LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

2015年のジェネアビ機の生産販売状況:今現在のボナンザの市場価値

2016-03-07 | 航空関連エッセイ

2006年から2007年のピークを境に、生産数販売数ともに伸び悩むジェネアビ用航空機の市場。昨年は全世界でピストンエンジンの機体1264機が販売されたが、全盛期(2006年)に比較して半数以下だ。2015年、一番機体を売ったピストン機メーカーはCirrus社で、総販売数301機。ちなみに、2006年の全盛期、Cirrus社は年間721機も売れていた。Cirrusで一番売れているのはSR22 Turboの142機、SR22の128機、最上位機種が中心。その反対に、Cessna社の2015年ピストン機販売271機のうち、143機が訓練機として人気のCessna172Sだった。最上位機種のCessna TTxの販売数は44機に過ぎない。Cessnaのレシプロ機の屋台骨はいまだに永遠のベストセラー、172が支えているのだ。

Cessna172と並ぶロングセラー、Beechcraft Bonanzaの販売数は思わしくない。2015年、Bonanza A/G36は23機、Baron B/G58は18機だけ。いまだに新品が売れるのもすごいが、流石に市場価値は低迷している。昨年12月からS35という昔しながらのBonanzaを飛ばすようになったが、その飛行性能や乗り心地には感動している。今の高性能機とも競えるほどの飛行性能を有している。でも、中古市場での価値ならともかく、新品でCessna TTx、Cirrus SR22Tと競える商品価値があるかと言えば、かなり無理がある気がする。機内の横幅の広さ、居住性、静寂性、デザインなど、最新の機体にはかなわない。

双発機の市場は壊滅的。Beechcraft Baronだけでなく、Piper Seneca Vも2015年販売数は8機と低迷。自分がレシプロ双発機を新品で買えるなら、Diamond DA62!、DA42を選ぶだろう。現に2015年のDiamond DA42/62の販売実績は46機にもなる。最新設計の双発機以外、百万ドル/一億円の価値を見出せない。Diamond DA62が登場した今、残念ながらBaronの将来はなくなったように思える。

とんでもなく健闘しているのがTecnam社。Lightsportsが中心だが、2015年には191機も売っている。Cirrus、Cessna、Diamondに続く、レシプロ機販売数4位だ。あと、現代版のCubを販売するCubCraftersは52機も販売している。販売実績だけではBeechcraftやMooneyなどの老舗をあっさり抜き去った。

中国資本が入り生産を再開したMooney。一昨年は1機のみの販売だが、昨年は11機売れた。新しいコンポジット製の3人乗りのレシプロ機も作っているし、復活の兆しを感じる。Mooney Acclaimも内装を完全に一新、ドアも右側1個の小型のドアから左右1個づつの大型のものに変更するなど、大幅なモデルチェンジを行った。内装はかなり格好良くなったと言える。それで最新のCessna TTxやCirrus Turboと勝負になるかわからないが、後付けでGarmin G1000をはめ込んだだけのBonanza A/G36よりは商品価値が高いように見える。

レシプロ機に比較して、ターボプロップ市場は好調。Beechcraftの販売を支えているのはKing Air。2015年は117機を販売し、全世界で売れたTurbopropの5分の1以上がKing Airだったことになる。CessnaもCaravanを102機売っている。Pilatus PC12は70機、Daher/Socata TBM900は55機も売れた。レシプロ機ではさほど元気のないPiperも、PA-46 500PT Meridianは27機も売っている。ターボプロップの販売機体数もさることながら、販売価格はレシプロ機の比較にならない。

全体的にみて、進化のない米国製航空機用レシプロエンジン、何十年も前の機体設計、Avgas確保への不安などから、ジェネアビの屋台骨を支える老舗メーカーの元気がない。新興メーカーは健闘しているが、全く新しいモデルを出さない限り、老舗メーカーには未来がないように思える。Baron、Bonanza、Mooney Ovation、Malibu、Seneca、Seminoleなど、昔ながらの高性能機たち。買うなら程度の良い中古を買うのが賢明だ。


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