テレビ受けねらう「識者芸人」を反面教師としたい (永田町異聞)より
世の中、困った人は数多いが、昨今、報道と娯楽のボーダレス化が進むテレビメディアに幅を利かす「識者芸人」とでもいうべき人々は、いかにも中途半端で厄介な存在である。
辛坊治郎という人物に、筆者は全く関心がなく、漠然と関西芸人の変種のたぐいに分類していたのだが、どうも本人はアナウンサーからキャスターになり読売テレビの解説委員長という肩書きをもらったというだけで、大ジャーナリスト気取りのようなのだ。
そこで筆者は勝手ながら、彼のような類型をとりあえず「識者芸人」と呼ぶことにした。
乗りのいい軽妙な話術で政治、社会を単眼思考で語り、その根拠薄弱な断片情報がスーッとお茶の間に溶け込んでいくものだから、無防備な方々への洗脳作用が抜群ときて、とにかく始末に負えない。
世間には、ちゃんとこういう怪しげな人物にアレルギーを感じる能力の持ち主がいるもので、最近そのアレルゲンとなった番組の録画が投稿された動画サイトをツイッターで知らせてくれた。
そのアドレスをクリックすると、読売テレビの関西ローカル番組で、小沢一郎氏の強制起訴に関し、辛坊氏が一席ぶっているシーン が映し出された。
ふだんなら、「いつもの軽口」と見過ごすところだが、ツイッターで知らせていただいた方の「怒り」がうなずける発言内容に、筆者も捨て置けない気分になった。
以下はその中身をできるだけ忠実に書き起こしたものである。
「検察審査会の議決では求められていないところまで判定しているのではないかという一部の法律の専門家がたわけたことを言ってますが、そんな問題ではないんですよ」
「問題になっているのは政治資金規正法で問題になっている、あの帳面にちゃんと書いておかねばならないところにウソ書いたもともとの不動産売買なんですが、どこから金が出たのか一言も説明しないんです、いや説明してたんです、最初は政治資金で買いましただとか、それはおかしくないかといわれ、二転三転した挙句、自分で買いました、ではどこからもってきたのかと聞かれると、ふうふうふう、と一言も言っていないんだから」
なんとも荒っぽい理屈ではないか。検察審査会の議決内容の問題について語りはじめた場面で、いきなり不動産の購入資金に話が飛ぶのは、論点を一方的に違う場所に移そうという魂胆が丸見えだし、小沢氏が資金の出所を説明していないというのも事実誤認である。
購入資金は、湯島の自宅を売却して深沢に自宅を建てたさいの差引残金約2億円と、家族名義の口座から引き出した3億6000万円の、計約5億6000万円のなかから拠出したと、小沢氏自身がフルオープンの記者会見で説明している。
「たわけた識者はこんなもの不当だなんとかだというバカがいますけれども、なに言ってんだお前らは、実際そういうことを言っているやつらには、明らかにかつて小沢さんサイドから金をもらっていた人たちが何人かいますから、明らかになっていますから。
そういう人たちが小沢さんの肩持っている人に何人かいますから、明言しておきたいと思います」
「たわけた」「バカ」「お前ら」と、よくもこれだけ口汚い言葉を並べられるものである。
そればかりか、誰のことを指しているのか、小沢氏の肩を持つ発言をしている識者何人かが、小沢サイドから金をもらっていると断言する。
「明言したいと思う」のなら、名前をあげて、その根拠を示したらどうか。
これでは、検察やマスコミの小沢弾圧を批判している識者は、みんな買収されているかのごとき印象を視聴者に与えるばかりか、「たわけたバカなお前らは黙っておれ」と放言する自らの傲慢さを世間に吹聴しているようなものだろう。
今年に入って出版した「日本経済の真実―ある日、この国は破産します」という著書はお世辞にも評判がいいとはいえないが、この9月からフリーになって「大阪綜合研究所」というシンクタンクを設立、学生の質はともかく芦屋大学の客員教授という肩書きまで得て、意気揚々といったところである。
勘違い、偏見、先入観・・・。まさにその骨頂といえる頭の働き具合は、自らが気づいて早めに治さなければ“不知”の病のもととなろう。
フランシス・ベーコンは、人間が真理にたどりつくための目測を誤る原因として4つのイードラをあげたが、そのうち「洞窟のイードラ」「市場のイードラ」の典型を辛坊氏に見ることができる。
「洞窟のイードラ」とは、たとえば、自分という小さな洞窟からしか世界を見れない誤り。
「市場のイードラ」とは、たとえば、市場に集まる人の噂話を鵜呑みにする誤り。
さしずめ、昨日、検察審査会の議決を無効だとした小沢一郎氏の訴えを門前払いにした裁判所などは、空疎でも難解な理論で人を威圧する「劇場のイードラ」という誤りを犯したということであろう。
ちなみにもう一つある「種のイードラ」は、人が人である限り、避けることのできない共通の誤りだから、説明は省くことにし、おせっかいなことながら、
辛坊氏が大学での講義のさいには、ぜひ自らを反面教師として学生に“真理追究法”を学んでもらうよう指導されることをお勧めしたい。
