西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

鏡獅子―73

2009-07-17 | 曲目 (c)yuri saionji
連獅子―9


子獅子が駆け登って来た後は、お定まりの”狂い”→”獅子トラ”で”段切れ”となる。

それにしても、「勝三郎連獅子」と、「正次郎連獅子」は
歌詞も内容も、よくぞここまでというほど似ている。
二人が仲良しだった事と、著作権がなかった事とがそれを可能にしたのだろうが、
言い回し、曲の配置替え、差し込み、差し替えと、
そのリメイクの手腕は、さすがに見事だ。
当時の戯作者は伝統的に、そのようなDNAを受け継いでいたのだろう。

杵屋六左衛門(9代目)が、一日という時間制限の中で作った
「越後獅子」(1811年)は地歌の「越後獅子」のリメイクだが、
これも配置替え、差し込み、差し替えの突貫工事で作られた。

どうも瀬川菊之丞の「石橋」から始まって
「相生獅子」→「夫妻獅子」→「枕獅子」→中村富十郎の「英執着獅子」
→「勝三郎連獅子」→「正次郎連獅子」→市川団十郎(9代目)の「鏡獅子」
と、”獅子物(石橋物)”には特にその傾向が強いような気がする。
あるいは、菊之丞の3回にわたる焼き直しで、
”獅子物”に関しては酷似するのを許される慣習みたいなものが
できあがったのかもしれない。

「鏡獅子」以後はこれといった”獅子物”は作られていない。


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