つい最近購入したDVD2タイトル。どちらも韓国の伝統芸能がらみです。
まず1枚目はパンソリ。ソリとはすなわち「うた」のことであり、パンにあわせてソリするから「パンソリ」だそうです。韓国を代表する伝統芸能で、韓国でも最もポピュラーなものなのでしょう。パンソリと言う言葉は耳にしたことがあるかと思いますが、実際にはその実態はよく知られていません。太鼓だけという簡素な伴奏と一人でかたり歌うところから、一般に日本の浪曲や浪花節に似ていると言われますが、実際には一人芝居にちかい、極めて演劇的な芸能です。伴奏の太鼓は杖鼓とよばれる鼓を大きくしたようなもので、片方を撥で、反対を手でたたきます。太鼓の役目は歌の進む一歩先を地ならしすることだそうで、どんなパンソリの名手でも、下手な太鼓では歌えないそうです。歌い手は扇子だけを小道具に、かたりと歌を使い、ナレーションを交えながら登場人物を演じ分けます。身振り手振りはもちろんのこと、時には客席と掛け合いをしながら、ひたすら歌いまくり、演じまくります。
実際には、パンソリと呼ばれる歌には5曲しかありません。官吏「李夢龍」とその恋人「春香」の運命的な出会いとわかれ、そしてドラマチックな再会を描いた春香歌、孝行娘の半生を描いた沈清歌、三国志を題材にした赤壁歌、竜宮城から使わされたカメがウサギの肝を取ろうとするがウサギが機知で切り抜けると言う日本むかし話のような水宮歌と、これまたむかし話でおなじみの正直な弟と強欲な兄の物語興甫歌の5曲です。なんかこう、みんな一言でコメントしてしまうとミもフタも無い感じがしますが、他のものはともかく、春香歌は全曲演奏するのに6~8時間かかるそうです。さすがに、全曲演奏する機会は多くはなく、通常はハイライトないしはダイジェストでの演奏となるようです。そして、これらの5曲は演奏者によってあるいは地方によってテキストに変化が見られます。
現在、もっとも著名なパンソリ歌手は安淑善さんでしょう。韓国の人間国宝で、パンソリ5曲を完奏できる数少ない歌手のひとりでもあります。また、彼女はカヤグムとよばれる伝統的な琴を弾きながら歌ったりもします。韓国伝統音楽の中で、初めて弾き語りをしたのが彼女らしいです。で、上記のDVDはその彼女の日本公演の模様がたっぷりと2時間おさめられています。もちろん、パンソリだけでなく民謡や伝統音楽んも含めて、どことなく(儒教的に?)張りつめた感じのするストイックな演奏がおさめられています。いやぁ、もう舞台の上で熱演しています。いっさい手抜きなしで声を張り上げ体を揺すり、あるいはささやくように、全身で踊りながら、たっぷりと楽しませてくれます。至福です。
さて、もう一枚は東海岸の民俗芸能である巫堂による豊漁祭ビョルシン・クッです。
民俗芸能と言いましたが、厳密には祭祀になります。東海岸に伝わる伝統的な祭祀儀礼を執り行うのが巫堂ムーダンです。基本的には巫女ですが、彼女たちには「神」が憑いたりすることはなく、世襲制で練習によって巫女になっていきます。形としては神様の言葉を伝えたり病気を治したりするのではなく、つまり神を内側に持つこと無く、祭に神を呼んできて、歌と踊りでもてなして、すこしお願いをして、和やかなうちに送っていくのが仕事のようです。ですから、メインはやはり女性の歌と踊りになります。もちろん、客席も踊ります。渾然一体となって、おそらくは神様も踊ってます。
で、何が凄いって、その伴奏!!まず大きめの銅鑼がゆったりと単調にたたかれ、これが民族音楽の必須アイテムであるドローン通奏低音になります。それに2種類の鉦と杖鼓がそれぞれ異なった独立したリズムで重なります。これが必須アイテムの二番目ポリリズムです。さらにそれに絡んでくるのは、阿部薫もかくや!!!と言わんばかりのフリーキーな胡笛!さすがは人間文化財の金石出!とにかくもうフリーフォームなチャルメラ吹きだと思っていただければ。その脇では銅鑼奏者があたかもジョン・ボーナムのごとくぐるぐると撥をまわしているシュールさ加減。
ところが、歌が主になって伴奏が控えめになると、とたんに「いわき蟹洗温泉ヘルスセンターカラオケ歌謡ショー」になってしまうその落差(笑)ほんとに最後の〆は祝い舞とクレジットされているけど、ここで初めて4ビートが耳に入ってきた。あれ、どっかで聴いたような・・・これは釜山港へ帰れじゃ!そりゃあ神様も楽しかろう
ちなみに解説は催吉城先生と野村伸一先生のお二方。ここでにやりとしたあなた、韓国民俗学が好きな人でしょう(笑)
とにかく、現在日本で手に入れることのできる巫堂関連の映像は小沢昭一さんのところか、さもなくばここぐらいしかありません。ここは以前より1万円くらい値下げしているような気がする。もちろん今回購入したDVDよりもこっちのほうが良いのはわかっているけど、やはり値段が・・・・というわけで、かなり貴重な映像がお手頃価格でお茶の間で楽しめると言うお話でした。
なお、この2タイトルは、「東京の夏」音楽祭の記録で、ほかにも普段耳にすることが出来ない様々な音楽がラインナップされています。ちなみに、昨年は「ドゴン族」が来たらしいです。
