店を開けてしばらくして一見の男性客が入って来た。彼は自称・元プロ歌手で歌には自信があるとか。歌を聞くと素人離れした歌い方で確かにウマい。点数にも自信があり、“六甲おろし”は他店では100点を何度も出していると言い、当店のカラオケ採点機にチャレンジをした。
歌う前に私は「他店のとは違い30年ほど前の古い機械ですから、感情を入れずにマイクを口に近付けて歌って下さい」とアドバイスをした。
しかし歌唱力には自信があるのか、彼はマイクを離して歌い点数は100点ではなく68点だった。
「こんな点数を出すようでは、これから店はやっていかれへんで。気分が悪いから帰る!」と捨てゼリフを残して帰った。
居合わせた女性客2人が「へえ、68点やったら私達にはイイ点数やのに、こんなんで怒って帰るとはね」と呆れていた。
それから後はカラオケを歌うたびに「68点やったら帰らなアカンで」「68点でなくてよかったわ」「69点や、かろうじて帰らなんで済むなあ」等と“68点”をギャグにして、お客さん共々盛り上がった。
私「さっきの客、気難しそうで気をつこうたけど、エエ客やなあ」
客「あら、どうして?」
私「68点で盛り上がるやん。おいしいネタを置いていったやん」
客「ホンマやね」
私「しやけど、このネタはよその店では通じえへんけどな」
客「確かに」
一句:点数が 悪いと機嫌が 悪くなる
謎かけ:点数とかけて、特別に与えられる待遇と解く。どちらも(得点・特典)