世の中、困った人は数多いが、昨今、報道と娯楽のボーダレス化が進むテレビメディアに幅を利かす「識者芸人」とでもいうべき人々は、いかにも中途半端で厄介な存在である。
辛坊治郎という人物に、筆者は全く関心がなく、漠然と関西芸人の変種のたぐいに分類していたのだが、どうも本人はアナウンサーからキャスターになり読売テレビの解説委員長という肩書きをもらったというだけで、大ジャーナリスト気取りのようなのだ。
そこで筆者は勝手ながら、彼のような類型をとりあえず「識者芸人」と呼ぶことにした。
乗りのいい軽妙な話術で政治、社会を単眼思考で語り、その根拠薄弱な断片情報がスーッとお茶の間に溶け込んでいくものだから、無防備な方々への洗脳作用が抜群ときて、とにかく始末に負えない。
世間には、ちゃんとこういう怪しげな人物にアレルギーを感じる能力の持ち主がいるもので、最近そのアレルゲンとなった番組の録画が投稿された動画サイトをツイッターで知らせてくれた。
そのアドレスをクリックすると、読売テレビの関西ローカル番組で、小沢一郎氏の強制起訴に関し、辛坊氏が一席ぶっているシーン が映し出された。
ふだんなら、「いつもの軽口」と見過ごすところだが、ツイッターで知らせていただいた方の「怒り」がうなずける発言内容に、筆者も捨て置けない気分になった。
以下はその中身をできるだけ忠実に書き起こしたものである。
「検察審査会の議決では求められていないところまで判定しているのではないかという一部の法律の専門家がたわけたことを言ってますが、そんな問題ではないんですよ」
「問題になっているのは政治資金規正法で問題になっている、あの帳面にちゃんと書いておかねばならないところにウソ書いたもともとの不動産売買なんですが、どこから金が出たのか一言も説明しないんです、いや説明してたんです、最初は政治資金で買いましただとか、それはおかしくないかといわれ、二転三転した挙句、自分で買いました、ではどこからもってきたのかと聞かれると、ふうふうふう、と一言も言っていないんだから」
なんとも荒っぽい理屈ではないか。検察審査会の議決内容の問題について語りはじめた場面で、いきなり不動産の購入資金に話が飛ぶのは、論点を一方的に違う場所に移そうという魂胆が丸見えだし、小沢氏が資金の出所を説明していないというのも事実誤認である。
購入資金は、湯島の自宅を売却して深沢に自宅を建てたさいの差引残金約2億円と、家族名義の口座から引き出した3億6000万円の、計約5億6000万円のなかから拠出したと、小沢氏自身がフルオープンの記者会見で説明している。
「たわけた識者はこんなもの不当だなんとかだというバカがいますけれども、なに言ってんだお前らは、実際そういうことを言っているやつらには、明らかにかつて小沢さんサイドから金をもらっていた人たちが何人かいますから、明らかになっていますから。
そういう人たちが小沢さんの肩持っている人に何人かいますから、明言しておきたいと思います」
「たわけた」「バカ」「お前ら」と、よくもこれだけ口汚い言葉を並べられるものである。
そればかりか、誰のことを指しているのか、小沢氏の肩を持つ発言をしている識者何人かが、小沢サイドから金をもらっていると断言する。
「明言したいと思う」のなら、名前をあげて、その根拠を示したらどうか。
これでは、検察やマスコミの小沢弾圧を批判している識者は、みんな買収されているかのごとき印象を視聴者に与えるばかりか、「たわけたバカなお前らは黙っておれ」と放言する自らの傲慢さを世間に吹聴しているようなものだろう。
今年に入って出版した「日本経済の真実―ある日、この国は破産します」という著書はお世辞にも評判がいいとはいえないが、この9月からフリーになって「大阪綜合研究所」というシンクタンクを設立、学生の質はともかく芦屋大学の客員教授という肩書きまで得て、意気揚々といったところである。
勘違い、偏見、先入観・・・。まさにその骨頂といえる頭の働き具合は、自らが気づいて早めに治さなければ“不知”の病のもととなろう。
フランシス・ベーコンは、人間が真理にたどりつくための目測を誤る原因として4つのイードラをあげたが、そのうち「洞窟のイードラ」「市場のイードラ」の典型を辛坊氏に見ることができる。
「洞窟のイードラ」とは、たとえば、自分という小さな洞窟からしか世界を見れない誤り。
「市場のイードラ」とは、たとえば、市場に集まる人の噂話を鵜呑みにする誤り。
さしずめ、昨日、検察審査会の議決を無効だとした小沢一郎氏の訴えを門前払いにした裁判所などは、空疎でも難解な理論で人を威圧する「劇場のイードラ」という誤りを犯したということであろう。
ちなみにもう一つある「種のイードラ」は、人が人である限り、避けることのできない共通の誤りだから、説明は省くことにし、おせっかいなことながら、
辛坊氏が大学での講義のさいには、ぜひ自らを反面教師として学生に“真理追究法”を学んでもらうよう指導されることをお勧めしたい。