西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

58-隈取安宅松

2009-09-30 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
富士田吉治―57「隈取安宅松」

子供達が引っ込んだ後、弁慶は天狗の正体
(実は、鞍馬山で牛若丸に剣道を教えた、天狗の親分、僧正坊が弁慶となって、
牛若丸に従う、という説もある)を現し、
天狗風とともに、花道を”六法”を踏んで引っ込む。

『夢夢疑い荒磯の(夢夢疑いあるなよ)
 いさごを飛ばす 土煙
 梢 木の葉もばらばらばら
 俄に吹きくる はやち風
 天地も一度に鳴動して
 岩石 古木ゆさゆさゆさ
 どろどろどっと 山おろしの
 風かあらぬか その姿(風かとみまごう、その姿)
 見失いてぞ 見失いてぞ
 立ちにける』

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tea breaku・海中百景 
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57-隈取安宅松

2009-09-29 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
富士田吉治―56「隈取安宅松」


『神の鈴は しゃんぐしゃんぐと
 さっても揃うた 子宝
 一度に問えば おとよ けさよ
 辰末 ゆる松 だんだら いなごに
 かいつく坊 ひっつく坊
 かいつく ひっつく しゃんしゃん

 扇に馴染む 風の子や(扇と遊ぶ子供たち)
 風の木の葉の 散りじりに(風に舞い上がる木の葉のように)
 里をさしてぞ(飛んで帰った)』

里の子供たちは、弁慶に扇を貰って大喜び。
わあわあと、走って袖に引っ込む。

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tea breaku・海中百景
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56-隈取安宅松

2009-09-28 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
富士田吉治―55「隈取安宅松」


次はお伽噺からの引用。

誰でもが知っているという前提で書かれている。
はなしの内容は、
【常陸の国に文太という下男がいた。ある時主人に追われ、角岡に逃げた。
 人の情けで塩釜をもらった文太は、塩を作り始めた。
 たまたまその塩を食べた病人が、元気になったものだから、
 皆が文太の塩を欲しがり、ついに文太は大金持ちになり、嫁をもらって
 子宝にも恵まれたとさ、めでたしめでたし】

 
『絶えずや 絶えずや子宝
 一に千石 米倉 常陸の国の角岡に
 黄金の花が咲いたよさ
 にっこり はっこり ホホホ ホホホホホ
 お笑い召したは しっかい在所の(お笑いになったのは、まっことおらが村の)
 庄屋殿だんべい
 いっかい いっかい(たくさんたくさん)
 いかい俵に 酒樽千杯 万杯(たくさん俵に、)
 万杯万万杯
 打っておけ しゃんしゃん
 打っておけ しゃんしゃん』  
 
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tea breaku・海中百景
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55-隈取安宅松

2009-09-27 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
富士田吉治「隈取安宅松」―54

次は「しょんがい節」で笛を聴かせる。

『裏のな 裏の瀬戸屋の今年竹
 笛にしょうもの 草笛に
 笛になりたや 忍ぶ夜の
 笛は思いを 口移し
 ああ しょんがいな
 しょんがいな

 忍ぶ 忍ぶその身は安宅の松よ
 雪の夜毎の汐風に
 揉まれ揉まれて 立ち尽くし
 ありして これして しょんがいな
 面白や』

ここはことさら意訳する必要はないと思う。
組歌時代の名残ともいえる、"返し唄”(つまり二番)がみられる。
これは、古い曲によくある形で、
いわば人間の尾てい骨のようなもの。 
長唄の進化のプロセスともいえる”返し唄”は、
なぜか時代が下ると消えるのだ。

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tea breaku・海中百景
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54-隈取安宅松

2009-09-26 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
富士田吉治―53「隈取安宅松」

安宅に着いた弁慶。
そこに子供が登場する。
巷のわらべ歌を拝借して、歌詞を続ける。

『落ち葉掻くなる 里の童の(落ち葉を掃いている里の子)
 野辺の遊びも余念なく(遊びに夢中)
 こりゃ誰がめづき(これは誰が見つけたの)
 ちっちや こもちや 桂の葉 (せんだん、こぶしに桂の葉)
 ちんが ちがちが ちんがらこ
 走り走り 走りついて
 先へ行くのは 酒屋のおてこ
 後へ下がるは おおかみ きつね(おか・みき・つね)
 尼が紅つけて 父や母に言おうよ
 言うたら大事か 剃ってくりょ(言うたら大変、剃られるよ)
 坊主 坊主 大坊主』
 
「おおかみ きつね」は子供の名とも取れるし、幻想的にとれば
狼、狐とも解釈できる。
「坊主 坊主 大坊主」は原作で、
後に「葉越しの 葉越しの月の影」と、唄われるようになった。
何でも、吉治がさるお方に呼ばれてこの曲を演奏する事になったのだが、
そのご当主が坊主頭だったため、とっさに歌詞を変えたのだとか。

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tea breaku・海中百景
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