今年は何が来るのかしら??行ってみたい。
まず1枚目はパンソリ。ソリとはすなわち「うた」のことであり、パンにあわせてソリするから「パンソリ」だそうです。韓国を代表する伝統芸能で、韓国でも最もポピュラーなものなのでしょう。パンソリと言う言葉は耳にしたことがあるかと思いますが、実際にはその実態はよく知られていません。太鼓だけという簡素な伴奏と一人でかたり歌うところから、一般に日本の浪曲や浪花節に似ていると言われますが、実際には一人芝居にちかい、極めて演劇的な芸能です。伴奏の太鼓は杖鼓とよばれる鼓を大きくしたようなもので、片方を撥で、反対を手でたたきます。太鼓の役目は歌の進む一歩先を地ならしすることだそうで、どんなパンソリの名手でも、下手な太鼓では歌えないそうです。歌い手は扇子だけを小道具に、かたりと歌を使い、ナレーションを交えながら登場人物を演じ分けます。身振り手振りはもちろんのこと、時には客席と掛け合いをしながら、ひたすら歌いまくり、演じまくります。
実際には、パンソリと呼ばれる歌には5曲しかありません。官吏「李夢龍」とその恋人「春香」の運命的な出会いとわかれ、そしてドラマチックな再会を描いた春香歌、孝行娘の半生を描いた沈清歌、三国志を題材にした赤壁歌、竜宮城から使わされたカメがウサギの肝を取ろうとするがウサギが機知で切り抜けると言う日本むかし話のような水宮歌と、これまたむかし話でおなじみの正直な弟と強欲な兄の物語興甫歌の5曲です。なんかこう、みんな一言でコメントしてしまうとミもフタも無い感じがしますが、他のものはともかく、春香歌は全曲演奏するのに6~8時間かかるそうです。さすがに、全曲演奏する機会は多くはなく、通常はハイライトないしはダイジェストでの演奏となるようです。そして、これらの5曲は演奏者によってあるいは地方によってテキストに変化が見られます。
現在、もっとも著名なパンソリ歌手は安淑善さんでしょう。韓国の人間国宝で、パンソリ5曲を完奏できる数少ない歌手のひとりでもあります。また、彼女はカヤグムとよばれる伝統的な琴を弾きながら歌ったりもします。韓国伝統音楽の中で、初めて弾き語りをしたのが彼女らしいです。で、上記のDVDはその彼女の日本公演の模様がたっぷりと2時間おさめられています。もちろん、パンソリだけでなく民謡や伝統音楽んも含めて、どことなく(儒教的に?)張りつめた感じのするストイックな演奏がおさめられています。いやぁ、もう舞台の上で熱演しています。いっさい手抜きなしで声を張り上げ体を揺すり、あるいはささやくように、全身で踊りながら、たっぷりと楽しませてくれます。至福です。
さて、もう一枚は東海岸の民俗芸能である巫堂による豊漁祭ビョルシン・クッです。
民俗芸能と言いましたが、厳密には祭祀になります。東海岸に伝わる伝統的な祭祀儀礼を執り行うのが巫堂ムーダンです。基本的には巫女ですが、彼女たちには「神」が憑いたりすることはなく、世襲制で練習によって巫女になっていきます。形としては神様の言葉を伝えたり病気を治したりするのではなく、つまり神を内側に持つこと無く、祭に神を呼んできて、歌と踊りでもてなして、すこしお願いをして、和やかなうちに送っていくのが仕事のようです。ですから、メインはやはり女性の歌と踊りになります。もちろん、客席も踊ります。渾然一体となって、おそらくは神様も踊ってます。
で、何が凄いって、その伴奏!!まず大きめの銅鑼がゆったりと単調にたたかれ、これが民族音楽の必須アイテムであるドローン通奏低音になります。それに2種類の鉦と杖鼓がそれぞれ異なった独立したリズムで重なります。これが必須アイテムの二番目ポリリズムです。さらにそれに絡んでくるのは、阿部薫もかくや!!!と言わんばかりのフリーキーな胡笛!さすがは人間文化財の金石出!とにかくもうフリーフォームなチャルメラ吹きだと思っていただければ。その脇では銅鑼奏者があたかもジョン・ボーナムのごとくぐるぐると撥をまわしているシュールさ加減。
ところが、歌が主になって伴奏が控えめになると、とたんに「いわき蟹洗温泉ヘルスセンターカラオケ歌謡ショー」になってしまうその落差(笑)ほんとに最後の〆は祝い舞とクレジットされているけど、ここで初めて4ビートが耳に入ってきた。あれ、どっかで聴いたような・・・これは釜山港へ帰れじゃ!そりゃあ神様も楽しかろう
ちなみに解説は催吉城先生と野村伸一先生のお二方。ここでにやりとしたあなた、韓国民俗学が好きな人でしょう(笑)
とにかく、現在日本で手に入れることのできる巫堂関連の映像は小沢昭一さんのところか、さもなくばここぐらいしかありません。ここは以前より1万円くらい値下げしているような気がする。もちろん今回購入したDVDよりもこっちのほうが良いのはわかっているけど、やはり値段が・・・・というわけで、かなり貴重な映像がお手頃価格でお茶の間で楽しめると言うお話でした。
なお、この2タイトルは、「東京の夏」音楽祭の記録で、ほかにも普段耳にすることが出来ない様々な音楽がラインナップされています。ちなみに、昨年は「ドゴン族」が来たらしいです。
今年は何が来るのかしら??行ってみたい。