西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

「勧進帳」-3

2011-05-31 | 長唄を作った人たち (c) y.saionji
「勧進帳」-3


六三郎は作曲するにあたって、六左衛門をおもんぱかってか、
大薩摩のフレーズを少し変えた。
さらに一中節、半太夫節、説教節なども取り入れ、
凝りに凝って「勧進帳」を作った。

実は六三郎はこの曲を最後に、息子に名を譲り、
六翁と改名して引退する覚悟。

それを知った団十郎は、名題看板に「杵屋六三郎一世一代」と銘打った。
三味線弾きの引退が看板に載るなど前代未聞。
いかに団十郎が六三郎を大事に思っていたかが推量できる。

さて、出来上がった「勧進帳」の演奏をめぐって問題がおきた。

団十郎は、何が何でも作曲者六三郎に演奏をしてもらいたい。
だが六三郎はこの年、岡安喜代八(唄方)と一緒に市村座だ。
団十郎のいる河原崎座のタテは、芳村伊十郎(3世・唄方)と杵屋長次郎(2世)。

そこで団十郎は「勧進帳」だけ、六三郎と喜代八を別雇いすることで
市村座と話をつけた。


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「勧進帳」-2

2011-05-30 | 長唄を作った人たち (c) y.saionji
「勧進帳」-2


「勧進帳」のルーツは能の「安宅」にある。
すべてに本物志向の団十郎は、
できうる限り本行に近づけようと考え、能楽師に教えを乞い狂言を練った。

初演では薩摩外記の出語りだったが、今回は荒事の正統、大薩摩でいく。
かつて六三郎(4世)が「不動」を大薩摩で再現した時には、
六左衛門(10世)はまだ大薩摩の家元ではなかった。
だが、今は大薩摩筑前大掾を名乗る家元だ。

大薩摩の地でいくと決めた団十郎はしかし、
作曲を六左衛門ではなく、朋友の六三郎に依頼した。
大薩摩の家元を無視して六三郎に頼むとは、
六左衛門が面白いわけはない。

団十郎は16才で祖父、5代目団十郎という大きな後ろ盾をなくしているが、
この頃から、12才年上の兄貴的存在の六三郎とは深い絆で結ばれていたのだろう。

六左衛門がデビューしたのはその10年ほど後のことで、
いかな名門の六左衛門も、すでに入り込む余地がなかったとみえる。

事実、団十郎の狂言はほとんど六三郎が作曲しているし、
六左衛門が団十郎のために作曲したという曲は、私の知る限りない。

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「勧進帳」-1

2011-05-29 | 長唄を作った人たち (c) y.saionji
「勧進帳」-1


歌舞伎十八番を制定して8年後(1840・天保11年)、
市川海老蔵(5代目)は、
元祖市川団十郎生誕190年記念の公演を打つことにした。

歌舞伎界の親分的存在で、齢50の千両役者。
自宅は豪華を極め、3人目の妻と3人の妾、
7男5女の子供と暮らす。
金も力も野心もある海老蔵は、これでもかと市川家を誇示する。

演目は、初代が初演して大当たりを取った『星合十二段』から
安宅の関の「勧進帳」と決めた。


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tea break・海中百景
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繭の会

2011-05-28 | 仕事関係
今日は「繭の会」が日本橋三越劇場でありました。

台風の影響で、お天気は雨もようだったのですが、
客席は満席でした。
さすがに70回の実績を誇る「繭の会」です。
            
左より、杵屋静子・日吉小暎・今藤美知・長十郎・芳村伊十衛・杵屋佐臣氏。


番組は、同人・助演者一同による「安宅の松」、
今藤美知・日吉小暎氏による「越後獅子」、
杵屋佐臣・静子氏による「島の千歳」、
芳村伊十衛・今藤長十郎氏による「二人椀久」の4番でした。


助演者の楽屋風景、みなさん気心の知れた仲間です。

左より、今藤政子・芳村伊四絽・稀音家六紗代・杵屋秀子、
六多之・三澄氏。

私の同級生、東音岩田喜美子氏。
      
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繭の会下浚い

2011-05-27 | 仕事関係
今日は繭の会の下浚いがありました。
4時からでしたが、一番目の「島の千歳」の鼓を打って下さる
堅田喜三久師(人間国宝)は、
とてもお忙しい。

今日も他の仕事と掛け持ちで、
ここを4時きっかりに始めなければ、
次の仕事に支障がでる、
ということで、
スタンバって待っていてほしいという指示。

唄も三味線も3時半位から用意をして、
スタンバイ。

4時2分過ぎに現れた喜三久師はすでに、
鼓を手に持った状態で(本当は鼓は、組み立てるものなのです)、
座布団に座るなり、曲が始まりました。

左から、杵屋佐臣・静子・六多之氏。 
鼓は喜三久師。


さすがに分刻みで動いていらっしゃる喜三久師、
終るとすぐにお帰りになりました。
聞きしにまさる鉄人です。
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