LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

フライトログ:1500fpm!の下降気流に巻き込まれて、、、、

2010-12-14 | Flight Log (機長)

週末の朝、サンタモニカ空港に向った。Pacific Coast Highwayは低い霧に包まれていた。電話でサンタモニカ空港のATISを取ると、視程は4マイルでSky clearとのこと。霧は海岸線から内陸に入ってきていないようだった。空港に到着、エンジンオイルを1クオーツ足し、エンジン始動。いつものようにランナップ、そしてRwy21から離陸した。

Left downwind departureで力強い上昇、気持ち良く海に向って飛んでいった。そして1800ftくらいの高度でダウンタウンを目指して飛ぶ。そのままFwy10の上を飛び、ダウンタウンの横を抜けた。かなり揺れがあった。先日同様、サンタアナウィンドというか、変な北風が吹いている。こういう風の吹き方の時、海岸線はオフショア気味の風となったり、風が凪いで海岸線に霧が停滞したりすることが多い。毎週末サーフィンしていた時代、波の形を崩さないこういう天気が好きだった。

エルモンテ空港のClass D Airspaceの上空を越え、高度を5500ftまで上昇、東への巡航を続けた。左にはMt San Gabrielなどの山脈が広がる。はっきりした形状ではないが、Cap Cloudsと思われる雲が出ている。上空12000ー13000ftくらいにはWaveを思わせる雲。ただ、Rotor Cloudsはない。巡航高度は5500ftだが、流石にこういう風の中だと相当な揺れがある。本来なら7500ftくらいまで上がりたかったが、揺れが酷くなりそうなので止めておいた。それから、こういうWaveがある時には、揺れる所よりも山側に居た方がリフトがあって安全だ。こういう風の構造が読めるようになったのも、グライダー訓練のお陰だ。Mountain Waveに乗って、何度となく20000ft以上までグライダーで上がった経験は、こうした風の強い日の5500ftの低空飛行でも役立つ。

ちなみに、この日の目的地はヘスペリア空港に決めていた。Cajon Passが近づいたら7500ftに高度を上げ、砂漠側に北上しほうと思っていた。オンタリオ空港の横を抜け、リアルト空港が見えて来た頃、突然スムーズな移行でリフトの中に入った。1000fpmくらいある立派なリフトだった。ちょうど乱気流で知られるCajon Passの入り口より5マイルくらい手前の地点だ。ここは出力を絞り、少しノーズを下げ、リフトを使って機体を加速させた。実に楽しい時間。ところが、すぐにとんでもない降下が始まった。VSIが振り切り、2000rpm以上の降下度を示している。すぐにピッチアップしてレベルフライトにするが、2000fpmの値は変化しない。すぐにマックスパワーでVy 80ktにするが、1000-1200fpmの降下を示したまま。完全に下降気流の中にいた。この状況では500fpmの上昇はしているはずなので、下降気流は1500fpm以上ありそうだった。山に近い所を飛んでいるので、地面までは2分。以前の自分ならピッチアップしてVyのまま戦うしか思いつかなかったと思うが、グライダー乗りならここは逆の操作だ。こんなシンクの中に居ては小型機などひとたまりもなく、敢えてピッチダウンして高度を犠牲にして速度を出し、シンクから抜けるのが賢明だ。こういう考えに達するまで約10秒かかった。一度こうすると決めたら、すぐにピッチダウン、リアルト空港/Fwy210の方向めがけて130ktくらいまで加速降下していった。すると、降下しながらもVSIが1000fpm程度に落ち着き、シンクを抜けた!ことが分った。ここに来るまで、2000ft以上の高度を失った、、、。

さすがにCajon Passを越えるのは危ないなと思い、ヘスペリア空港をあきらめた。結局そのままの高度でレッドランズ空港に向かい、Rwy26に着陸した。地上に降り立ちホッと一息。ここまで勢いのあるシンクの中に入ったのは、エンジン付きの機体では初めてかもしれない。グライダーではもっと強烈なシンクに入ってしまったことがあるが(通常のパターンを回って着陸できなかった!)。

同じ事の繰り返しになるが、グライダーでマウンテンウェイブの訓練を受けていて本当によかった。





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5 コメント

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Unknown (C2)
2010-12-21 10:24:30
>DAIJAさん
私は動力付きを飛んでからグライダーをかじったので、グライダー乗りの真の凄さを理解せずにいました。空を極めていくにはグライダーの知識は必須かなと思います。学生時代にグライダーをやっていたDAIJAさんは飛行機乗りとしての基盤がしっかりしてますね。
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Unknown (DAIJA)
2010-12-20 19:02:19
いつも楽しく拝読しております。
グライダーの知識や経験は飛行機のオペレーションにもの凄く有益ですよね!私も久しぶりに先日ハワイでグライダー&単発でお遊びしてきました。
普段乗っている飛行機でもグライダーの経験がとっても活かされており、学生時代やっててよかったー!としみじみ思います。
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Unknown (C2)
2010-12-16 04:31:51
>kobaさん
二人でApple Valleyに行った時の風は凄かったですね。突風でランプに駐機しているC150が10度くらい回転しましたからね、我々二人が乗っているのに。あの日は風が強かったのでWaveの形が分り易かった上に、Rotor cloudsが見えたので形状を目視できましたけど、この日は飛行高度に全く雲がなく、clear skyでした。唯一の兆候は不完全ながらCap cloudsのようなものがあった事でした。

ところで、今度、強烈なMountain Waveが出ている日、California CityにWave Soaringに行きませんか?面白いですよ。




>tackoberryさん
Varioが振り切れて操縦桿もスカスカというのは恐怖体験ねぇ。今回はそこまでの恐怖体験じゃなかったです。というか、高度はありましたし、エアスピードも十分、空いている5車線の高速道路が眼下にあり、5マイル先にはノンタワー空港という状況でした。ただ、これが低めの高度を飛んでいたら、もっと焦ったと思います。無謀な事をしているつもりはないですが、ちょっとヒヤっとする体験をすると、更に思慮深いパイロットになりますね。
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Unknown (tackoberry)
2010-12-15 12:52:29
賢明なご判断ですね。
グライダーとは言えども同じ航空機。
その訓練がエンジン機で活かされて良かったですね。
エンジン機の場合はsinkを抜けた後に自力で上昇出来ますが、グライダーはその後にliftが無ければそのままlandingを強いられるので、その後も飛行機とは全然違いますね。
昔、前線性のsinkに入った時は離脱から接地までずっとvarioが-振り切れで速度も乗らないし失速しそうだし、地面はものすごい勢いで迫ってくるし、舵感もスカスカだしで生きた心地がしなかった経験があります。
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Unknown (koba)
2010-12-15 09:54:08
このブログを読んで、以前、C150で一緒にapple valleyに行った時を思い出しました。
あの時は、TさんがRotarを読んでナビゲートして貰えたので、cajon passを無事通過できましたが、、もし僕独りだったら・・っと思うと怖くなります。。
グライダー乗りの知識、重要ですね。
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