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まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

しあわせのパン

2012-02-02 22:17:43 | 日記
美しく厳しい北の土地で
カフェを営む若い夫婦

「すきなことをしようとおもったのです
 すきなばしょで
 すきなひとと」

さまざまな世代のひとたちが
それぞれの苦悩を抱えて
カフェにやってくる

焼きたてのパン
淹れたてのコーヒー
季節の滋味溢れるスープ
日々移ろいゆく景色
そして 月

おいしいものは生きる力を呼び覚ます、とは
宮部みゆきの本のなかの台詞だったか

パンを食べ、コーヒーを飲み
月を眺めてゆくうちに
次第に元気になってゆくひとたち
もてなすことで自らの傷を癒す主人公

彼女に寄り添い、温かく静かに見守る夫が
とうとう自分の望みが叶ったときに見せる表情に
胸打たれた

月はじぶんで光を発するのではなく
おひさまの光を反射して
ひとびとの夜を照らす
ひとつのパンをわけあうように
明るさをわけあい、繋がっている

おおきなパンを焼いて
さくっとちぎってわけて食べよう
すきなひとと

早い春の陽だまり

2012-02-01 07:01:37 | お菓子作り
横浜にあるお菓子教室に通うようになってから
まる4年経とうとしている

ムスメのほうが早く入会しているので
センパイだ

家のせまいキッチンでも
ときどきふたりでお菓子を作る

ふたりぶん×4年以上 の
ルセットのファイルは3冊
すでにぎちぎち

なかでもムスメが気に入っていて
誕生日になるとよくリクエストするのがこれ

ビスキュイ、ヘーゼルナッツのクレームオブール
キャラメリゼしたアーモンドスライスを組み立てる
オレンジコンパウンドとバナナのリキュールが
ほわり、とあたたかい雰囲気を醸し出す

ルセットの製作者がこのお菓子につけた名前が
「早い春の陽だまり」
彼はわたしたちの先生の師匠であり
代官山にある彼のお店は有名

逸話に事欠かないお人であるが
いちばん印象に残っているのは
独立した弟子が5,6年経って
じぶんのルセットを勝手にアレンジしはじめることを
憂う話
自ら弟子の店のお菓子を食べたのち
「おまえはこんな菓子を作って恥ずかしくないのか」
とファックスを送るそう 笑

たとえば、バターに砂糖や卵を混ぜたのち
メレンゲや粉とあわせる、という工程のとき
最初はしっかり混ぜるため小さめのボウルでスタートし
材料が増えてゆくのにあわせてボウルや木ベラを大きくしたり
比重のちがうものをきちんと混ぜるため
途中で別のボウルに移して天地を入れ替えたり
そういったきめ細かく丁寧な作業が
ルセットのいたるところに書いてある

わたしたちの先生はそのひとつひとつを
これまた丁寧に拾う
ここまでしなくてもいいかもしれないけど、
まあ、書いてあるんだからやりましょう、
だなんて笑っておっしゃることもアル

そのようなルセットであるため
たとえばこの陽だまりだと
作るのに約4時間かかる

そうやって作ったお菓子を
嬉しそうに、ものの数分で食べつくし
おいしかった、というムスメを見ると
ちょっとだけフクザツな気持ち