西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

鏡獅子―64

2009-07-06 | よもやま話 (c)yuri saionji
以上で「鏡獅子」は終りとなる。

本来の獅子物は、瀬川菊之丞の「相生獅子」
を踏襲して、ずっと女形の所作として継承されてきたのだが、
杵屋六左衛門(10代目)が「石橋』(1830年)を発表してから
(4月19日に記載)どうも認識が変わったようだ。

花柳芳次郎(2世・寿輔の長男)の襲名には、
杵屋勝三郎が「連獅子」を作曲(1861年)。
振付けは寿輔で、二人舞いという斬新な趣向に加えて、
能装束の大口袴を穿き、紅白の長い毛を振り回すという、立役の獅子を登場させた。

これにより「相生獅子」から「執着獅子」までの獅子物の概念が一変した。
遊女色は跡形も無く消え去り、本行に近い立役の所作となった。

団十郎(9代目)の鏡獅子は、その中間を取った形だ。
時代が明治の演劇改良劇という、真面目路線への転換期でなければ
前ジテは恐らく小姓ではなく、遊女になったのだろうが、
そこがまた、時代に翻弄されながらも、
逞しく生き抜いてきた歌舞伎の軌跡を見るようで、面白い。


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photo by 和尚