「遠離(おんり)一切顚倒(てんどう)夢想 究竟(くぎょう)涅槃」
の二句ですが、一般的な和訓は、
「一切顚倒夢想を遠離して、涅槃を究竟す」
としています。
しかし、句上から見ればこの振り仮名は違います。
「遠離 ス 一切顚倒夢想究竟涅槃 ヲ」です。
つまり、
「一切顚倒夢想究竟涅槃を遠離す」
なのです。
禅語では、
「生死涅槃猶如昨夢 (しょうじ ねはん なお さくむのごとし」
と言っています。
すでに、「空」の中にあって、「空」とは何かと問うようなものです。
修證義(しゅしょうぎ)には、
「生を明らめ 死を明らむるは 仏家(ぶっけ)一大事の因縁なり 生死の中に仏あれば生死なし 但(ただ)生死即ち涅槃と心得て 生死として 厭(いと)うべきもなく 涅槃として欣(ねが)うべきもなし」
と、はっきりお示しになっております。