武太夫の「奈良柴」からもう一首。
「芸の道 こまかにしらで つらの皮
厚きを見れば 撥もあたらず」
いっぱしの顔をして三味線を弾いているが、
なんともおそまつな音を出していることよ。
芸を知らない奴にかぎって面の皮が厚いものだよ。
というような意味になるだろうか。
芸というものは知れば知るほど謙虚になるものだから、
無恥厚顔に皮を引っぱたいても三味線は鳴ってはくれない。
事実三味線になめられる、ということがある。
へたな奴は楽器が馬鹿にするのだ。
糸巻で手こずらせたり、
鳴ってくれなかったりする。
だから、不思議なことにどんなにいい三味線でも、
下手な人が弾くと全く鳴らない(われわれレベルでの尺度)し、
弾き手によっても音色は変わる。
楽器は自分と同レベルの奏者に共鳴するのだろう。
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tea break・海中百景
photo by 和尚
