ岳の山肌へ戻っていた。ヘリのローターの風がすべての出来事を吹き飛ばしたかの如く…。下山途中も何組もの登山者とすれ違ったが、ほんの数分前にあった出来事は彼らには知る由もない。それが山なのであろう。


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2 コメント

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はじめまして。 (松原)
2009-05-31 20:23:21
はじめまして。
私は、松原と申します。
5月3日に茅が岳に登り、心臓マッサージと人工呼吸をしたものです。

あの後、あの男性がどうなるかずっと気になっていたので、このブログで教えてくださって感謝しています。
なくなられた方は、最初は意識があったんですね。
また、突然、お父様を無くされた息子さんの心境を思うと胸が痛くなります。
来年の5月3日にもう一度茅が岳に登ってお花を供えたいと思っています。

私は病院で作業療法士をしており、学校で救急法を習ったのと、消防団に入っていてAED講習をしたので、なんとか救命法を覚えていました。
まさか実地で経験するとは思っていなかったのでかなりパニックになっていましたが、皆さんが助けてくださって本当に助かりました。
ありがとうございました。
5/31 松原




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☆松原さん☆ (Cozy)
2009-05-31 23:08:06
☆松原さん☆

コメント有難うございました。
まずは松原さんの行動に対しまして敬意を称します。有難うございました。
どうすることもできずにたたずむボクらに的確な指示を与えてくれたこと、いろいろとべ勉強になると同時に無力なボクら自信を恥じることとなり、以後考えること多数です。
遺族の方にはどうお伝えしてよいのか本当にわかりませんが、今はただご冥福をお祈りするだけです。
松原さんももしかしたら自責の念にかれれているかもしれませんが、出来ることは精一杯やったのだ、という気がします。この機会を最大限今後に生かすことでこの悲劇が無駄にならないようにも思えます。
本当に有難うございました。また何処かでお逢いするようなことがありましたら、一言お礼を延べたい気持ちで一杯です。どうかこれからも楽しい山行を営んで頂ける様心からお祈りしております。有難うございました。
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