賤機帯-4
舟の客に「気違い、気違い」と囃された狂女は振り返り、
「情けない…」と嘆く。
「物に狂うは我ばかりかは
鐘に桜の物狂い
嵐に浪の物狂い
菜種に蝶の物狂い
三つの模様を縫いにして
いとし我が子に着せばやな…」
● 物に狂うのは私だけではないぞ、
鐘に桜、嵐に浪、菜種に蝶、みんな物狂いだ。
この三つの模様を刺繍にして、かわいい我が子に着せたいものよ。
“鐘に桜”の桜とは、桜満開の春の日に
紀州の道成寺に“鐘供養”に現れた白拍子の例えだ。
白拍子は清姫の化身で、男に裏切られた女の怨念が蛇体となり、
この鐘に隠れた安珍を焼き殺したという伝説がある。
だから「鐘に恨みは数々ござる」という歌詞が成り立ち、
鐘と桜はセットとなる。
“嵐に浪は”、北斎の浮世絵富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」的イメージか。
“菜種に蝶”はいわずもがなだろう。
〓 〓 〓
tea break・海中百景
photo by 和尚
舟の客に「気違い、気違い」と囃された狂女は振り返り、
「情けない…」と嘆く。
「物に狂うは我ばかりかは
鐘に桜の物狂い
嵐に浪の物狂い
菜種に蝶の物狂い
三つの模様を縫いにして
いとし我が子に着せばやな…」
● 物に狂うのは私だけではないぞ、
鐘に桜、嵐に浪、菜種に蝶、みんな物狂いだ。
この三つの模様を刺繍にして、かわいい我が子に着せたいものよ。
“鐘に桜”の桜とは、桜満開の春の日に
紀州の道成寺に“鐘供養”に現れた白拍子の例えだ。
白拍子は清姫の化身で、男に裏切られた女の怨念が蛇体となり、
この鐘に隠れた安珍を焼き殺したという伝説がある。
だから「鐘に恨みは数々ござる」という歌詞が成り立ち、
鐘と桜はセットとなる。
“嵐に浪は”、北斎の浮世絵富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」的イメージか。
“菜種に蝶”はいわずもがなだろう。
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tea break・海中百景
photo by 和尚