おうちBAR開店

本格的なパーティー料理から手抜きお手軽料理まで、私のキッチンから発信します。毎日の出来事を含めて楽しくご紹介。

津軽塗に伝統工芸を思ふ

2017年11月06日 | 和食
青い森紀行は終了いたしましたが
青森の津軽地方にまつわるお話を一つ。
今旅の最大の目的は
アルチェントロを再訪することでした。
そしてサブ目的が津軽塗の器を買い足すこと。
10数年前、人生の節目で
津軽塗の小さな重箱をいただきました。
漆塗りと言えば
朱や黒に艶っぽく仕上げられたものが代表的ですが
津軽塗は螺鈿の細工のように
一つとして同じでない文様が
一面に施されております。
その精緻な伝統工芸に初めて触れた私は
なんて美しい重箱なんだろうと
事もあろうに仕舞い込んでしまったのです。
使ったのは片手の指で数えられる程度かしら。



そこで今回はもっと気楽に使える
汁椀を求めようと
重箱と一緒に入っていた
お店の案内を頼りに
弘前の街へ向かいました。


弘前城のすぐ近くにある
田中屋さんの前に到着すると
お店が閉まっているではありませんかっ。
臨時休業とはなんと運の悪い…
と自分の運の悪さを恨みつつ張り紙を見ますと
臨時休業ではなく閉店してしまったとのこと!
ななな、なんと数日前に。
そんなはずは、とネットで検索すると
老舗の閉店を惜しむ記事が多数見受けられました。
どうやら諸事情で
商売が立ち行かなくなったみたいです。


がっくりと肩を落としてしばらくボー然するも
気を取り直して他の製造販売店を検索。
中心部から少し離れた
小林漆器さんがヒットしました。
もうすぐ閉店時間だというのに
「ちょっ、ちょっと待っててください〜」
と電話で引き止める図々しさよ…
そこで念願だった唐塗りのお椀を購入。
包装していただいている間に女将さんが
「津軽塗は50回近く塗り重ねるんですよ。
『馬鹿塗』なんて揶揄されますが
ちょっとやそっとでは剥がれません。
もし欠けたり剥がれたりしたら修理します。
だから毎日じゃんじゃん使ってくださいね」
と津軽塗の頑丈さを説いてくれました。

この言葉を受け止めて
物の価値観について考えさせられた次第です。
確かに津軽塗の椀一つ買うお金で
100円ショップのお椀が80個買えます(数字に表すと凄いな…)
しかし職人が数ヶ月かけて作った工芸品とは
一線も二線も画すと思うんです。
料理を食べる楽しみはもちろん
作る楽しみももたらしてくれます。
それに職人から直接購入すれば
修理してもらえるので使い方次第では一生物。
いや、子から孫へと継承できるかもしれません。
100円の椀は100円の使い方しかしないし
きっと壊れたらゴミ箱行きでしょう。
手軽に入手できるから
手放す時も罪悪感や未練はない。
そんなファスト文化が
老舗を閉店へと追い込んだ一因かも、ですね。
私はこれからも愛ある買い物をし
大切に使い続ける道を選びたいと思います。
お重も使用頻度を上げなくちゃ。




これがきっかけとなったお重



ある日の昼食

前日の残り物と常備菜、
最近のお昼の定番「ネバネバ丼」、
煮干しの出汁ガラとくず野菜のスープ。
なんてことないどころか
質素極まりない内容ですけど
職人の魂が宿った器に盛ると
ゴージャスに見えるから不思議です。
器の力は偉大だわ♪


他にも津軽土産がありました。


津軽りんごTシャツ

弘前のセレクトショップ
THE STABLESで一目惚れ。
りんごの絵は「彦様木版工房」が手がけています。
遠目に見ると日の丸に見えるとか見えないとか(笑)




八戸の鯖グリエとトマトのクーリ

八戸で購入した塩鯖に
オリーブオイルをかけてオーブンで焼成。
酸味が合うと思ったので
トマトのクーリの優しい輪郭をレモン汁で締め
オリーブオイルでコクを与えています。
お豆は津軽の毛豆です。
大粒で味わいが濃いんですよ。




嶽きみと八戸塩うにのスパゲットーニ

岩木山の麓で採れるトウモロコシ「嶽きみ」を
ピュレ状にしたものとホールを使って。
八戸の市場で買った塩ウニで塩梅を調整。
なかなか美味しゅうございました。


こうして津軽を振り返っていると
夕暮れをバックに突如として現れた岩木山が思い起こされます。
津軽平野にどんと腰を据えるシンメトリーな形状が
なんとも美しくて感動しました。
頭に浮かぶBGMはもちろん吉幾三の「津軽平野」。
リアル岩木山を見た後に太宰治の「津軽」を読み返し
この山が津軽の人々の誇りであり心の拠り所だと改めて知り
一層威厳ある山に見えるようになったんです。
豊橋でいう「石巻山」かしら…規模が違いすぎるか。


津軽、いいところです。
また行こう、必ず。

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