親切な言葉

　タコの一品を出したらTさんが七味をおくれと言って沢山ふりかけた。

　ママ「そんなにかけたら身体に悪いよ」
　客T 「嬉しいなあ、身体を心配して親切に言うてもらうのんは初めてや」
　ママ「あら、そう？」
　客T 「マスターはいっこも心配してくれへん」
　私　「ほんだら心配して言うたろか」
　客T 「言うて」
　私　「あんまり七味をぎょうさんかけたらアカンで」
　客T 「ありがとう」
　私　「七味が減るから…」
　客T 「なんやねん、身体の心配と違うんかい！」

　一句：独りモン　親切言葉に　ほだされる
　謎かけ：親切な言葉とかけて、空手のパフォーマンスと解く。どちらも(労わり・板割り)がある。

アマン

　女性客のK子さんがママにデュエットを申し込んだ。

　客K「ママ、一緒にデュエットしよ」
　ママ「女同士で？」
　私　「ママはハスキーやから男の方、歌えるやん」
　ママ「何の曲唄うのん？」
　客K「アマン」
　私　「題名を変えんな」
　客K「なんて？」
　私　「おばさん二人やから、アマンからオバンに」
　ママ「K子さんに失礼やん」
　客K「当たってるからイイよ」
　ママ「この曲は苦手やわ。この前、お客さんとデュエットした時、アカンかったわ」
　私　「ほんだらアマンと(チゴ)て、アワンやなあ」
　客K「マスターのダジャレには負けるわ」
　※アマン＝フランス語で『恋人、愛人』

　一句：お客さん　アマンのダジャレに　あまんじる
　謎かけ：アマンとかけて、生ゴムと解く。どちらも(lover・ラバー)です

家なき子

　年配で一人暮らしのKさんの新婚の娘さんが、月末に自宅に招待してくれるとか。

　客K「生まれて初めて手作りの料理を食べさせてくれるねん」
　私 「エエ娘さんやなあ。俺、娘がいてないだけにグッと来るわ」
　客K「しやけど、魂胆があるねん」
　私 「あ、そうか。給料日やから、フトコロ狙われてるのんと違うか？」
　客K「そうやねん、孫の服を買(コ)うて欲しそうな事を言うてたわ」
　私 「服屋に連れて行ったら私のんもついでにと言お思て、既にツバをつけてたりして」
　客K「娘はちゃっかりしてるからなあ」
　私 「ついでに婿さんの分まで買って、と言うかも知れんなあ」
　客K「うわー、どないしよ。メシ代よりもかなり高(タコ)つくなあ」
　私 「これから、給料日と年金の日が狙われるなあ」
　客K「土産にケーキ持って行こか、言うたら「要らん」ていわれたわ」
　私 「安達祐実じゃないけど、『ケーキくれるなら金をくれ』やなあ」
　客K「家なき子かいな」
　私 「そら、ケーキよりもお金の方が家計の足しになるからなあ」
　客K「俺のフトコロをアテにされたら、こっちは俺が金なき子になるわ」

　一句：逆境を　強く生き抜く　家なき子
　謎かけ：家なき子とかけて、ふぐの卵巣と解く。どちらも(不遇・ふぐ)の子である

情報雑誌『LEADERS EYE』

　去年の11月に女優の島田陽子さんが来店して情報誌の取材を受けたが、その雑誌が昨日届いたので誌面の内容をご紹介します。
『タイトル：燃えさかる気持ち、青年の如く―　夢を追いかけ、走り続ける』
(本文)
島田　店名と雰囲気から察するに、マスターはやはり阪神ファンで？
有村　もちろんです。実はこの店も、元々は阪神ファン向けのつもりで始めたんやけど、それだけではなかなかお客さんが来ません（苦笑）。それで途中から方向転換をして、今は八方美人で店をやってます。実際に、巨人ファンのお客さんもいてますからね（笑）
島田　（笑）。お客様には常連さんが多いのでしょうか。
有村　そうですね。一見さんは少ないですけど、来たらみんな和気あいあいですわ。ちなみに34年前のオープンの時から来てる常連さんもいてますよ。
島田　それだけマスターとこのお店が愛されているということでしょう。
有村　それはどうか分かりませんけど、この業界は競争が激しいので、他店との差別化を図り、少しでもお客さんに喜んでもらおうと色々なことに取り組んできました。たとえば、あそこに張り出してるカラオケ番付表もその一つ。85点以上を取れば、あの番付表に名前が載ります。
島田　そういったものがあれば、お客様も張り合いが出るでしょうね。
有村　過去には、ヒートアップし過ぎて70曲歌った人もいてましたわ（苦笑）。ちなみに番付は当店のホームページでも公開していて、店に来られなくても遡って番付を見ることができます。他にも、「タイガースソテー」などユニークな料理を提供したり、お客さんにスナック芸を披露したり、色々やってます（笑）。
島田　そういったサービス精神が旺盛なところも、お客様から愛される所以なのでしょう。では最後に、今後の夢を。
有村　まず一つは、この店をできる限り長く続けることです。極端に言えばギネスブックに載るぐらい続けていきたいですね。他にも店を舞台にしたお笑いの本や、25歳で他界した娘をテーマにした詩集を出版したいです。いつまでも青年の気持ちを忘れず、夢を追いかけて走り続けますよ。青年のように熱い気持ちがなければ、夢も語れないと思います。

昔のテレビ

　当店のカラオケのモニターは3台あるが1台はまだブラウン管を使っている。

　客 N「へえ、まだブラウン管を使(ツコ)うてんのん？」
　私 「そうや、モニターとしてやったらまだ使えるから…」　
　客 N「液晶と違って場所をとれへん？」
　私 「そやな。でも昔のテレビはもっと丸くて分厚かったなあ。まるでN子ちゃんやなあ」
　客 N「何よ、マスターは未来のテレビやんか」
　私 「なんや、今のんと違うんかいな」
　客 N「今のは薄型、マスターはもっと薄いから、超薄型や」
　私 「超が付くんかいな。朝ごはんやわ」
　客 N「朝ごはんて、どういう意味？」
　私 「超、ショック！…朝食」

　一句：カラオケじゃ　昔のテレビも　役に立つ
　謎かけ：昔のテレビとかけて、大相撲の番付と解く。どちらも(重量・十両)があります

変な客

　類は友を呼ぶと言うのか、私に似たイチビリな客が来た。

　私 「いらっしゃい、何しましょ？」
　客H「ビール、3分の1おくれ」
　私 「ビールは栓を抜いたら気が抜けるから、3分の1は売られへん」
　客H「ほんだら、3分の3おくれ」
　私 「ややこしい言い方をして、1本やん。ホンマ、変な客ばっかりや」
　客H「え～変か？」
　私 「マトモなん俺だけや」　ビールとグラスの代わりにお猪口を出した。
　客H「どこがマトモやねん！お猪口を出してもう、飲みにくいやん」
　私 「おちょこって、(おちょくって)ごめんね」

　一句：変な客　類は友呼び　変な店
　謎かけ：変な客とかけて、白い犬と解く。どちらも(面白い・尾も白い)でしょう

カリスマ

　お客さんのS君が以前に勤めていた店のマスター・T君は、若いのに堺で一番の繁華街で和食料理店や焼鳥店など飲食店を5店舗も経営しているとか。
　
　私　「若いのに5軒も経営してるのん？大したモンやなあ」
　客S「T君はやり手やで。まだまだ店を出すて言うてるらしいで」
　私　「へえ凄いなあ。飛ぶ鳥を落とす勢いと言う諺があるけど焼鳥を飛ばす勢いやなあ」
　客S「まあ焼鳥屋もしてるからなあ。T君はテレビにも出てたし、この業界のカリスマや」
　私　「えっ、そんだけ儲けてるのに借家に住んでるの？」
　客S「え、どういう意味？」
　私　「借り住まい…カリスマ…」
　客S「ちゃんちゃん！」

　一句：その道で　憧れの的　カリスマは
　謎かけ：カリスマとかけて、病院と解く。どちらも(美容室・病室)があります

健忘症

　お客さんとの話が夢中になり、飲み物を出したのだがセットの一品と付き出しを出すのを忘れた。

　客H「マスター、一品と付き出しが出てないで」
　私 「あ、ゴメン。出してなかったなあ」
　客H「それでセットを取ったら、セットウ(窃盗)になるで」
　私 「お、うまいこと言うやん。しやけど俺、ケンミンショーかな、最近、忘れっぽくなったわ」
　客H「みのもんたじゃあるまいし、それ、ケンボウショウやろ。ついでにココの飲み代も忘れてや」
　私 「残念でした。それだけは忘れん様に先にメモを付ける癖が付けてるわ」
　客H「ボケてきたわりには、それだけはしっかりしてるなあ」
　私 「当たり前やがな。飲み物売って飲み代を貰えへんかったら店が潰れてしまうがな」

　一句：健忘症　だんだん増える　もの忘れ
　謎かけ：健忘症とかけて、部屋と部屋を繋ぐ通路と解く。どちらも(老化・廊下)です

シチュー

　独身のＴさんが初めてシチューを作ったとか。

　客Ｔ「シチュー作ったけど牛乳を入れんのん、知らんかったわ」
　私「そうやで、入れるんやで。ウチの嫁さん、牛乳が無い時はお乳を搾って入れてたで」
　客Ｔ「ホンマかいな。あんなんでママのオッパイ、出るんか？」
　私「それはママのオッパイが小さいって、言いたいのか？」
　客Ｔ「うん、まあな」
　私「ママが一番気にしてる事をシチュー作りにかこつけて言うて、シチュー(市中)引き回しの上、打ち乳首獄門やなあ」
　※市中引き回しの上、打ち首獄門＝見せしめに罪状を書いた板を飾り死刑者を馬に乗せて町中を回ってから斬首して、その首を獄門台の上に置いてさらしものにする事。

　一句：牛乳を　シチューにちょい足し　まろやかに
　謎かけ：シチューとかけて、お気に入りの一眼レフカメラはと解く。どちらも(煮込んで・ニコンで)あります

灯油

　女性客が高橋真梨子の“for you”を唄うと言った。

　私　「おお、ちょうどタイムリーでええやん」
　お客「えっ？」
　私　「この曲、“とうゆー”やろ、石油ストーブに必要やん」
　お客「わざととぼけて、面白ないわ」
　私　「とぅゆー事で、ちゃんちゃん！」

　一句：冬の夜　灯油のギャグで　なお寒し
　謎かけ：灯油とかけて、枯れ草と解く。どちらも(燃え・萌え)ません